著者
五十嵐 世津子 森 圭子
出版者
Japan Academy of Midwifery
雑誌
日本助産学会誌 (ISSN:09176357)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.64-70, 2005-06-30
参考文献数
6

<b>目的</b><br>不妊治療を受ける多くの女性は, 様々な思いを内面に抱えながらも, 時々に折り合いをつけながら対処し生活をしていると考える。この研究の目的は, どのように自分を納得させ対処しているのか, 彼女らの「語り」を通して知ることである。<br><b>対象と方法</b><br>研究対象者は, 婦人科クリニックで一般不妊治療を定期的に受けている女性4名である。非構成的面接を行い, 不妊であることに起因して自分の思いを語っている部分に着目し, 周囲からの圧力などに対し, 自分の感情・行動を納得させている, あるいはコントロールしている内容を, 不妊治療を受けている女性の『対処』と考え, 分析のデータとして抽出した。さらに類似の内容をまとめテーマをつけた。<br><b>結果</b><br>周囲から「聞かれる」けれども【聞き流す/言わない】, 「落ち込む」けれども【落ち込まないように】, 「深刻になる」けれども【深刻に考えないように】, 「自分だけ」と思うが【自分だけでない】, 「このまま・頑張る」けれども【できないかもしれない】という『対処』の仕方が見いだされた。<br><b>結論</b><br>【聞き流す/言わない】ことは, 日常の生活の中で人間関係に軋轢を生じさせないための方策の一つと言える。そして, 「落ち込み」「深刻」「自分だけ」と, 自分を追い詰めてしまいそうな孤独の中で, 【落ち込まないように】【深刻に考えないように】【自分だけでない】と思うことは, 自分自身の心の「均衡を保つ」対処であり, 「傷つかない」ための方策となっている。
著者
中田 かおり
出版者
Japan Academy of Midwifery
雑誌
日本助産学会誌 (ISSN:09176357)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.208-221, 2008
被引用文献数
11

<B>目 的</B><br> 妊娠前から出産後2~3年の期間において,母乳育児継続を可能にする要因とアウトカムとしての母乳育児のセルフ・エフィカシーについて探索することを目的とした。<br><B>対象と方法</B><br> 2~3歳の子どもがいる母親を対象に質問紙調査を行った。測定用具は,母乳育児継続に関する自作の質問紙,日本語版Breastfeeding Personal Efficacy Beliefs Inventoryおよび一般性セルフ・エフィカシー尺度である。質問紙は1103部郵送し,回収した424名のうち404名を分析対象とした。分析にはSPSS 15.0J for Windows版を用いた(p<.05)。<br><B>結 果</B><br> 母乳育児期間は平均1年4か月(±10か月)で,最頻値1年,最大値4年3か月であった。母乳育児の継続には,出産直後と入院中のケアである次の6つとの関連が認められた。(1)母子同室を24時間までに行う(p=.000),(2)糖水・ミルクの補足をしない(p=.000),(3)母乳分泌を保証された経験がある(p=.000),(4)夜間授乳を出産当日に開始する(p=.002),(5)早期接触を20分以上行う(p=.006),(6)初回授乳を出産後30分までに行う(p=.009)。退院後の状況で関連していた要因は(1)母乳不足感がないこと(p=.000),(2)助産師の援助を受けたこと(p=.000)の2つであった。また,「母乳不足感に対する助産師の援助」,「母乳分泌を保証する母親への関わり」は母乳育児期間を有意に延長していた。母乳育児継続期間と母乳育児のセルフ・エフィカシーには正の相関があった(r=.392, p<.01)。母乳育児のセルフ・エフィカシーの影響要因として「成功体験」,「言語的説得」,「生理的・情動的状態」との関連が認められた。<br><B>結 論</B><br> 出産直後と入院中のケアは,母乳育児期間を決定づける大きな要因であった。母乳不足感に対する助産師援助,母乳分泌の保証を与えるケアの重要性が示唆された。母乳育児継続期間と母乳育児のセルフ・エフィカシーには関連が認められた。
著者
木戸 久美子 植村 裕子 松村 惠子
出版者
Japan Academy of Midwifery
雑誌
日本助産学会誌 (ISSN:09176357)
巻号頁・発行日
pp.JJAM-2021-0017, (Released:2022-01-26)
参考文献数
41
被引用文献数
1

目 的本研究の目的は,父親の産後うつに関連する質的研究のメタ分析を通して,2つの研究課題1)父親の産後うつは,専門家によってどのようにスクリーニングされてきたか,2)父親の産後うつに対する対処や支援とは,また対処や支援の受け入れを困難にしている障壁は何かについて明らかにすることである。方 法父親の産後うつに関連する論文をCINAHL, MEDLINE, Google Scholarを用いて検索した。検索キーワードは,「サポート」AND「父親の産後うつ」OR「父親のうつ」OR「父親のメンタルヘルス」AND「質的研究」であった。データベースとハンドサーチで検索された質的研究論文は32編で,そのうち5編の論文を分析対象とした。本研究では,メタエスノグラフィーを利用した。結 果Patient Health Questionnaire -9,Generalized Anxiety Disorder-7,The Patient Health Questionnaire -15等が,スクリーニングに用いられていた。分析した論文から8つのメタファー:「父親の産後うつのきっかけ」,「父親の産後うつへの認識」,「父親の産後うつの影響」,「対処法」,「情報資源の不足・不備」,「支援を求める障壁」,「支援を必要とする理由」,「父親の産後うつへの支援」が抽出された。父親の産後うつ病は,一連のきっかけとなる出来事に基づいて発症し,自覚症状も様々である。父親は,自分が産後うつ病であることに気づくと,それに対処しようとするが,支援情報は十分ではなかった。さらに,男性であることが,助けを求めることへの恥ずかしさにつながり,父親の産後うつへの対処の障害となっている。一方で,家族を守るという責任感が,うつと向き合い,社会的支援や専門家の助けを求める動機となっていた。結 論父親の産後うつのスクリーニングには,一般化されている不安尺度と抑うつ尺度が用いられていた。産後うつを自覚している父親への支援が不十分であることや男性性が障壁となり,父親の産後うつへの対処の妨げになっている。一方で,父親として自覚は,産後うつを克服しようとする行動の動機付けとなっていた。
著者
シェリル 大久保 山海 千保子 柳沢 初美 加納 尚美
出版者
Japan Academy of Midwifery
雑誌
日本助産学会誌 (ISSN:09176357)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.233-248, 2008
被引用文献数
2

本研究は,弟妹の誕生に立ち会うことがその子どもにどういった影響を及ぼすかを明らかにしようと試みている。妻の出産に立ち会った場合,男性には概ね肯定的な影響が見られることは先行研究からわかっているが,出産立会いが子どもに及ぼす影響に関してはまだほとんど研究されていない。しかし,近年,家族全員が出産に立ち会うケースが増えていることを鑑みると,根拠のない奨励を避けるためにも,出産立会いが子どもに及ぼす影響を評価することが必要である。<br> 本研究では,言葉と比較してイメージのほうが,子どもにとってより自由に考えや思いを表現しやすいことから,描画を用いて出産立会いが子どもに及ぼす影響を評価した。描画は,2歳から12歳の子ども24人に,出産立会い前,立会い中,立会い後の3回,描いてもらった。回収した描画は,全体的な傾向,ケーススタディという2つの観点から分析した。<br>I 全体的には,描画からトラウマあるいはショックの兆候は見られなかった。2ヶ月に渡る調査期間,子もどの描き方には,出産立会い前,中,後と回を追う毎に細部まで描くようになる,どの回も描き方がほぼ一定,回を追う毎に整然さを欠く,の3つのパターンあるいは傾向が見られた。24人中半数で,弟妹誕生後の描画に進歩が見られた。8人には,全期間を通して大きな変化は見られなかった。残り4人には,立会い後の描き方に,乱雑,後退などの変化が見られた。しかし,この4人も出産立会いからは肯定的な影響を受けていた。<br>II ケーススタディでは,母親の難産に立ち会ったことで否定的な影響を受けた様子の男児が描いた描画を詳細に分析した。描画からは,男児が最初に感じた不安,驚き,恐れなどが次第に形を変え,新たに家族の一員に加わった赤ちゃんと共存する道あるいは術を探すことへと向かったことがわかる。<br> 本研究結果から,出産立会い自体より家族間のサポートのほうが,子どもに対する影響という点で大きな要因となっていることがわかった。加えて,特に幼い子どもや男児には,実際かなりの痛みに耐える母親を目の当たりにすることで,否定的な感情を持つ傾向があることもわかった。このことから,子どもが出産に立ち会う際には,前もって出産の実際について十分準備してやることが必要であり,出産にかかわる誰にとっても肯定的な経験になるよう計らうべきである。
著者
飯田 真理子 片岡 弥恵子 江藤 宏美 田所 由利子 増澤 祐子 八重 ゆかり 浅井 宏美 櫻井 綾香 堀内 成子
出版者
Japan Academy of Midwifery
雑誌
日本助産学会誌 (ISSN:09176357)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.73-80, 2018-06-29 (Released:2018-06-29)
参考文献数
14
被引用文献数
4

周産期を通して安全で快適なケアを提供するには助産実践指針が必要である。日本助産学会は健康なローリスクの女性と新生児へのケア指針を示した「エビデンスに基づく助産ガイドライン―妊娠期・分娩期2016」を刊行した。この2016年版は2012年版に新たに妊娠期の臨床上の疑問(Clinical Question,以下CQ)を13項目加え,既にある分娩期のCQ30項目には最新のエビデンスを加えた。このガイドラインでは助産実践を行う上で日常助産師が遭遇しやすい臨床上の疑問に答え,ケアの指針を示している。推奨は最新のエビデンスに基づいているため,ここに示している内容は現時点での“最良の実践”と考える。本ガイドラインに期待する役割は次の3つである:1)助産師がエビデンスに基づいたケアを実践し,女性の意思決定を支援するための指針としての役割,2)助産師を養成する教育機関において,日進月歩で進化していく研究を探索する意味を学び,知識やケアの質が改善している事実を学ぶ道具としての役割,3)研究が不足し充分なエビデンスが得られていない課題を認識し,研究活動を鼓舞していく役割。そして本稿においてガイドラインの英訳を紹介する目的は次の通りである:1)日本の助産師が編纂したガイドラインを世界に紹介・発信すること,2)日本の研究者が英語で本ガイドラインを引用する際の共通認識として用いること。2016年版では,合計43項目のCQに対して推奨を示しているが,次の6つに関しては産科領域で広く用いられているものの,医行為に関わるため推奨ではなく「エビデンスと解説」にとどめている:CQ1分娩誘発,CQ2卵膜剥離,CQ7硬膜外麻酔,CQ21会陰切開,CQ26会陰縫合,CQ28予防的子宮収縮薬投与。2012年版から推奨が改訂されたCQは次の通りである:CQ3乳房・乳頭刺激の分娩誘発効果,CQ9指圧,鍼療法の産痛緩和効果,CQ14指圧,鍼療法の陣痛促進効果。なお,本論文の一部は「エビデンスに基づく助産ガイドライン―妊娠期・分娩期2016」からの抜粋であり,推奨の部分は翻訳である。
著者
清水 嘉子 関水 しのぶ 遠藤 俊子 宮澤 美知留 赤羽 洋子
出版者
Japan Academy of Midwifery
雑誌
日本助産学会誌 (ISSN:09176357)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.215-224, 2011

<B>目 的</B><br> 本研究の目的は,子どもが乳幼児期にある母親の育児幸福感を高めるために3か月間に2時間による6回の少人数参加型プログラムを開発し評価した。<br><b>方 法</b><br> 9人から10人を1グループとするプログラムを2回実施した。プログラム参加群(以下プログラム群とする)19人に対し,プログラムの初回参加前と最終回参加後および最終回参加後1か月に心理学的指標(心理尺度)による育児ストレスや育児幸福感,自尊感情と生理学的指標(自律神経活動,脳波,唾液CgA)によるリラックスやストレスの評価をした。さらに,プログラムに参加しない対照群16人を設定し,同様の評価を実施した。プログラムの内容は,自分について話し仲間作りをする,子どもへの思いを振り返る,育児の幸せな瞬間を大切にする,互いの頑張りを認める,自分を認め自信を持つ,人生設計を考える,自分の悩みについて聞いてもらうなどであり,毎回腹式深呼吸と,笑顔作りのストレッチを取り入れた。心理的指標と生理的指標についてはそれぞれ,群と時点の効果を検討するために二要因分散分析が行われた。<br><b>結 果</b><br> 本プログラムの心理学的指標には育児ストレスにおける心理的疲労の群主効果を除き有意な差はみられなかった。心拍数の群主効果,自律神経活動におけるHFの時点主効果,脳波における,α1とα3に交互作用が有意であった。<br><b>結 論</b><br> 今後は,より効果的なコースプログラムの検討が課題となる。とくに毎回のプログラム終了後に子どもを交えた雑談の時間や個別相談の時間を確保すること,プログラム終了後の継続的な支援の必要性が課題として残された。
著者
塩澤 綾乃 清水 嘉子
出版者
Japan Academy of Midwifery
雑誌
日本助産学会誌 (ISSN:09176357)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.271-283, 2010

<B>目 的</B><br> マダガスカル共和国における伝統的産婆(Traditional Birth Attendants,以下TBAとする)の世話に対する認識,世話を受ける女性の受け止めを明らかにする。<br><B>対象と方法</B><br> マダガスカル共和国アンチラベ市郊外のA村に研究者が2ヶ月間滞在し,現在活動しているTBA4名,TBAより現在または過去に世話を受けている女性11名に対し,TBAの世話の内容と世話に対する考え,世話を受ける女性の受け止めに関する半構成的面接を行った。さらに,1名のTBAに同行し世話の場面の参加観察を行った。得られたデータは質的に分析を行い,分類し検討した。<br><B>結 果</B><br> TBAは妊娠中の世話,分娩時の世話,産後の世話を行っていた。世話に対するTBAの考えでは,子どもの位置を確認,お産を早く進める,褥婦が寒さを感じることが大切などがあった。TBAより世話を受けた女性の受け止めでは,疲れが取れる,お産についてよく知っていて頼りになった,分娩時に力を貸してくれるなどであったが,一方でTBAは何もしないと受け止めていた。TBAの世話に対する考えと女性の受け止めでは,語られた内容の半数に認識の差異があった。認識の差異には母親が分娩中の世話を記憶していないこと,TBAの指導は経験や言い伝えを基にしており,具体性に欠け内容が薄いことなどが影響していると考えられた。<br><B>結 論</B> TBAのドゥーラとしての役割は女性に評価されており世話の必要性は高い。その役割を継続することに加え,世話の課題として,女性のニーズに対応した世話ができるよう知識を補う必要があると考えられた。そのためには,地域の助産師が専門職者としてのプライドという垣根を越えて,TBAの世話や考え方を理解した上で,研修を開催するなどの具体的な行動が期待される。
著者
片岡 弥恵子 須藤 宏恵 永森 久美子 堀内 成子
出版者
Japan Academy of Midwifery
雑誌
日本助産学会誌 (ISSN:09176357)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.158-169, 2008

<B>目 的</B><br> 研究目的は,性の健康クラスに参加した母親のクラス前後の気持ちおよび行動について記述することで,クラスに参加した母親と子どもおよび家族にどのような変化があったかを明らかにすることである。<br><B>対象と方法</B><br> 研究デザインは,質的記述的研究であった。クラスに参加予定の母親10名を対象に,クラス前と終了後の2回,半構成的インタビュー法によりデータを収集した。データからクラス前後の変化ととらえられた部分を抽出し,コード化しカテゴリーに分類した。<br><B>結 果</B><br> 母親の語りは,性教育の第一歩,新しい家族を迎えること,家族で迎える出産に分類された。性教育の第一歩として,クラス前の母親は,子どもへの【性に関する正しい知識の伝授】を望んでいたが,性について【どこまで話したらよいかという悩み】を持ち,【子どもに理解しやすい方法の探求】を試みていた。クラス後には,【性について子どもに伝えていく自信】を高め,【子どもの理解への手ごたえ】を得ていた。同時に,自分自身の受けた性教育について振り返り【母親自身が受けた性教育への疑問】を感じていた。新しい家族を迎えることについては,クラス前【上の子どもへの対応の難しさ】を感じ【無理のない弟妹の受入れ】を望んでいた母親は,クラス後に【赤ちゃん返りを受止める】,【子どもの成長の実感】を得ていた。家族で迎える出産に関することでは,【家族で迎える出産への期待】から【子ども立会い出産の準備】がクラスを受ける動機になっており,クラス後は【家族で共有知識を持つ心強さ】を持ち,クラスは【今回の出産に向き合う】契機になっていた。<br><B>結 論</B><br> 上の子どもや家族で迎える出産に向けての母親の気持ちは,クラスの前後で肯定的に変化していたことがわかった。これは,クラスの影響と推測することができる。対象者を増やし,家族への長期的な影響を踏まえてクラスの効果を明らかにすることが今後の課題である。
著者
太田 尚子
出版者
Japan Academy of Midwifery
雑誌
日本助産学会誌 (ISSN:09176357)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.16-25, 2006
被引用文献数
6

目 的<br>死産で子どもを亡くした母親たちのケアへのニーズと,その背景となっている思いや体験を探索する。<br>対象と方法<br>研究デザインは,質的因子探索型研究である。妊娠中期以降に,死産を経験した母親13名と早期新生児死亡を経験した母親1名の計14名を対象に,半構成的面接法によりデータを収集し,継続的に比較分析した。<br>結 果<br>母親たちのケア・ニーズには,妊娠中に築かれた子どもとの絆を確認し,母親であると自覚できることを支援する『母親になることを支える』,子どもの死亡という喪失体験が引き起こす悲嘆過程を促すことを支援する『悲嘆作業を進めることを支える』,そして,ケアに関するあらゆる場面で,母親たちの意思を尊重し,母親主導でケアを展開する『希望を引き出して意思決定を支える』があった。『母親になることを支える』の構成要素として,《希望するだけ子どもに会うこと・別れることを支える》,《生きた証を残す思い出づくり》,《火葬と供養を支える》,《子どもが生きているかのような扱い》の4つのカテゴリが抽出された。また,『悲嘆作業を進めることを支える』には,《子どもや出来事の話の引き出しと傾聴》,《泣いていいことの保証と泣ける環境》,《心の痛みを助長させない環境》,《退院後の心のサポートと情報の提供》,《母親を支援できるように家族を支える》の5つのカテゴリが抽出された。<br>結 論<br>母親たちのケア・ニーズには,母親になることへの支援,悲嘆作業を進めることへの支援,そして,あらゆるケア場面での意思決定への支援があった。
著者
長田 知恵子
出版者
Japan Academy of Midwifery
雑誌
日本助産学会誌 (ISSN:09176357)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.182-195, 2009
被引用文献数
1

<B>目 的</B><br> 地域において,授乳期の母乳育児ケアに精通している助産師による観察視点の構成因子を抽出し,その特徴を明らかにすることである。<br><B>対象と方法</B><br> 対象者は,病院や地域で母乳育児支援をしている助産師6名で,研究協力者である母子は,対象助産師に初めてケアを受ける25ケースであった。<br> 対象者が研究協力者に母乳育児ケアを行う場面を参加観察した後に半構成的インタビューを行い,得たデータから,"助産師による観察"と思われることを意味内容に沿って抽出し,カテゴリー化したデータを既存文献と比較検討した。<br><B>結 果</B><br> 母乳育児ケアにおいて助産師が対象の母子を捉え,アセスメントする際の観察項目や因子は,【母親】【子ども】【母子】の3コアカテゴリーから構成されていた。また先行研究と比較すると,【母親】の心理的状態として〈行動特性〉や〈内省〉〈イメージ〉が,社会的状態としては〈衣服〉や〈生活〉〈医療者〉が新たな因子として見出された。また【子ども】の「パワー」と「フォローアップ」,【母子】の「イベント」も本研究で新たに見出された。そして助産師が行っている観察の特徴として,母子を取り巻く環境や,より暮らしに密接した具体的で個別性を重視した観察因子が抽出され,中でも特に乳房の状態は助産師自身の手によって感じ分けているという観察因子が抽出された。さらに助産師の観察視点の特徴としては,【母親】と【子ども】の各々を観るだけでなく,【母子】という母親と子どもの双方の観察を併せ持つ視点から構成されていた。<br><B>結 論</B><br> 母乳育児ケアにおいて助産師は,授乳期の母子の生活に密着した詳細な情報を多面的に観察するとともに,助産師自身の手で感じ分けていた。また【母親】と【子ども】の各々の視点からだけでなく,母親と子どもの双方の観察を併せ持つ【母子】という3視点から構成されているという特徴があった。