著者
辻 恵子 小黒 道子 土江田 奈留美 中川 有加 堀内 成子
出版者
一般社団法人 日本助産学会
雑誌
日本助産学会誌 (ISSN:09176357)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.1_7-1_15, 2006 (Released:2008-04-25)
参考文献数
37

目 的エビデンスレベルの高い論文を探索し,批判的に吟味する過程を通じて会陰切開の適用を再考することである。方 法臨床上の疑問を明確化するためのEBNの方法論を用いて,「会陰切開・術」,「会陰裂傷」,「会陰部痛」,「新生児」のキーワードを設定し,エビデンスレベルの高い論文およびガイドラインを探索した。RCTのシステマティック・レビューである2つの論文に着目し,批判的吟味を行った。同時に,会陰裂傷を最小限にする助産ケアの知見について検討した。結 果批判的吟味を行った結果,2つのシステマティック・レビューにおける研究の問いは明確に定義されており,妥当性を確保するための必要項目を満たすものであった。これらのシステマティック・レビューから「慣例的な会陰切開の実施は,制限的な会陰切開に比べ,“会陰(後方)の損傷”のリスクを増大させる。また,“創部治癒過程”における合併症のリスクおよび退院時の“会陰疼痛”のリスクを増大させる。“尿失禁”および“性交疼痛”のリスクを軽減させるというエビデンスはなく,“新生児の健康上の問題”が生じるリスクを減少させるというエビデンスは存在しない」との結果が導かれた。また,これまでの助産ケアの知見を検討した結果,会陰マッサージ,会陰保護,分娩体位の工夫などで会陰裂傷を最小限にする可能性が確認された。結 論女性に優しい助産ケアとして,助産師は,会陰裂傷を最小限に防ぐケアの可能性を追求すると共に,エビデンスに基づいた情報を適切な方法で伝え,女性自身が必要なケアを選択できるよう,女性とのパートナーシップを構築していくことが求められる。
著者
今野 友美 堀内 成子
出版者
一般社団法人 日本助産学会
雑誌
日本助産学会誌 (ISSN:09176357)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.83-93, 2013 (Released:2013-09-18)
参考文献数
22

目 的 出産後の女性の健康増進を目指す出産後プログラムに参加した母親の参加前後の精神的,身体的健康の変化からプログラムの評価を行った。研究方法 対象はA団体の出産後プログラムに参加する産後2か月~6か月の母親135人である。プログラムの内容は,有酸素運動,コミュニケーションスキル向上のためのワーク,セルフケアであり,週に1回2時間,4週継続して行った。測定用具は精神的健康増進の指標として日本版エジンバラ産後うつ病自己評価票(EPDS),主観的幸福感尺度,身体的健康増進の指標として研究者作成の身体的不調,参加動機等である。調査はプログラム初回,プログラム4回目,終了後1か月の3時点で行った。3時点での変化についてはrepeated ANOVAを行った。結 果 プログラム4回目まで進んだ者は112人(有効回答率83.0%),終了後1か月までフォローできた者は90人(回収率80.4%)であった。 身体的不調の総合得点の変化には有意差がみられ(p<.001),プログラム4回目で改善し,その効果は終了後1か月まで持続していた。主観的幸福感の総合得点の変化に有意差がみられ(p=.002),調査時期毎に得点が上昇した。抑うつ度を示すEPDS得点の変化に有意差がみられ(p<.001),プログラム4回目で抑うつ度は軽減し,その状態は終了後1か月まで続いていた。EPDS9点以上の割合は,プログラム初回では23人(20.5%)であったのに対し,プログラム4回目では11人(9.8%)であり,有意に割合は減少していた(p=.025)。結 論 プログラムの参加により,身体の不調は改善し,主観的幸福感は高まり,抑うつ度は軽減されており,それはプログラム終了後1か月でも持続していた。今後の課題として,対照群をおいたプログラムの評価が必要である。
著者
中込 さと子 堀内 成子 伊藤 和弘
出版者
一般社団法人 日本助産学会
雑誌
日本助産学会誌 (ISSN:09176357)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.44-62, 2004

目的<BR>本研究は, 遺伝的特質を親から子へ引き継ぐことの意味を探ることを中心に据えて, 遺伝性疾患をもつ女性Fさんにとって子どもを産み育む体験を記述することを目的とした。<BR>対象および方法<BR>1) 協同研究者: 軟骨無形成症をもち, 既婚で, すでに1人以上の子どもを得ており, 現在妊娠していない女性Fさんである。<BR>2) 研究方法: 研究デザインは質的帰納的記述研究とした。研究方法は, Giorgi, A.の提唱した現象学的アプローチとし, Heidegger, M.の存在論を前提立場とした。分析は, 第1に協同研究者の語りから生きられた体験 (lived experience) を統合的に記述し, 第2に記述された体験をHeidegger, M。の存在論に基づき研究者が解釈を加えた。データ収集は, 非構成的面接を2002年8月~11月に行った。<BR>結果<BR>Fさんは新生突然変異で出生し, 他の家族に同じ特質の人がいない環境で育った。Fさんは,「障害」と認めたくない母親から, 何事も同級生たちと同じように取り組むことを期待され努力し続けた。しかし高校卒業時より, 社会での自立に向かう過程でさまざまな障壁があり屈辱的な思いもした。しかし, 身障者の人びととの出会いや身障手帳を取得した以降, 社会的に「正当に」評価されたと感じ精神的に安定した。娘が同じ病気だと知って, 娘に対して, Fさん自身が親から育てられた方針とは逆の,「頑張らなくてよい」というこの身体的特質に対する正当な考え方を教えた。そして娘の身体だけでなく, その時々で感じる辛さも理解し, それに対応できるよう先々に準備をした。<BR>またFさんは, 親の会活動に参加し親や当事者たちを支えた。Fさんは「軟骨無形成症」をもった当事者の声を発信する活動と, 当事者としての自分自身の「個人史」を書き始めた。この活動を通して「骨無形成症者」が社会に広く理解されることを願っている。<BR>Fさんの体験の中心的な意味は,「自分の人生をかけて, 娘とすべての当事者を慈しむ」として理解された。中心的意味を形成する事柄として, 1) 他者評価を超えて, 自己を正当に評価する, 2) 生きてきた体験をもとに, 子どもの人生に関与する, 3) 子育てを通じて, 自己の存在の意味が明確になっていく, 4) ありのままの自分たちを受け入れ, 形のないものを志向する, が確認できた。<BR>結論<BR>子どもに遺伝的特質を引き継いだ体験は, 病の体験を引き継ぐ辛さではあったが, 自分の体験をもとに子どもの人生に関与し, わが子の存在によって自己の存在の意味を明確になっていった。またこの遺伝子がこれからも引き継がれるという観点から, 自分たち親子だけにとどまらず, 地域社会の未来の平和に対する志向の拡がりが確認できた。
著者
麓 杏奈 堀内 成子
出版者
一般社団法人 日本助産学会
雑誌
日本助産学会誌 (ISSN:09176357)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.12-22, 2017-06-30 (Released:2017-06-30)
参考文献数
29
被引用文献数
1

目 的喜ばしい体験と同時に不測の急変に直面することのある助産師の心的外傷体験の実態を明らかにし,その心的外傷体験後の心的外傷後ストレス障害(Posttraumatic Stress Disorder:PTSD)発症リスクやレジリエンス,外傷後成長(Posttraumatic Growth:PTG)との関連を探索することである。対象と方法全国の周産期関連施設と教育機関から,層別化無作為割り付け法で抽出した308施設1,198名の就業助産師に質問紙を郵送した。有効回答者681名(56.8%)のデータから混合研究法を用いて,量的データは統計学的分析を,質的データは自由記載の内容分析を行い,得られたカテゴリと各変数との関連を検討した。結 果心的外傷体験を記述した者は575名(84.4%)で,その内容は【分娩に関連した母子の不測な状態】【助産師の辛労を引き起こした状況】【対象者の悲しみとその光景】【自分に向けられた不本意な発言や苛酷な環境】の4つに分類された。【自分に向けられた不本意な発言や苛酷な環境】という直接外傷体験をした助産師の,日本語版改訂出来事インパクト尺度(Impact of Event Scale-Revised:IES-R)平均値が最も高く,またPTG平均値が最も低かった。さらに86名(15.0%)がその心的外傷体験を機に退職を検討していた。また,PTSDと就業継続意思(r=−.229),サポートと就業継続意思(r=−.181),PTSDとサポート得点(r=−.143),PTGとサポート(r=.148),PTGとレジリエンス(r=.314)は有意な関連を認めた(p<.001)。結 論直接外傷体験をした就業助産師はPTSD発症リスクが高かった。心的外傷体験をした助産師が職場内のサポートを得ることは,PTSD発症のリスクの低減,離職予防,さらにその助産師を成長させるポジティブな要素として働くことが示唆された。
著者
中村 幸代 堀内 成子 柳井 晴夫
出版者
日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.33, no.4, pp.3-12, 2013-12-20

要旨 目的:冷え症の妊婦と,そうではない妊婦での,微弱陣痛および遷延分娩の発生率の相違の分析および,因果効果の推定を行うことである. 方法:研究デザインは後向きコホート研究である.調査期間は2009年10月19日〜2010年10月8日までの12ヵ月であり,病院に入院中の分娩後の女性2,540名を分析の対象とした(回収率60.8%).調査方法は,質問紙調査と医療記録からのデータ抽出である.分析では,共分散分析と層別解析にて傾向スコアを用いて交絡因子の調整を行った. 結果:冷え症であった女性は41.9%であった.微弱陣痛では,冷え症の回帰係数0.69,p<0.001,オッズ比2.00であった(共分散分析).遷延分娩では,冷え症の回帰係数0.83,p<0.001,オッズ比2.38であった(共分散分析). 結論:微弱陣痛では,冷え症である妊婦の微弱陣痛発生率の割合は,冷え症ではない妊婦に比べ,2倍であり,遷延分娩では約2.3倍であった.因果効果の推定では,冷え症と微弱陣痛ならびに遷延分娩の間で因果効果の可能性があることが推定された.
著者
東原 亜希子 堀内 成子
出版者
一般社団法人 日本助産学会
雑誌
日本助産学会誌 (ISSN:09176357)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.120-130, 2016 (Released:2016-09-01)
参考文献数
28

目 的 胎児が骨盤位である妊婦が鍼灸治療を受けた際の治療経過を追跡し,特に治療に伴う胎動の変化を把握し,鍼灸治療と胎動との関連を探索した。対象と方法 妊娠28週から37週の鍼灸治療を希望する骨盤位妊婦を対象とし,治療前後の心身の反応,不定愁訴の変化,胎動について分析した。胎動の「数」は胎動記録装置(FMAM)を用い客観的指標として把握した。結 果 初産婦11名,経産婦1名の計12名を分析対象とした。年齢の平均は32.7歳であった。12名全員,治療延べ24回中毎回「手足がぽかぽかと温かくなる」と答え,「リラックスして眠くなった」妊婦は治療24回中22回(91.7%)に生じ副作用は認められなかった。「足のつり」「イライラ感」が治療前に比べ治療後有意に頻度が減少した(「足のつり」z=-2.53, p=.011,「イライラ感」z=-2.00, p=.046,Wilcoxon符号付き順位和検定)。胎位変換した頭位群は8名(66.7%),骨盤位のままだった骨盤位群は4名(33.3%)であった。骨盤位診断から治療開始までの日数は,頭位群平均8.6日,骨盤位群27.3日であり,頭位群の方が有意に短かった(t=-3.7, p=.02)。治療開始時期は,頭位群平均31.5週,骨盤位群34.1週であり,頭位群の方が統計的に有意に早い週数で始めていた(t=-2.4, p=.04)。客観的な胎動数の変化として,初回治療時の平均を,「治療前20分」「治療中」「治療後20分」で比較すると,「治療中」に有意差があり,頭位群173.71回/時,骨盤位群105.63回/時と頭位群の方が有意に多かった(t=2.78, p=.02)。対象毎にみると,頭位群では「治療前20分」に比べて,「治療中」または「治療後20分」に胎動が増加していた。結 論 鍼灸治療は,手足が温まり,リラックスして眠くなることが生じ,副作用は認められなかった。「足のつり」「イライラ感」の頻度が治療後有意に減少した。胎位変換率は66.7%であり,頭位群は診断から平均8.6日以内に治療を始め,平均妊娠31.5週までに開始していた。胎動の変化として,頭位群は「治療中」または「治療後20分」に胎動増加が認められた。
著者
中村 幸代 堀内 成子 柳井 晴夫
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.33, no.4, pp.4_3-4_12, 2013-12-20 (Released:2013-12-26)
参考文献数
31

目的:冷え症の妊婦と,そうではない妊婦での,微弱陣痛および遷延分娩の発生率の相違の分析および,因果効果の推定を行うことである.方法:研究デザインは後向きコホート研究である.調査期間は2009年10月19日~2010年10月8日までの12ヵ月であり,病院に入院中の分娩後の女性2,540名を分析の対象とした(回収率60.8%).調査方法は,質問紙調査と医療記録からのデータ抽出である.分析では,共分散分析と層別解析にて傾向スコアを用いて交絡因子の調整を行った.結果:冷え症であった女性は41.9%であった.微弱陣痛では,冷え症の回帰係数0.69,p<0.001,オッズ比2.00であった(共分散分析).遷延分娩では,冷え症の回帰係数0.83,p<0.001,オッズ比2.38であった(共分散分析).結論:微弱陣痛では,冷え症である妊婦の微弱陣痛発生率の割合は,冷え症ではない妊婦に比べ,2倍であり,遷延分娩では約2.3倍であった.因果効果の推定では,冷え症と微弱陣痛ならびに遷延分娩の間で因果効果の可能性があることが推定された.
著者
中村 幸代 堀内 成子 柳井 晴夫
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.59, no.6, pp.381-389, 2012 (Released:2014-04-24)
参考文献数
31
被引用文献数
4 3

目的 日本人女性を対象に,妊娠時の冷え症が早産に及ぼす影響を分析し,冷え症と早産との関連を検討することである。方法 研究デザインは後向きコホート研究である。調査期間は,2009年10月19日から2010年10月 8 日までの約12か月であり,調査場所は,首都圏の産科と小児科を要する病院 6 か所である。研究対象は,分娩後の日本人の女性であり,調査内容は,質問紙調査と医療記録からの情報の抽出である。なお分析にあたり,傾向スコア(Propensity Score)を用いて,共分散分析および層別解析を施行し交絡因子の調整を行った。本研究は聖路加看護大学の研究倫理審査委員会の承認を得て実施した(09–057)。結果 2,810人の女性を分析の対象とした。冷え症と早産では,冷え症でない妊婦に比べ,冷え症である妊婦の早産発生率の割合は,3.38倍(共分散分析)もしくは3.47倍(層別解析)であった(P<0.001)。結論 妊娠後半の冷え症と早産の発生率との関連に関する論議を深めることができた。
著者
堀内 成子 有森 直子 三橋 恭子 森 明子 桃井 雅子 片桐 麻州美 片岡 弥恵子
出版者
聖路加看護大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1997

1.健康な初産婦10例に対して、一夜の終夜脳波を測定した結果、産褥5、6週までは、夜間の途中覚醒率が20%前後を示したが、産褥9週・12週においては夜間に中断された睡眠と、中断されない睡眠とが混在した。夜間において母親の途中覚醒は、こどもの足の動きと同期していた。こどもの慨日リズムは12週までに形成していた。産褥期の母親の睡眠リズムと子育てに焦点を当てて研究活動を行った。2.18組の母子を対象に行った24時間の睡眠日誌の分析からは、生後5週から12週までのこどもの睡眠・覚醒に関するパラメータの変化は、母親の同一時期のパラメータと同様の変化を示した。就床時刻は平均0時53分であり、生活が夜型にシフトしていた。夜間の覚醒時間について生後5および6週は、9週から12週に比べ、有意に長く、覚醒回数も多かった。産褥3ヵ月における母子の睡眠覚醒の推移は、同調した動きを示していた。3.7組の母子を対象に行ったアクチグラフの結果から、産褥3週から12週までの母親の夜間途中覚醒は、こどもの睡眠・覚醒の慨日リズム形成と関係していた。4.入眠前のリラクセーションを図る意味での、腰痛のある妊婦を対象に足浴の効果を見た。その結果、足浴行った実験群においては、就寝前に対する起床時の痛みの強さが軽減していた。5.子育てにともなう情緒については21人の初産婦の面接から、産褥4週以内の子育てに対しては<閉塞感のある生きにくさ>を特徴とし、育児生活そのものは<既成概念と現実のズレ>が多く、時には<暗い迷路>へとつながることもあった。育児の適切さについて<確信がもてない>毎日であり、<焦燥感や不全感>を持ちやすいことも語られた。睡眠リズムの変化に適応できないと同時に、子育てに強く困難感を抱いている事例の分析が今後の課題として残されている。
著者
竹内 翔子 堀内 成子
出版者
一般社団法人 日本助産学会
雑誌
日本助産学会誌 (ISSN:09176357)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.173-182, 2014 (Released:2015-05-30)
参考文献数
16
被引用文献数
5 4

目 的 妊娠中の会陰マッサージに対する女性の認識と実施の阻害因子を探索すること。方 法 首都圏の産科を有する医療施設8ヶ所において,妊娠37週0日以降の単胎児を経膣分娩した女性390名を対象に,質問紙を配布した。有効回答が得られた334名(85.6%)のデータを用いて,統計学的に分析した。結 果1.会陰マッサージを実施した女性は114名(52.1%),実施しなかった女性は105名(47.9%)であり,実施した女性のうち出産まで継続できたのは68名(59.6%)であった。また実施しなかった女性の45.7%が自分の会陰を触ることに抵抗を感じていた。2.会陰マッサージに関する情報源について,会陰マッサージ実施の有無を比較すると,実施した女性の割合が有意に大きかったのは「助産師による個別指導」のみであり(p=.000),実施しなかった女性の割合が有意に大きかったのは,「母親学級」であった(p=.000)。3.会陰マッサージの方法について,方法を知っている女性の半数以上が難しさを感じていたのは「指の動かし方」や「力加減」,「指の挿入の深さ」,「マッサージの実施時間」であり,マッサージを途中でやめてしまった女性は出産まで継続できた女性よりも難しさを感じていた(p=.012)。4.会陰マッサージの効果について,会陰マッサージを継続できた女性は途中でやめた女性に比べて,【出産準備への効果】および【出産時への効果】を有意に感じていた(p=.000)。5.出産に対する自己効力感について,初産婦では会陰マッサージを行っていた女性は行っていない女性よりも【自分らしいお産】に対する自己効力感が有意に高かった(p=.014)。結 論 会陰マッサージの実施を阻害する因子として,会陰部を触ることに対する抵抗感や知識不足,実施中の困難感が挙がった。また会陰マッサージはその効果を実感するためには継続することが重要であり,医療者は出産まで会陰マッサージを継続できるようサポートしていく必要がある。
著者
中田 かおり 堀内 成子
出版者
一般社団法人 日本助産学会
雑誌
日本助産学会誌 (ISSN:09176357)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.78-88, 2016 (Released:2016-09-01)
参考文献数
19

目 的 生体インピーダンスによる妊婦の体水分と関連のある妊娠・分娩期の異常(切迫早産,妊娠高血圧症候群(PIH),低出生体重等)を探索し,関連を検討する。対象と方法 妊娠26週から29週の健康な単胎妊婦を対象とした。データ収集は,妊娠26~29週と妊娠34~36週の妊娠中2回と,分娩終了後に実施した。生体インピーダンスの測定には,マルチ周波数体組成計を使用した。妊婦の体水分と関連のある生理学的検査値と妊娠・分娩経過に関するデータは,質問紙と診療録レビューにより収集した。変数間の関連は,パス解析により検討した。結 果 研究協力の承諾を得られた340名の内,332名を分析対象とした。生体インピーダンスとの関連性が示唆された妊娠・分娩期の異常は,「切迫早産およびその疑い(妊娠26~29週の測定後から妊娠34~36週の測定まで)」(p結 論 体水分をあらわす指標と生体インピーダンスおよび,特定の妊娠・分娩期の異常との関連性が示唆された。しかし,異常の予測につながる指標の組み合わせは特定できなかった。今後,妊婦の生活やリスク発見後の対応を考えながら,妊娠期の健康につながる体水分評価指標の組み合わせや基準値を探索する,基礎研究が必要である。
著者
堀内 成子 中村 幸代 八重 ゆかり 片岡 弥恵子 西原 京子 篠原 一之
出版者
聖路加国際大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究は、ローリスク妊婦に対して、オキシトシン・システム活性化プログラム(芳香浴と乳頭刺激)を開発し、正期産に導くことに効果があるか検討した。 A:芳香浴:健康妊婦に①クラリセージ・ラベンダー精油入り(27人)、②ジャスミン精油入り(26人)、③精油なし(25人)の足浴を実施し比較した。オキシトシンは足浴後に①で有意に増加し(p = .035)、②③では有意差はなかった。B:乳頭刺激:妊娠末期のローリスク初産婦22名(介入群)に、乳頭刺激を実施し、対照群の20名と比較した。介入3日目の唾液オキシトシン値は、有意に高く、子宮収縮回数も有意に多かった。反復乳頭刺激により、オキシトシン値は増加した。
著者
片岡 弥恵子 八重 ゆかり 江藤 宏美 堀内 成子
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.52, no.9, pp.785-795, 2005 (Released:2014-08-06)
参考文献数
36
被引用文献数
1

目的 DV の程度を測定する尺度である日本語版 ISA を用いて,妊娠期女性の DV 被害割合を明らかにし,DV のリスクファクターとして背景因子との関係および精神的な健康への影響を探索する。方法 都心部の 1 か所の総合病院の産婦人科に通院する妊婦に対し,2003年 2 月から 5 月継続的に研究協力依頼を行った。研究依頼時(妊娠14週位)に GHQ30,自尊感情尺度,背景調査用紙,妊娠35週以降に妊娠中の状態を反映させるために DV の程度を測定する日本語版 ISA を実施した。成績 279人から有効回答が得られた。日本語版 ISA により,妊婦279人中15人(5.4%)が DV 陽性と判定された。日本語版 ISA の下位尺度である身体的暴力は 9 人(3.2%),非身体的暴力は12人(4.3%)であった。DV のリスクファクターとしては,経産婦であること(OR=3.9),過去の身体的暴力(OR=9.1)の 2 点が明らかになった。また DV の精神的な健康に及ぼす影響については,一般的疾患傾向,睡眠障害,不安,うつ傾向,自尊感情との関連が認められた。なかでもうつ傾向は,DV 陽性の妊婦に約12倍多い(OR=11.5)という結果であった。結論 DV は妊婦の約 5%,つまり20人に 1 人の割合であり,決して稀なことではないことがわかった。女性の健康に及ぼす影響も危惧されるため,医療において DV 被害の早期発見に向けてのスクリーニング,介入,連携体制を整えることが急務である。
著者
蛭田 明子 堀内 成子 太田 尚子 實崎 美奈 石井 慶子
出版者
聖路加国際大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

本研究は周産期に子どもを亡くした夫婦を支援するツールの作成を目的に実施した。方法は、31名の父親と母親に対するインタビューである。夫婦のあり方は様々だが、家族の外部にも自分のサポートを得ること、悲しみに伴うお互いの一般的な感情の変化を予期できること、家族の中で子どもの存在がオープンであることが、家族の再構成に重要な影響を及ぼしていることは共通した語りであった。家族の語りにもとづき、「夫婦」と「夫婦を支えたいと願う両親」を対象とした二つのリーフレットを作成した。
著者
宍戸 恵理 八重 ゆかり 堀内 成子
出版者
一般社団法人 日本助産学会
雑誌
日本助産学会誌 (ISSN:09176357)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.101-112, 2018-12-25 (Released:2018-12-25)
参考文献数
26
被引用文献数
4 3

目 的出産体験における痛みの予測と現実および疲労の予測と現実のギャップについて,ギャップと出産満足度がどのように関連しているか探索し,この関連について無痛分娩者と自然分娩者とを比較することで,分娩方法による違いがあるのか探索する。対象と方法同一対象者を産前・産後の2時点を追跡・比較する質問紙を用いた縦断的量的記述研究であり,都市部の総合周産期医療センター1施設で調査した。2時点のデータを確保できた609名のデータを用いて,統計学的に分析を行った。結 果1. 陣痛のギャップについて,「予測より痛かった」と回答した者が,自然分娩者に多かったが,会陰部痛のギャップは,「予測より痛かった」と回答した者が,無痛分娩者に多かった。2. 産後の疲労感の平均値は,無痛分娩者が60.1(SD=27.2),自然分娩者は52.2(SD=28.0)であり,無痛分娩者の方が有意に高かった(P<0.001)。また,無痛分娩者,自然分娩者ともに痛みと疲労感が「予測より痛かった/予測より疲れている」と回答した者は,「予測より痛くなかった/予測より疲れていない」,「予測通りだった」と回答した者よりも,産後の疲労感の得点が有意に高かった。3. 出産満足度の平均値は,無痛分娩者7.61(SD=1.85),自然分娩者8.65(SD=1.43)であり,自然分娩者の出産満足度は,無痛分娩者よりも有意に高かった(P<0.001)。陣痛のギャップ,分娩転帰と出産満足度について,分散分析した結果,陣痛のギャップと分娩転帰の交互作用は有意ではなかったが,それぞれ主効果は有意であった。また,無痛分娩者では,陣痛のギャップと出産満足度との間に負の関連が認められたが,自然分娩者では関連が認められなかった。結 論無痛分娩,自然分娩のどちらの場合も,痛みや疲労感に関する予想と現実とのギャップを小さくする方策が求められる。出産満足度を改善するためには,ギャップに着目する必要があり,それは無痛分娩でより重要である。
著者
堀内 成子 近藤 潤子 大川 章子 石井 ひとみ 大久保 功子
出版者
一般社団法人 日本助産学会
雑誌
日本助産学会誌 (ISSN:09176357)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.42-53, 1988-12-25 (Released:2010-11-17)
参考文献数
15
被引用文献数
3 1

本研究は, 妊娠の進行に伴う睡眠の変化を明らかにするために, 妊婦の睡眠の主観的評価を分析することを目的に行った。調査票は「入眠および睡眠中の関連因子群」,「起床時の関連因子群」,「睡眠全体の満足度」,「睡眠に関する影響因子」を含めて構成し、289例の妊婦から有効回答を得た。その結果, 妊娠の進行に伴う変化では, 初期には非妊期に比べて途中覚醒が多く,「眠い」という睡眠に対する欲求が強く現れていた。中期になると, 初期に比べて睡眠に対する欲求は落ち着きを示していた。末期になると, 寝つきが悪くなる・眠りが浅くなる・時間が不足する・途中覚醒が多くなるという状態から, 睡眠全体に不満感が高まるという関係が示された。初産婦では, 妊娠初期に夜中の途中覚醒に対して「いやだ」という否定的な回答が多く, 妊娠が進行するにつれて, その比率は減少していた。影響因子として, 妊娠に伴う身体変化のほかに, 家庭のサポートが認められた。
著者
大久保 暢子 亀井 智子 梶井 文子 堀内 成子 菱沼 典子 豊増 佳子 中山 和弘 柳井 晴夫
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.31-38, 2005-03-20 (Released:2012-10-29)
参考文献数
11
被引用文献数
3 1

看護大学における高等教育・継続教育としての e-learning (以下 EL と称す) は, 時間的・物理的制約を解消する有用な手段である. 今回, 国内の保健医療福祉機関に勤務する看護職計1,270名 (有効回答率36.6%) を分析対象として EL に関するニーズ調査を行った. その結果の一部を参考に仮説を立て, 因果モデルを想定し, 因子分析・共分散構造分析を用いて説明を試みた.結果: (1)「直接交流がないことへの不安」,「ELの内容や費用への不安」,「1人で学習することによる不安」といったEL受講への不安がなければ「ELの受講希望」は高くなり, 中でも「直接交流がないことへの不安」が「EL受講希望」に最も強く影響していた. さらに, (2) 大学の単位や認定看護師の教育単位といった「単位取得が可能」であれば「EL受講希望」は高くなることも明らかとなった. 以上のことから, 看護高等教育・卒後教育におけるEL導入は, スクーリングや対面式講義など直接交流の機会がもてること, 大学や認定看護師の講義単位が取得できることが重要であることが示唆された.
著者
堀内 成子 近藤 潤子 小山 真理子 木戸 ひとみ 大久保 功子 山本 卓二 岩澤 和子
出版者
Japan Academy of Nursing Science
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.8-17, 1990
被引用文献数
1 5

本研究は, 妊婦および褥婦の睡眠の主観的評価と睡眠ポリグラフ所見との間の関連性を明らかにすること, および妊婦各期と産褥早期の睡眠推移を明らかにすることを目的に終夜睡眠を分析した.<BR>妊婦11週~37週までの正常妊婦7例と, 産褥1週~7週までの正常褥婦4例を対象とし, 終夜睡眠をポリグラフ装置で連続3夜測定した. 睡眠段階はRechtshaffen & Kalesの判定基準を用いた. 対照群として健康な非妊期の女性4例を選び, 測定した.<BR>その結果, 主観的な睡眠深度経過では, 前半単相性パターンと前半多相性パターンとに分かれ, ポリグラフ所見との間に関係が認められた. 睡眠パラメータでは, 妊婦群が非妊婦群に比べて睡眠率が低く, 特に末期群では眠りが浅くなっていた. 産褥早期には, 妊娠末期よりさらに睡眠率が低かったが, 妊婦末期に比べて%S4は増加の傾向が認められた.
著者
田中 利枝 岡 美雪 北園 真希 丸山 菜穂子 堀内 成子
出版者
一般社団法人 日本助産学会
雑誌
日本助産学会誌 (ISSN:09176357)
巻号頁・発行日
pp.JJAM-2017-0041, (Released:2018-05-18)
参考文献数
59
被引用文献数
1 3

目 的産科看護者に向けた,早産児の母親の産褥早期の母乳分泌を促す教育プログラムを開発する端緒として,母親の母乳分泌を促すための搾乳ケアについて探索する。対象と方法PubMed,CINAHL Plus with Full Text,医学中央雑誌Web, Ver.5を用い文献検索を行った。さらにCochrane Libraryに掲載されている搾乳に関するレビューに用いられている文献を追加した。その中からタイトル,抄録,本文を参考に,早産児の母親の母乳分泌量をアウトカムとする文献を抽出し,Cochrane Handbook,RoBANS,GRADE Handbookを用い,文献の質の評価を行った。また,研究目的,方法,結果について整理し,母親の母乳分泌を促すための搾乳ケアを抽出した。結 果35文献が抽出され,介入研究24件,観察研究11件であった。無作為化,隠蔽化,盲検化に関する記述が不十分で,サンプルサイズが検討されていないなど,ランダム化比較試験の質は低く,交絡変数の検討が不十分なために非ランダム化比較試験の質も低かったが,観察研究から実践に活用可能と考えられるエビデンスが得られた。早産児を出産した母親の母乳分泌を促すための搾乳ケアでは,分娩後,可能な限り1時間以内に搾乳を開始すること,1日7回以上の搾乳回数,1日100分以上の搾乳時間を確保すること,手搾乳と電動搾乳の両方について十分な説明を行い,乳汁生成II期に入るまで電動搾乳に1日6回以上の手搾乳を追加すること,カンガルーケアを実施することが有用だとわかった。結 論今後は,産科看護者による早産児を出産した母親への搾乳ケアに関する実態把握を行い,母親の母乳分泌を促すための搾乳ケアが実践できるような教育プログラムを開発していく。