著者
湯地 晃一郎 中田 はる佳
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

日本のHPVワクチン公費助成施策は、諸外国と比べ短期間で決定された。政策決定過程に影響を与えた因子について、国内の新聞・ウェブページ報道記事から関連キーワードを抽出解析した。キーワードの出現数は2010年に2峰性のピークを認め、肯定的なキーワードは新聞記事に多く、ウェブページ掲載記事では少なかった。接種推進運動と肯定的報道記事が、公費助成施策に大きな影響を与えたことが示唆された。
著者
中田 はる佳
出版者
科学技術社会論学会
雑誌
科学技術社会論研究 (ISSN:13475843)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.161-176, 2020-04-30 (Released:2021-04-30)
参考文献数
46
被引用文献数
1

未承認薬利用制度を積極的に導入してきた米国で,Right to try( RTT)連邦法が成立した.本法下では,FDAなどの審査を経ずに,患者が製薬企業に未承認薬利用を要望できる.患者の治療選択肢が拡大したように思える一方,患者の身体・生命の保護が不十分との指摘や,未承認薬利用の費用補助について定めがなく,患者が未承認薬を「試す権利」の保護が不十分という指摘がある.患者や家族の間では,資金調達手段としてメディカルクラウドファンディングが注目されている.手軽に資金を募れる一方で,医療への不平等なアクセスが解消されない,患者や家族のプライバシーが過度に損なわれるなどの課題もある.日本では,欧米の制度を参考に,拡大治験と患者申出療養制度が導入された.これらの制度は「臨床試験の実施を求める権利」を患者に与えるが,個人の治療として未承認薬を「試す権利」を与えてはいないようにみえる.患者個人の治療選択肢の拡大とエビデンス集積のバランスのとり方は引き続きの検討が必要であろう.