著者
中田 雅弘 中田 幸之介 Kawaguchi Fumio 保尊 正幸 寺田 淳 Yamate Noboru 串田 一樹
出版者
特定非営利活動法人 日本小児外科学会
雑誌
日本小児外科学会雑誌 (ISSN:0288609X)
巻号頁・発行日
vol.32, no.5, pp.769-775, 1996
参考文献数
16
被引用文献数
1

長期経静脈栄養施行中の患児2例に血漿中セレン濃度の異常低値を認めた.これらの症例に対しセレン製剤の補充療法を行い,各種セレン指標を経時的に測定した.両症例の血漿中セレン濃度は投与開始4週後に基準値に復したが,赤血球中セレン濃度は回復に16週を要した.グルタチオンペルオキシダーゼ活性値 (GSH-Px) の低下は1例で赤血球中に,他の1例で血漿中に認めた.血漿中 GSH-Px はセレン製剤投与開始4週で基準値に復したが,赤血球中では回復するまでに30週以上を要した. 尿中セレン濃度は両症例ともセレン製剤の投与量の増量に伴って高まり,血中濃度の低下に伴い減少した.亜鉛,銅はセレン製剤投与による影響は認めなかった.ビタミンE 値が投与前より低値であった1例ではセレン製剤投与後,正常に復した.以上のごとくセレン製剤の投与により血漿中セレン濃度およびグルタチオンペルオキシダーゼ活性は速やかに上昇するが,赤血球中濃度の上昇は緩徐であった.しかし,その改善は症状と平行した.赤血球中濃度の低下は長期間のセレン欠乏状態を意味し,投与開始の目安と考える.尿中セレンの排泄量と血漿中セレン濃度の変動から勘案するとセレンの投与量は3〜7μg/kg/日が適当と考えられ,3ヵ月以上に及ぶ完全経静脈栄養施行時には赤血球中セレン指標を検討し,セレン製剤の添加が望ましいと思われた.
著者
久代 裕史 岡松 孝男 八塚 正四 角田 ゆう子 岡本 信也 松村 光芳 五味 明 菅野 壮太郎 鈴木 誠 飯島 忠 中田 雅弘
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和医学会雑誌 (ISSN:00374342)
巻号頁・発行日
vol.50, no.4, pp.445-449, 1990-08-28 (Released:2010-09-09)
参考文献数
20

小児の異物誤飲に遭遇する機会は少なくない.特に, 最近ではボタン型電池に代表される金属性の異物が増加の傾向にあって, その対処にはさまざまな方法がある.私どもは過去6年間に10例の金属性胃内異物に対してマグネットチューブを使用し, 全例入院を要さずに摘出でき, その有用性が確認できた.この摘出法は透視下で施行する必要があるものの, 簡便で安全に誰もが習得でき, 多くの磁性体金属性異物に対して推奨すべき摘出法と考える.