著者
中西 佳世子
出版者
京都産業大学
雑誌
京都産業大学論集. 人文科学系列 = Acta humanistica et scientifica Universitatis Sangio Kyotiensis (ISSN:02879727)
巻号頁・発行日
no.50, pp.231-244, 2017-03

ナサニエル・ホーソーンの故郷セイレムを舞台とする『七破風の屋敷(The House of SevenGables)』(1851)は過去と現在の連続性を前面に出した作品である。その序章の語り手は,本体の物語が代々のピンチョン家にふりかかる災いを描く「呪いの成就」の物語であると予告する。しかし,実際の物語は「機械仕掛けの神」を用いたかのように,ピンチョン家の末裔に唐突に訪れた幸運な結末で閉じられる。こうした序文と本体の矛盾および不自然な物語の結末は,この作品の欠陥とされてきた。しかし,物語におけるセイレムの噂をする「群集」の存在,ならびに物語を通して継続的に行われるプロヴィデンスへの言及に注目すると,ホーソーンが「呪いの成就」と「呪いの解体」という,相反する方向に進むプロットを巧妙に組み込んでいることが分かる。物語の語り手は,噂をする「群集」の側の視点で「呪いの成就」のプロットを展開させる一方,その「群集」とは距離をおき,彼らには知り得ないプロヴィデンスの計画があることを示唆しながら「呪いの解体」のプロットを展開させるのだ。本論は『七破風の屋敷』の噂をする「群集」とプロヴィデンスへの言及に注目することで,相反するプロットを持つ物語の二重構造を明らかにし,そこに提起される「個人」と「集団」の問題,および,作家と社会の関係性を考察するものである。
著者
吉田 秀紀 中西 佳世子 藤沢 仁子 田中 珠 松邑 勝治
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報プロフェッショナルシンポジウム予稿集 第14回情報プロフェッショナルシンポジウム
巻号頁・発行日
pp.125-129, 2017 (Released:2017-11-01)
参考文献数
8

一般的に、新たな発見や発明は、論文として出版されるよりも前に先ずは学会で発表されることから、適時的に科学技術の動向を測る手段の一つとして、学会予稿集に着目した。 国内25学会の予稿集(2012~2016年)を対象にJ-GLOBAL knowledgeを用いて準ディスクリプタを抽出し比較検討した。特に、日本金属学会において“高エントロピー合金”や“積層造形”など実際の研究動向を反映する抽出結果が得られた。また、情報処理学会について抽出結果とCRDS俯瞰報告書との照合を行い、両者ともにAI関連の語が頻出しているものの、前者はユーザインタフェイス,認知科学系の語が多く、後者はオントロジーやLOD(リンクト・オープン・データ)関係の語が頻出するなどの差異が認められた。 本手法の実用可能性の片鱗は認められたが、方法論の更なる検討を進めることが必要で、その際、学者や有識者ら外部との意見交換が有効であろう。