著者
今榮 國晴 中西 宏文
出版者
名古屋音楽大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

コンピュータ利用に関する性差gender differenceの状況を分析して、できるだけ性差が少ない状況を実現するための、教育的働きかけを提案することが本研究の目的である。平成9年度において調査票を作成し、小学校911名、中学校875名、高校生1504名、平成10年度に大学生432名(合計3722名、いずれも有効回答者数)を調査した。1970年代、情報機器の普及が始まって以来、情報リテラシーについて男性が女性より高い水準にあるという一般的な信念が、世界的に認められてきた。我々が最初に調査した1984年には、小・中・高校生でパソコンを操作できる女子は、男子の1/3から1/4しかなかった。しかし、1990年代に入り、中学校で情報基礎領域の授業が始まる頃から、性差が急激に縮小し、今回の調査では、パソコン・ワープロ使用率では男女とも90%を越えるようになり、性差はほぼ消滅したと考えられる。このことは本研究の主要な結論と言えるが、これには学校教育が大きく寄与したと思われる。しかし、パソコン等の使用内容には大きな性差がある。1.パソコン等の利用内容として、絵や文字の作成では女子が、ゲーム等の利用では男子が多い傾向があり、利用内容には性差が存在するが、このことは教育的にどのような意味をもつかは明らかにできなかった。これに関連して、電子おもちゃの所有傾向も、ファミコン及びポケット型ゲーム機は男子の所有率が高く、ラベルづくり機、電子手帳の所有率は女子が男子より高いことが分かった。2.パソコン・ワープロを使えない児童生徒は少数であるが、かれらは教科学習が好きでなく、また不得意であり、学習塾への通塾も少なく、学校生活に適応感が低い傾向があることが明らかになった。
著者
今榮 國晴 村久保 雅孝 中西 宏文 多鹿 秀継 橘田 紘洋 清水 秀美 平田 賢一
出版者
名古屋音楽大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1995

〈目的〉中学校技術・家庭科「情報基礎領域」の授業の前後に、生徒のコンピュータリテラシーがどのように変化するかを明らかにする。〈手順1〉コンピュータリテラシーテスト(第3版)の標準化測定ツールとして我々が開発したコンピュータリテラシーテストの第3版を作成し、中学生2688人、高校生679人を対象に標準化した。このテストは、情意面を測定するコンピュータ態度尺度、コンピュータ不安尺度の2尺度、及びコンピュータ教養的知識尺度、コンピュータ技術的知識尺度の知識面2尺度の計4尺度から構成されている。テスト第2版標準化(平成2年)のデータと比較すると、パソコンやワープロを操作できる生徒が7割前後に増えたこと、コンピュータへの肯定的態度の増加、コンピュータへの不安や緊張の減少など、情報化に沿った変化があったが、知識量に変化はなかった。〈手順2〉情報基礎授業の前後の比較6中学校の3年生566人の生徒を対象に、情報基礎領域の授業(20〜30時間)の前後にコンピュータリテラシーテストの得点がどのように変化したかを調べた。その結果、コンピュータに関する知識は増加したが、コンピュータに対する態度に変化はなく、コンピュータ不安は授業後に高くなることが分かった。情報基礎授業が、コンピュータに対する不安や緊張を高めることは、授業の方法や内容に改善すべき点があることを示唆している。義務教育における教科指導は、知識の習得もさることながら、社会人として、将来、情報化に積極的に対応できるように学習を継続できる構えを形成することに主目標があるはずだからである。その他、授業改善に有用な資料を得ることができた。