著者
高橋 正記 服部 芳明 橘田 紘洋 藤田 晋輔 古川 惠子
出版者
鹿児島大学
雑誌
鹿兒島大學農學部學術報告 (ISSN:04530845)
巻号頁・発行日
vol.45, pp.89-96, 1995-03-31
被引用文献数
2

教員や児童・生徒の疲労自覚症状の訴え率は校舎構造や建築材料によって違いがあるかどうかを検討した.本論文では, 教員および児童・生徒の疲労自覚症状を調査し, 校舎構造別の訴え率を比較した.なお, 学校校舎は校舎構造によって木造校舎, 内装木質校舎, 典型的なRC造校舎の3種類に分類した.内装木質校舎とはRC造校舎でも教室の腰壁と床面が木質材料である校舎とし, それ以外のRC造校舎を典型的なRC造校舎と定義した.調査対象は九州地方おける小学校と中学校の教員および児童・生徒である.調査表は日本産業衛生学会・産業疲労研究会が提案した調査表を用いた.この調査表は30の疲労項目から成り, 10項目ごとにI群「ねむけとだるさ」, II群「注意集中の困難」, III群「局在した身体違和感」に分けられる.これらの疲労自覚症状について, 校舎構造別の訴え率を比較した結果, 以下のことがわかった.1.教員および児童・生徒の疲労自覚症状の訴え率はI群が最も高く, III群が最も低かった.訴え率の大小関係は「I>II>III」であった.児童・生徒の自覚疲労はねむけの症状が多かった.2.教員も児童・生徒もともに寝不足になるほど, 訴え率が高くなっていた.また, 小学5年生よりも中学2年生のほうが訴え率が高かった.3.木造校舎と典型的なRC造校舎の訴え率を比較した場合, 教員も児童・生徒もともに木造校舎の訴え率のほうが低かった.特に一般的症状と精神的症状に有意差が認められた(I群とII群, p<0.01).4.内装木質校舎と典型的なRC造校舎の訴え率を比較すると, 児童・生徒の場合, 内装木質校舎のほうが訴え率が低かった.しかし, 教員の場合は内装木質校舎のほうが典型的なRC造校舎よりも訴え率が高く, 児童・生徒の場合とは反対の傾向を示した.5.児童・生徒の場合は, 昨夜の睡眠時間に対する満足度が寝不足であったときに, 典型的なRC造校舎より木造校舎のほうが訴えが少なく, 有意差が認められた.教員の場合は, 昨夜の睡眠時間に対する満足度が「十分」であったときに校舎構造別の訴え率に有意差が認められた.すなわち, 典型的なRC造校舎より木造校舎のほうが訴えが少なく, また内装木質校舎より典型的なRC造校舎のほうが訴えが少なかった.
著者
今榮 國晴 村久保 雅孝 中西 宏文 多鹿 秀継 橘田 紘洋 清水 秀美 平田 賢一
出版者
名古屋音楽大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1995

〈目的〉中学校技術・家庭科「情報基礎領域」の授業の前後に、生徒のコンピュータリテラシーがどのように変化するかを明らかにする。〈手順1〉コンピュータリテラシーテスト(第3版)の標準化測定ツールとして我々が開発したコンピュータリテラシーテストの第3版を作成し、中学生2688人、高校生679人を対象に標準化した。このテストは、情意面を測定するコンピュータ態度尺度、コンピュータ不安尺度の2尺度、及びコンピュータ教養的知識尺度、コンピュータ技術的知識尺度の知識面2尺度の計4尺度から構成されている。テスト第2版標準化(平成2年)のデータと比較すると、パソコンやワープロを操作できる生徒が7割前後に増えたこと、コンピュータへの肯定的態度の増加、コンピュータへの不安や緊張の減少など、情報化に沿った変化があったが、知識量に変化はなかった。〈手順2〉情報基礎授業の前後の比較6中学校の3年生566人の生徒を対象に、情報基礎領域の授業(20〜30時間)の前後にコンピュータリテラシーテストの得点がどのように変化したかを調べた。その結果、コンピュータに関する知識は増加したが、コンピュータに対する態度に変化はなく、コンピュータ不安は授業後に高くなることが分かった。情報基礎授業が、コンピュータに対する不安や緊張を高めることは、授業の方法や内容に改善すべき点があることを示唆している。義務教育における教科指導は、知識の習得もさることながら、社会人として、将来、情報化に積極的に対応できるように学習を継続できる構えを形成することに主目標があるはずだからである。その他、授業改善に有用な資料を得ることができた。