著者
中野 敬一
出版者
都市有害生物管理学会
雑誌
家屋害虫 (ISSN:0912974X)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.105-114, 2000-01-30

ホンデュラスにおけるタバコシバンムシの生息状況を把握するため,フェロモントラップによる調査を行った。(1)1家屋内外に1997年7月から1998年6月の1年間,毎月トラップを設置した。タバコシバンムシを1年間を通じて捕獲することができた。屋内の平均捕獲数の合計は43.7であり,最小捕獲数は0.7,最大捕獲数6.3であった。屋外(排水パィプ横)での捕獲数は合計52,最小捕獲数1,最大捕獲数15であった。屋外(中庭)の捕獲数は合計229,最小捕獲数4,最大捕獲数45であった。(2)5ケ所の公園に1998年3月,1998年9月,1999年3月7日間トラップを設置した。1998年3月の調査による総捕獲数は15で,平均捕獲数は3.8であった。1998年9月の調査による総捕獲数は109で,平均捕獲数は21.8であった。1999年3月の調査による総捕獲数は2で,平均捕獲数は0.7であった。(3)首都の2ケ所の事務所と3ケ所の住宅の屋内外に1998年9月,1999年3月,7日間トラップを設置した。ならびに地方都市の5ケ所の住宅の屋内外に1998年9月,7日間トラップを設置した。1998年9月,首都ではすべての調査箇所の屋内外でタバコシバンムシが捕獲された。総捕獲数は屋内で45,屋外で30であり,その平均捕獲数は屋内で7.5,屋外で5である。地方都市では3ケ所でタバコシバンムシが捕獲されたが,2ケ所では捕獲されなかった。捕獲されなかった地方は標高の高いラ・エスペランサと盆地であるラ・パスという町である。屋内の総捕獲数は48,平均捕獲数は9.6であった。屋外の総捕獲数は5,平均捕獲数は1.25であった。1999年3月,首都では屋外,屋内ともに1ケ所のみで捕獲され,総捕獲数は著しく少なく屋内外とも2であった。(4)小麦粉のべイトトラップによる調査を行ったが,次世代のタバコシバンムシは生育しなかった。タバコシバンムシの捕獲数は雨期に多くなった。しかし,その捕獲数は日本に比べると少ない。その原因として,日本と異なる生態型のタバコシバンムシの可能性,亜熱帯環境の生物的影響と気象環境の影響,ホンデュラスの食品環境と居住環境,特に都市化の違いが考えられた。
著者
中野 敬一
出版者
日本ペストロジー学会
雑誌
ペストロジー学会誌 (ISSN:09167382)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.21-28, 2002
参考文献数
17
被引用文献数
8

<p>都市公園におけるゴキブリの生息状況を把握するため,2000年8月から2001年8月に東京都港区の公園等52箇所で調査を行った.夜間観察でゴキブリの生息の有無を確認し,種類,個体数,発見場所,活動状況を記録した.また,ゴキブリが生息していた樹木の種類等を調査した.</p><p>ゴキブリの生息は調査した公園等52箇所の46%である24箇所で確認できた.ゴキブリの種類はクロゴキブリとヤマトゴキブリであった.ゴキブリは公園の地面と樹木上で確認した.ゴキブリを確認した樹木は大木・老木が多く,12科19種であった.クロゴキブリはイチョウ,ケヤキ,ソメイヨシノなどに生息していた.ヤマトゴキブリは6,000m<sup>2</sup>を越える大きな公園にあるスダジイ,シラカシ,ケヤキ,エノキなどに生息していた.クロゴキブリは7月〜9月に多く確認した.ヤマトゴキブリは1年を通して確認したが,4月と11月に幼虫数のピークがあった.クロゴキブリは屋外でゴミ,鳥の糞,樹液,ネコ餌などを摂食していた.東京の都市部ではクロゴキブリもヤマトゴキブリ同様に公園で越冬し,周年生息ができると判断した.都市温暖化はクロゴキブリの屋外生息性を促進する可能性がある.また,公園でのネコやハトへの餌供給はゴキブリの増加を助長する怖れがある.</p>