- 著者
-
金 演鎬
中野 義夫
- 出版者
- 合成樹脂工業協会
- 雑誌
- ネットワークポリマー (ISSN:13420577)
- 巻号頁・発行日
- vol.30, no.2, pp.115-121, 2009 (Released:2013-03-29)
- 参考文献数
- 16
ポリフェニル基を有するタンニンゲルは金属イオンに対して親和性が高いことから,二次資源(廃電子部品等)から貴金属の再資源化を図るゲル/液抽出への応用が期待される。タンニンゲルの貴金属吸着機構は酸化還元反応であり,貴金属イオンの酸化還元電位差を利用し,Au(Ⅲ) を含むPd(Ⅱ),Pt(Ⅳ) 共存系からAu(Ⅲ) のみを選択的に分離回収することができる。さらに貴金属イオンとの親和性を高めるために,SCN-イオンをゲル内に導入した SCN-内包型タンニンゲルは Pd(Ⅱ),Pt(Ⅳ) 吸着能の向上やPd(Ⅱ)に対して高い選択性を示した。タンニンゲル,SCN-内包型タンニンゲルを組み合わせた貴金属回収システムは Ag(Ⅰ),Au(Ⅲ),Pd(II),Pt(Ⅳ)の連続的および選択的分離回収が可能であり,吸着,分離,濃縮,還元といった一連の単位操作をゲルネットワーク上で行うことができるため,還元剤,凝集剤等の添加剤が不要,かつ,シンプルなゲル/液抽出プロセスの技術開発につながる。