著者
Muleya Janet S. 中市 統三 菅原 淳也 田浦 保穂 村田 智昭 中間 實徳
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.60, no.8, pp.931-935, 1998-08-25
被引用文献数
1 15

猫自然発生乳腺腫瘍の肺転移による胸水から得られた腫瘍細胞から, 長期培養可能な株化細胞を樹立し(FRM), その性状について検討した.この細胞は大型で多角の上皮様形態の細胞からなり、ギムザ染色において高いN/C比が認められた。また単層状態で増殖し, その倍加時間は22.4時間であった.60個の細胞の染色体数を検討したところ, 染色体数はモード79であった。さらに樹立細胞として無限に増殖することを確認するために, 細胞の不死化に関連した逆転写酵素の一種であるテロメラーゼの活性をTRAP法で測定したところ, 強い活性が認められ, 細胞の分裂に伴うテロメアの短縮が起こらず, 不死化していることが示唆された.またヌードマウスに対する皮下移植では, 雌雄いずれにも移植可能であり, 病理組織学的にはcarcinomaであった.しかし観察を行った移植6週間以内では, 転移巣は発生しなかった.エストロジェン・レセプターは培養初期にきわめて少量認められたが, その後継代とともに消失し, またヌードマウスに形成された腫瘍においても認められなかった.以上のことから, この腫瘍細胞数は無限増殖能を獲得しており, 猫乳癌の実験的検討に必要な検討材料を安定して供給することが可能な, 有用な検討モデルと考えられた.