著者
村田 安哲 板本 和仁 磯崎 恒洋 原口 友也 西川 晋平 檜山 雅人 谷 健二 井芹 俊恵 伊藤 晴倫 中市 統三 田浦 保穂
出版者
一般社団法人 日本獣医麻酔外科学会
雑誌
日本獣医麻酔外科学雑誌 (ISSN:21896623)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1+2, pp.10-14, 2019 (Released:2020-05-08)
参考文献数
12

我々は膀胱から尿道に渡る移行上皮癌と診断された症例に遭遇した。症例に対し、膀胱と尿道の全摘出術を適用し、排尿機能維持のために小腸の一部を用いて導管を作成、腹壁への尿路変更を実施した。術直後から良好な尿流出を認め、造影X線CT検査では小腸導管は造影効果が認められ、血流は良好であることと良好な尿の排出が確認された。術後397日の定期検査では全身状態は良好に維持されていたが、術後495日目に斃死した。下部尿路系の移行上皮癌に対し、獣医学領域における新たな治療法が示唆された。
著者
Muleya Janet S. 中市 統三 菅原 淳也 田浦 保穂 村田 智昭 中間 實徳
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.60, no.8, pp.931-935, 1998-08-25
被引用文献数
1 15

猫自然発生乳腺腫瘍の肺転移による胸水から得られた腫瘍細胞から, 長期培養可能な株化細胞を樹立し(FRM), その性状について検討した.この細胞は大型で多角の上皮様形態の細胞からなり、ギムザ染色において高いN/C比が認められた。また単層状態で増殖し, その倍加時間は22.4時間であった.60個の細胞の染色体数を検討したところ, 染色体数はモード79であった。さらに樹立細胞として無限に増殖することを確認するために, 細胞の不死化に関連した逆転写酵素の一種であるテロメラーゼの活性をTRAP法で測定したところ, 強い活性が認められ, 細胞の分裂に伴うテロメアの短縮が起こらず, 不死化していることが示唆された.またヌードマウスに対する皮下移植では, 雌雄いずれにも移植可能であり, 病理組織学的にはcarcinomaであった.しかし観察を行った移植6週間以内では, 転移巣は発生しなかった.エストロジェン・レセプターは培養初期にきわめて少量認められたが, その後継代とともに消失し, またヌードマウスに形成された腫瘍においても認められなかった.以上のことから, この腫瘍細胞数は無限増殖能を獲得しており, 猫乳癌の実験的検討に必要な検討材料を安定して供給することが可能な, 有用な検討モデルと考えられた.
著者
原口 友也 板本 和仁 原田 秀明 谷 健二 仲澤 宏 田浦 保穂
出版者
獣医麻酔外科学会
雑誌
獣医麻酔外科学雑誌 (ISSN:09165908)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.1-5, 2011 (Released:2011-10-18)
参考文献数
10

2歳齢、雄のアメリカン・コッカー・スパニエルが慢性鼻出血を主訴に来院した。X線CT検査で真菌感染症が強く疑われたが、生検・培養検査・血清学検査で真菌感染を証明できなかったため、左鼻腔・前頭洞切開術を実施し鼻腔粘膜を切除した。切除した粘膜組織は病理組織検査により、真菌性肉芽腫と診断されたため、抗真菌剤の投与を行った。その結果、本症例は3年4ヵ月以上再発を認めずに生存している。以上より、X線CT検査で真菌感染症の特徴的な所見が得られた場合は、検査で感染が証明されなくても、診断・治療のために適切な鼻腔や前頭洞切開による鼻粘膜の生検が必要であると考えられた。
著者
田賀 淳夫 中山 正成 田中 宏 田浦 保穂
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.81-84, 1998-02-20 (Released:2011-06-17)
参考文献数
18

排便排尿失禁および後躯麻痺を呈し脊髄疾患が疑われた犬 (雌, 雑種, 7ヵ月齢, 体重7kg) が単純X線検査により二分脊椎症と診断された. 脊髄造影X線検査による造影ラインとMagnetic Resonance Imaging (MRI) 矢状断面脊髄像とは一致し, さらにMRIによって脊髄空洞症が認められたことから, この例は脊髄空洞症を併発した嚢腫性二分脊椎症 (開放性脊髄髄膜瘤) と診断された.
著者
中市 統三 笹木 祐司 長谷川 恵子 森本 将弘 林 俊春 板本 和仁 宇根 智 田浦 保穂
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.58, no.12, pp.829-833, 2005-12-20 (Released:2011-06-17)
参考文献数
10
被引用文献数
1 3

5歳齢のラブラドール・レトリーバーが3週間前に急性に発症した四肢麻痺の精査を希望して来院した. 神経学的検査では左前肢は下位運動神経徴候, 両後肢は正常あるいは上位運動神経徴候を示しており, 第6頸髄から第2胸髄の脊髄分節における障害と考えられたが, 単純X線検査では脊椎に異常所見は認められなかった. 磁気共鳴画像診断では第6頸髄内の左側にT1強調画像で等信号, T2強調画像で高信号を示し, 増強効果をほとんど示さない病変が認められ, 線維軟骨塞栓症 (FCE) と仮診断した. 病理解剖の結果, 同部位に脊髄の虚血性梗塞像が認められ, さらにその周辺の血管内に線維軟骨が確認できたことから, 本症例はFCEと確定診断された.
著者
仲澤 宏 伊藤 良樹 谷 健二 板本 和仁 土橋 英理 原口 友也 田浦 保穂 中市 統三
出版者
獣医麻酔外科学会
雑誌
獣医麻酔外科学雑誌 (ISSN:09165908)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.29-34, 2011 (Released:2012-04-11)
参考文献数
10
被引用文献数
1 1

11歳の雌の柴犬が2ヵ月前からの頻回の嘔吐を主訴に当院を紹介来院した。初診時、ボディコンディションスコア(BCS):3/9、X線CT検査において胃の拡張と幽門部の胃壁の肥厚、内視鏡検査において幽門部の腫瘤病変が認められ、内視鏡下生検では胃腺癌が強く疑われた。内科的な入院管理の後、幽門部の腫瘤を含む遠位約1/3の胃と十二指腸を約1.5 cm切除し、ビルロート II法による消化管の再建を行った。手術によって摘出した腫瘤の病理組織学的診断は胃腺癌であった。症例は術後合併症や再発の兆候もなく、術後約7ヵ月の現在も良好に維持されており、QOLの向上のためにも、転移を示唆する所見がない症例では積極的な切除を試みることが重要であると考えられた。