著者
パブローバ マルガリータ ピィティス ジェームズ 横山 悦生 丸山 佐和子 丸井 美穂子
出版者
名古屋大学
雑誌
職業と技術の教育学 (ISSN:13442627)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.43-66, 2002-04-30

本論文は英国のデザイン(設計)を基礎としたアプローチをロシアの技術科教育に応用する際の制約を検討する。この際,技術科教育の発展に影響する主要な社会・文化的な要因がまず分析される。これらの特徴としては,ロシア文化の可能性(実用主義的ではない),科学技術の解釈における強固な工学の伝統,その教科の歴史的な発達,1980年代以降の教育政策の主な傾向があげられる。次に,上記の諸要因によって確立された独特なコンテキストがロシアにおける市場改革の一つの結果として現れる経済的合理主義のイデオロギーと知識の理解と習得への非実用的なアプローチとの間にある緊張関係,そして教育政策における主な傾向としての人間化と教授への伝統的な教科主義アプローチとの間にある緊張関係をつくりだすことが議論される。本論文の後半部分は,ロシアにおける技術科教育のモデルとそれに関する言説が議論される。デザイン(設計)を基礎としたアプローチはこの教科領域における発展の主要な傾向であることが示される。次に,ニジニ・ノブゴーラドにおける先導的な学校での実験の結果の評価を目的とした研究結果が示される。デザイン(設計)を基礎にしたアプローチの英国バージョンのロシアの学校への適応には制約があることが示される。このアプローチの深く文化的に根づいた"誤った解釈"がみられる。これらは,デザイン(設計)を基礎としたプロジェクトに対する生徒の態度と理解,教師の教育活動に対する解釈に反映している。その制約が本論文の最初の部分で議論された社会・文化的枠組みによって形成されることが議論される。この結果,このデザイン(設計)を基礎にしたアプローチが普遍的なものとして採用されるべきではなく,おのおのの文脈に対して,特殊化されるべきであることが議論される。
著者
丸山 佐和子
出版者
北ヨーロッパ学会
雑誌
北ヨーロッパ研究 (ISSN:18802834)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.23-35, 2016 (Released:2017-12-01)

本論ではスウェーデンの欧州単一市場への統合に伴う経済制度の変更を以下の二つの側面から分析する。第一に、欧州単一市場への統合、すなわち4つの移動の自由の導入のために直接的に生じた制度変更である。第二に、欧州単一市場への統合を前提に実施した国内制度の調和のための制度変更である。続いて制度変更がスウェーデン企業や経済に及ぼした影響を考察した結果、次の三点が明らかになった。第一に、モノ・サービス・資本の移動の自由化はスウェーデン企業の海外展開の障壁を引き下げ、多国籍的活動を後押しするものであった。第二に資本規制が緩和されたことで外資の流入が増加し、スウェーデン企業の資本関係が大きく変化した。第三に、制度の調和のための各種改革はスウェーデンの市場をより開放的で効率的なものに変え、スウェーデン企業を取り巻く経済環境や競争条件も大きく変えた。
著者
丸山 佐和子
出版者
北ヨーロッパ学会
雑誌
北ヨーロッパ研究 (ISSN:18802834)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.73-82, 2012 (Released:2018-10-01)

本論は関西地域と西ヨータランド地域において進展している広域自治体の統合について比較分析を行い, その違いを明らかにすることを目的とする。地域の経済・産業構造および統合の枠組みに注目し分析を行った結果, 以下の点が明らかになった。第一に, 両地域の産業構造には重厚長大型産業の不振による経済的な停滞を経験したという共通点がある。 これを背景に地域経済活性化の方策を模索していた両地域には, 広域自治体改革の議論を受け入れる素地が作られた。第二に, 両地域の統合にはいくつかの根本的な違いがある。広域自治体の事務が限定的である, ランスティングとレーンの行政区域が一致している, 自治体の規模が小さい, EUの存在といった点で西ヨータランドの統合は関西と異なっている。これらの相違は,先行する西ヨータランドに比べ関西における広域自治体の統合が様々な側面で困難な調整に直面していることを浮き彫りにした。