著者
丸山 哲央 山本 奈生
出版者
佛教大学
雑誌
社会学部論集 (ISSN:09189424)
巻号頁・発行日
vol.50, pp.17-31, 2010-03-01

社会学や人類学における文化理論では,宗教は文化の普遍的項目あるいは普遍的類型(universal pattern)として扱われてきた。しかし,文化のグローバル化との関連で宗教に言及する場合,宗教の包括的な定義をもってしては,そのグローバル化の実態を捉えることは困難である。なぜなら,グローバルなレベルでの宗教的実践が周知の事実として確認されると同時に,宗教の本質には身体性と地域性という時間・空間に規定されたローカルな実存的(existential)要素が不可欠なものとして含まれている。本稿では,世界宗教とされる仏教のグローバル化について,特に浄土宗の布教活動である海外開教を事例として取り上げ,その理論的分析方法について考察する。この際に,仏教の教義,教理を含む文化の認知的および評価的要素とともに,具体的な宗教的実践にかかわる実存的要素と宗教芸術や娯楽的行事(仏教の「花まつり」等)を捉えるための表出的要素とを分析概念として設定することの有効性が確認された。
著者
丸山 哲央 山本 奈生 渡邊 秀司
出版者
佛教大学
雑誌
社会学部論集 (ISSN:09189424)
巻号頁・発行日
vol.52, pp.1-18, 2011-03-01

インドから中国,朝鮮・韓国を経て移入され,日本化された仏教(Japanized Buddhism)は日本固有の要素にすべての時代,地域に通底する普遍的要素を付加し,独自の体系を形成してきた。日本仏教に固有の要素でありながら新たな普遍性を備え,逆に外部に再発信しうる要素とは何かということの解明が,文化のグローバル化現象の根幹をなす問題である。本稿では,日本仏教のグローバル化について,特に布教活動である南米での海外開教を事例として取り上げ,その理論的分析方法について考察する。この際に浄土宗と浄土真宗の開教活動に焦点を当て,見仏体験にかかわる文化の実存的要素の伝播可能性についての究明を試みたが,文化伝播のメディアとの関連での分析が必要なことが明らかになった。