著者
丸山 空大
出版者
宗教哲学会
雑誌
宗教哲学研究 (ISSN:02897105)
巻号頁・発行日
vol.30, pp.82-94, 2013-03-31 (Released:2019-08-08)

Hermann Cohen is one of the best known German philosophers of the late 19th and early 20th centuries. He developed a highly idealistic system of philosophy, which he believed provided a basis for all science. In his later years, he began to write about religion. Although he tried to argue the theme within his system of philosophy, the system could not hold the argument because of Cohen’s special attachment to his own religion, Judaism. In this paper, I examine Cohen’s works (from 1880 to his death in 1918) that deal with religion and Judaism, and show how this theme came to dominate his thinking in later years. In the earlier stages of his life, Cohen disputed the contemporary anti-Semitism, but did not regard religion as an intrinsic element of the system because he believed in the total assimilation of German Jews into Germany and in the possibility of reducing Jewish monotheism to idealistic ethics. But as World War I broke out, Cohen started to discuss religion as a substantial part of his philosophical system. The more apologetic his argument became, the more the argument contradicted the system. His personal faith in messianism was strongly reflected in this change, after his hope of a German-Jewish symbiosis was destroyed in the course of the war.
著者
丸山 空大
出版者
一橋大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2012-04-01

平成26年度は、課題「フランツ・ローゼンツヴァイクの後期思想に関する研究」の最終年度として、平成25年度までの研究の成果をふまえつつ、ローゼンツヴァイクの教育論と律法についての見方に特に着目しながら研究を進めた。まず、初期から晩年にかけてのローゼンツヴァイクの教育論の変遷を追った。このことを通して、ローゼンツヴァイクが宗教教育によって一人ひとりのユダヤ人がユダヤ人としての自覚を獲得するというプロセスを重視していたことが明らかになった。このことを彼は「ユダヤ人になるJudewerden」ことと呼んでいる。彼は、初期から晩年まで一貫して、近代の(ドイツ・)ユダヤ人は家庭において自然にユダヤ人としての生活習慣や心構えを獲得するということができなくなっているから、あらためて「ユダヤ人にな」らなければいけないと考えていたのだ。このように初期思想と後期思想の連続性が明らかになったことで、後期ローゼンツヴァイクの、初期思想に対する自己批判の要点がはっきりとした。この「ユダヤ人になる」というプロセスは、初期思想の一つの到達点である『救済の星』においては、観念的に、読書と思考を通した世界観の変容として理解されていた。これに対し、後期では祈りや宗教儀礼への参加という実践的な要素が重視されるようになるのだ。しかし、このような儀礼の重視は、伝統的な正統派への退行を意味するのではないのだろうか。このような疑問を解明するために、ローゼンツヴァイクの思想を同時代の正統派の論客イザーク・ブロイアーと比較した。後期ローゼンツヴァイクとブロイアーは、律法の実践を重視することにおいて共通していた。しかし、前者においてはユダヤ人としての意識の獲得が律法の実践に先立つのに対して、後者においては逆に律法の実践を通してユダヤ人としての意識が涵養されると考えられていることがわかった。