著者
丹生 潔
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.25-32, 1990-01-05 (Released:2008-04-14)
参考文献数
36

欧米では過去の実験技術として捨てられた原子核乾板の技術を日本独自の方法で絶えず革新し, 最高の空間分解能1μmを持つ特性を活かしながら, 最先端の素粒子物理学の分野で成果を上げてきた経過について述べる. 原子核乾板の技術はコンピュータ制御の自動飛跡解析機と, 原子核乾板・カウンター複合実験法とにより, 今また素粒子物理学におけるユニークな実験技術として甦った.
著者
丹生 潔
出版者
社団法人 日本写真学会
雑誌
日本写真学会誌 (ISSN:03695662)
巻号頁・発行日
vol.71, no.4, pp.219-228, 2008-08-25 (Released:2011-01-04)
参考文献数
33

第4種の基本粒子チャームを単独で含む素粒子「裸のチャーム粒子」は1971年に日本で, 両面塗布原子核乾板を用いた宇宙線実験で発見された. 米国の加速器実験で1974年にチャーム・反チャームの一対からなる「隠されたチャーム粒子」J/Ψが発見される3年も前のことである. 日本のグループは1975年には, 加速器で生成された人工の「裸のチャーム粒子」も発見し, また, 宇宙線反応で生成された荷電・中性両成分のチャーム粒子の間に数倍の寿命差があることを指摘した. その約10年後に, 原子核乾板と電磁測定器とを組み合わせた複合実験装置を用いて米国の加速器領域で行った精密実験で, この寿命差を再確認した. 更に, ヨーロッパの加速器を用いた別の複合実験で, 1個の反応で2組のチャーム粒子対計4個が同時発生する珍しい現象2例を発見した. これらは全てチャーム粒子研究の歴史の中で特筆されるべき成果である.