著者
久野 純治 坂田 清美 丹野 高三 坪田(宇津木) 恵 田鎖 愛理 下田 陽樹 高梨 信之 佐々木 亮平 小林 誠一郎
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.68, no.4, pp.255-266, 2021-04-15 (Released:2021-04-23)
参考文献数
50

目的 大規模自然災害後の被災地では生活不活発病が問題とされ,それに伴う転倒予防の必要性が高まっている。本研究では東日本大震災後の被災高齢者の新規転倒要因を明らかにすることを目的とした。方法 2011年度に岩手県沿岸部で実施された大規模コホート研究(RIAS Study)に参加した65歳以上の高齢者のうち,転倒や要介護認定,脳卒中・心疾患・悪性新生物の既往がなく,2012~2016年度までの調査に毎年参加した1,380人を対象とした。本研究では毎年の質問紙調査で一度でも転倒したと回答した者を新規転倒ありとした。新規転倒要因には,2011年度実施した自己記入式質問票,身体計測,および,握力検査から,自宅被害状況,転倒不安,関節痛,認知機能,心理的苦痛,不眠,外出頻度,既往歴(高血圧,脂質異常症,糖尿病)の有無,飲酒状況,喫煙状況,肥満度,握力を評価した。新規転倒の調整オッズ比(OR)と95%信頼区間(CI)を,年齢と居住地域を調整した多変数ロジスティック回帰分析を用いて算出した。その後,前期高齢者と後期高齢者に層化し,同様の解析を行った。結果 5年間の追跡期間中,参加者の35.5%(男性31.9%,女性37.9%)が新規転倒を経験した。新規転倒と有意に関連した要因は,男性では認知機能低下疑い(OR[95% CI]:1.50[1.01-2.22]),女性では認知機能低下疑い(1.82[1.34-2.47]),不眠(1.41[1.02-1.94]),脂質異常症の既往(1.58[1.11-2.25]),過去喫煙(4.30[1.08-17.14])であった。年齢層では,後期高齢女性で自宅半壊(7.93[1.85-33.91]),心理的苦痛(2.83[1.09-7.37])が有意に関連した。結論 男女ともに認知機能低下,女性では不眠,脂質異常症の既往,過去喫煙が新規転倒要因であった。後期高齢女性では自宅半壊と心理的苦痛が新規転倒要因となった。大規模自然災害後の転倒予防対策では従来指摘されている転倒要因に加えて,環境やメンタル面の変化にも注意する必要があることが示唆された。
著者
坂田 清美 小野田 敏行 大澤 正樹 丹野 高三
出版者
岩手医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

先ず、BMIを基本とした小児期の新しい肥満指標を開発し、使用マニュアルを作成した。次に、新しい肥満度評価指標(以下標準BMI法とする)を用いて、岩手県において、児童・生徒の肥満度調査を実施した。その結果岩手県では、全国同様小中高と学年が進むにつれて肥満者の割合が高くなる傾向が認められたと同時に、統計学的には有意ではなかったが市街地よりも山間部、沿岸部において肥満者の割合が高い傾向が認められた。使用の感想たついてまとめると、学年に関係なく利用できること、評価が安定していること、大人と連続して利用可能なことがメリットとして挙げられた。デメリットとしては、慣れていないこと、文部科学省のお墨付きがないことによる不安、パソコンが必要なこと等が挙げられた。また、文部科学省の指標では、学年が一つ上がることにより、身長、体重が変化していないにもかかわらず肥満度が突然上下してしまうことが上げられる。この点については、標準BMI法による方法では、安定して評価するころが可能である。和歌山地区における標準BMI法の活用状況調査結果では、和歌山市の小中養護学校の3分の2の学校において使用しており、使用校の8割ではとても使いやすいと答えている。使っている理由としては、パソコンに入力するたけなので簡単だから、使い方が簡単だから、時間がかからないからが上位を占めた。使っていない理由として多かったのは別の方法を利用しているからで、4分の1を占めた。別の方法としては、ローレル指、日比式、保健室用ソフトなどを使用していた。