著者
久保 恵嗣 小林 俊夫 福島 雅夫 芝本 利重 酒井 秋男 上田 五雨
出版者
The Japanese Respiratory Society
雑誌
日本胸部疾患学会雑誌 (ISSN:03011542)
巻号頁・発行日
vol.26, no.8, pp.825-832, 1988

肺水腫における熱とインドシアニン・グリーン (ICG) 色素を用いた二重指示薬希釈法による血管外肺水分量測定の有用性を検討するために, 肺リンパ瘻を作製した麻酔下緬羊を用い, 本法による血管外肺水分量 extravascular lung thermal volume (EVLTV) と, 左房圧上昇 (IP, n=5), Escherichia coli エンドトキシン注入 (ETX, n=5) および肺微小空気塞栓 (Air, n=4) 時の肺循環および肺リンパ動態とを比較検討した. また, 肺リンパ液中のICG濃度を測定した. IP群では, 左房圧 (Pla) 10mmHg上昇に伴い肺動脈圧 (Ppa) も上昇し, 肺リンパ流量 (Qlym) は有意に増加した. 肺リンパと血漿との蛋白濃度比 (L/P) は有意に減少した. EVLTVは有意に増加した. ETX 1μg/kg, iv, 投与3~5時間後, Qlym およびL/Pは有意に増加したが, EVLTVは変化なかった. PpaとPlaは変化なかった. Air群では, 肺動脈主幹部に挿入した細いチューブ (内径0.3mm) より1.2ml/minの空気を3時間にわたり注入した. Ppaは空気注入中有意に増加したが, 注入終了後すみやかに前値に復した. Plaは変化なかった. Qlymは空気注入後より増加し, 注入終了後もその増加は持続した. L/Pは注入終了後軽度増加した. EVLTVは空気注入中著明に減少し, 注入終了後有意に増加した. 肺リンパ液中のICG濃度はETX群で著明に増加したが, 他の2群では変化なかった. 以上より, EVLTVはエンドトキシンおよび肺塞栓存在時の肺水腫の存在の可能性を過小評価する. また肺微小空気塞栓による肺血管透過性の機序は, エンドトキシン肺傷害のそれとは異なることを示唆するものと思われる.
著者
福島 雅夫 吉村 一彦 久保 恵嗣 小林 俊夫 半田 健次郎 草間 昌三
出版者
社団法人 日本呼吸器学会
雑誌
日本胸部疾患学会雑誌 (ISSN:03011542)
巻号頁・発行日
vol.18, no.10, pp.753-757, 1980

22才男. 中岳 (3,084m) 登頂後呼吸困難, 意識障害が出現, 天候不順のため4日間山頂付近に滞留した. 救助時昏睡状態, 全身チアノーゼを認め, 全肺野で湿性ラ音を聴取した. 呼吸不全のため救助後約12時間で死亡. 剖検にて肺水腫の他に肺胞毛細血管, 肺動脈に微小血栓を認め, 脳白質にびまん性点状出血を認め注目された.