- 著者
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久保田 優子
- 出版者
- 九州産業大学
- 雑誌
- 基盤研究(C)
- 巻号頁・発行日
- 2002
本研究は、これまで自明のこととされてきた、植民地朝鮮において「同化」の手段とされた日本語教育の論理について、実証的に解明し、以下の知見が得られた。1.第一次朝鮮教育令期(1911年〜1922年)において、朝鮮総督府は日本語教育により朝鮮人をどのように「同化」しようとしたのかを解明した。その結果、(1)日本語普及の目的は、国語の統一により国家統一を強化することであり、国語(日本語)の趣旨は、コミュニケーションの手段としてよりも、「国民精神の涵養」に重点が置かれていた。(2)総督府が意図した「同化」とは、朝鮮人に「天皇への感謝」の気持ちを持たせ、「実用的」な知識を身に付け、実業に就いて、「勤勉」に働き、役人の命令に従順に従い、「国家に尽す」人間になることであった。(3)「朝鮮教育令」策定に強く関与した、帝国教育会の朝鮮教育方針建議案の策定過程の検討により、内地人の国民統合倫理である「教育勅語」により、朝鮮人をも統合しようとする意図が「建議案」に反映されたことが解明された。2.一方、朝鮮人側の日本語教育の論理解明のため学校史及び『朝鮮日報』を取り上げた。(1)『梨花七十年史』では、日本語教育は不活発で、卒業式や祝祭日にも「君が代」は歌わず賛美歌を歌っていたこと、(2)『延世大学校史』では、総督府に大いに協力的であったこと、(3)「私立普成学校」では、日本語担当教師は朝鮮人を擁護したので朝鮮人に慕われたこと、(4)「私立延喜専門学校」では、1941年「国語常用の徹底」方針を掲げたものの、実際には日本支配に順応しなかったこと、等が解明された。以上により、朝鮮人側において、学校により対応に大きな差があったことが明らかにされた。