著者
久保田 肇
出版者
北海道大学大学院経済学研究科
雑誌
Discussion Paper, Series B
巻号頁・発行日
vol.108, pp.1-34, 2012-12

Gale(1955) とNikaido(1956a) は独立にゲール・二階堂の補題を証明し、それを利用してn 次元ユークリッド空間Rn を財空間とする経済における競争均衡の存在証明を行った。そして、ドブリュー(1959、第5 章) では、ゲール・二階堂の補題を用いるGale(1955) とNikaido(1956a) の議論に沿って、Rn を財空間とす る経済における競争均衡の存在証明を行い、一般均衡理論の文献においてゲール・二階堂の補題を著名にした。Nikaido(1956b,57b,59) では、更に、Rn におけるゲール・二階堂の補題をノルム空間や局所凸線形位相空間にまで一般化した。この、有限次元空間におけるゲール・二階堂の補題を証明した直後に無限次元空間までゲール・二階堂の補題を一般化したという事実は、驚くべき事である。無限個の財がある経済における競争均衡の存在問題はPeleg-Yarri(1970)とBewley(1972) から開始されたのであるが、Debreu(1954) 同様に、これらよりも10 年以上先に既に無限個の財がある経済を取り上げていたのである。そこで本稿の目的はNikaido(1956b,57b,59) による無限次元空間のゲール・二階堂の補題を再考して、1 つの一般化の方向を議論する事である。
著者
久保田 肇
出版者
北海道大学大学院経済学研究科
雑誌
經濟學研究 (ISSN:04516265)
巻号頁・発行日
vol.59, no.3, pp.117-135, 2009-12-10

本論文ではビューリー(2007、第5章)において取り扱われた、クーン/タッカー的な接近法による古典的な凸有限経済における厚生経済学の基本定理を取り上げる。この経済の消費者が凹な効用関数を持つと仮定する事によって、厚生経済学の基本定理は制約条件付最適化(最大化)問題として表現できる。そこでこの問題に非線形計画法の基本定理であるクーン/タッカー定理を適用する事により、パレート最適な配分では線形社会厚生関数が最大化される事が示される。更に、制約条件付最適化(最大化)問題における最大値関数の性質により、財・サービスに対してその市場価格がその限界社会厚生値になっている事や、最大化された線形社会厚生関数の各係数が市場均衡における各消費者の所得/貨幣の限界効用の逆数になっている事が導かれる。これらの結果は効用関数の微分可能性を前提にすることなく得られている。