著者
久枝 一
出版者
日本神経感染症学会
雑誌
神経感染症 (ISSN:13482718)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.55, 2020 (Released:2020-05-13)
参考文献数
19

【要旨】日本をはじめ、先進国で寄生虫感染症はほぼみられることはなくなった。しかし、世界に目を向けると人口の6割が感染のリスクにさらされている。グローバル化が進み輸入感染症として、また、地球温暖化により熱帯・亜熱帯に蔓延する寄生虫感染症が頻繁に起こる恐れもあり、寄生虫感染症を臨床の場でみることも多くなると予想される。寄生虫感染症のなかには中枢神経系を侵し、重篤な症状を示すものがある。本稿では、中枢神経病態を生じる寄生虫感染症について、注意喚起の意味も込めて紹介したい。
著者
濱野 真二郎 久枝 一 野崎 智義
出版者
長崎大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

バングラデシュにおいて赤痢アメーバ症のゲノム疫学および免疫学的コホート研究を展開した。研究期間中、生後30ヶ月までの新生児385人より1426 検体の下痢便検体が得られた。病原性 E. histolyticaに加えて、非病原性E. dispar、病原性が未確定のE. moshkovskiiの検出・同定を試みたところ、4.6% の検体において病原性E. histolytica が検出され、およそ3%の検体においては E. moshkovskii が検出され、同原虫と下痢症との相関関係が認められた。一方、非病原性 E. disparは僅か 0.4% の検体で検出されるにとどまった。さらに、少なくとも6検体が E. moshkovskii単独感染による下痢と考えられた。以上の研究結果よりE. moshkovskiiが小児下痢症の原因となる病原性アメーバである可能性が示唆された。