著者
吉川 哲史
出版者
日本神経感染症学会
雑誌
神経感染症 (ISSN:13482718)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.39, 2020 (Released:2020-05-13)
参考文献数
13

【要旨】水痘帯状疱疹ウイルス(varicella-zoster virus、以下 VZV)は初感染で水痘を起こし、その後脊髄後根神経節に潜伏感染し宿主の加齢、免疫抑制、ストレス等に伴い再活性化し帯状疱疹を起こす。水痘予防のためワクチンが定期接種化され水痘患者数は減少しているが(pros)、一方で患者数減少に伴うナチュラルブースター効果の減衰に伴い、既感染者の水痘特異的細胞性免疫能の減衰スピードが速くなり、帯状疱疹患者の増加、若年化が懸念されている(cons)。帯状疱疹患者の増加は、疱疹後神経痛だけでなくウイルス再活性化に伴うさまざまな神経合併症の増加にもつながる。よって、今後帯状疱疹ワクチンによる帯状疱疹予防の重要性が増すと考えられる。
著者
久枝 一
出版者
日本神経感染症学会
雑誌
神経感染症 (ISSN:13482718)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.55, 2020 (Released:2020-05-13)
参考文献数
19

【要旨】日本をはじめ、先進国で寄生虫感染症はほぼみられることはなくなった。しかし、世界に目を向けると人口の6割が感染のリスクにさらされている。グローバル化が進み輸入感染症として、また、地球温暖化により熱帯・亜熱帯に蔓延する寄生虫感染症が頻繁に起こる恐れもあり、寄生虫感染症を臨床の場でみることも多くなると予想される。寄生虫感染症のなかには中枢神経系を侵し、重篤な症状を示すものがある。本稿では、中枢神経病態を生じる寄生虫感染症について、注意喚起の意味も込めて紹介したい。

1 0 0 0 OA 狂犬病

著者
伊藤(高山) 睦代
出版者
日本神経感染症学会
雑誌
神経感染症 (ISSN:13482718)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.113, 2020 (Released:2020-05-13)
参考文献数
19

【要旨】狂犬病(Rabies)は狂犬病ウイルスにより引き起こされる致死的な神経感染症である。感染動物に咬まれることにより体内に侵入したウイルスは、神経細胞を逆行性に伝播して1〜3ヵ月の潜伏期を経て脳に到達する。そしてさまざまな神経症状を引き起こし、発症から1週間程度で呼吸器不全や多臓器不全等によりほぼ 100%が死亡する。日本は過去 60 年以上狂犬病の発生がないが、世界では年間 59,000 人が狂犬病により亡くなっていると推定されている。狂犬病を発症した場合、有効な治療法はないが、感染後すぐにワクチン接種を行うことにより、ほぼ 100%発症を予防できる。狂犬病について正しい知識を得ることが、ヒトの死亡をゼロにするために重要である。
著者
西條 政幸
出版者
日本神経感染症学会
雑誌
神経感染症 (ISSN:13482718)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.1, 2020 (Released:2020-05-13)
参考文献数
17

【要旨】単純ヘルペスウイルス1型(herpes simplex virus-1、以下 HSV-1)によって引き起こされる疾患は 一般的に良性感染症といえるものの、造血幹細胞移植患者や原発性免疫不全患者では、HSV-1 は重篤で、かつ、慢性に経過する重篤な病態を引き起こす場合がある。大学医学部を卒業して小児科医として勉強し始めたころ、一人の原発性免疫不全症(Wiskott-Aldrich 症候群)の患者と出会った。その患者は3歳のときにHSV-1 に初感染し、再活性化に伴う口唇ヘルペスを繰り返し発症する状態になった。その当時から幸いにも抗ヘルペス薬アシクロビル(acyclovir、以下 ACV)が用いられるようになり、この患者の HSV-1 感染症はACV により治療された。しかし、ACV 治療を継続していたところ、ACV 耐性 HSV-1 による難治性 HSV-1 皮膚粘膜感染症を発症するようになった。また、この患者に対して免疫能再構築を目的に、同種骨髄移植が実施されたが、その際に重症皮膚粘病変が眼瞼部、口唇部などに出現し、ウイルス学的に調べたところ ACV 耐性 HSV-1 によることが明らかにされ、DNA ポリメラーゼ(DNApol)阻害薬フォスカルネット(foscarnet:PFA)で治療された。症状は軽快したが PFA 耐性 HSV-1 が出現した。残念ながらこの患者は移植約半年後に JC ウイルスによる進行性多巣性白質脳症によって亡くなった。この患者に関するウイルス学的検査や研究を行う過程で多くのことを学んだ。ACV 耐性 HSV-1 による新生児での脳炎を世界で初めて報告する研究にも参画し、造血幹細胞移植患者における ACV 耐性 HSV-1 感染症に関する研究を主催する機会も得た。これらの患者から多くのことを学び、多くの共同研究者に支援をいただいた。本論文では、これまでの私が行ってきた患者から学ぶ HSV-1 感染症研究について紹介する。