著者
久能 芙美 岡田 洋右 新生 忠司 黒住 旭 田中 良哉
出版者
学校法人 産業医科大学
雑誌
Journal of UOEH (ISSN:0387821X)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.49-53, 2015-03-01 (Released:2015-03-14)
参考文献数
9
被引用文献数
1

症例は42歳女性.動悸・発汗過多・手指振戦のため2011年3月に来院.甲状腺刺激ホルモン(thyroid stimulating hormone; TSH) < 0.01 μU/ml,遊離サイロキシン (free thyroxine; FT4) 6.15 ng/ml,抗TSH受容体抗体 (TSH receptor antibody; TRAb) 7.8 U/ml の検査所見よりバセドウ病と診断し,メチマゾール 30 mg,プロプラノロール30 mg 内服を開始し甲状腺機能は改善した.しかし,躁症状,易刺激性,幻覚妄想が顕著となり2011年5月医療保護入院となった.アリピプラゾール24 mgおよびリチウム400 mg内服を開始したが,幻覚・妄想症状が遷延し抗精神病薬の調節を要した.甲状腺機能改善に遅れ,2011年7月に精神症状は改善し退院.退院後はメチマゾール10 mg内服で甲状腺機能は正常化を維持し,抗精神病薬内服は中止できた.バセドウ病では気分や活動性の変化などの気分障害が多いが,本例のように幻覚妄想など本格的な精神症状が主徴となり入院加療まで要した報告は少ない.バセドウ病に伴う症状精神病では精神症状が遷延する可能性があり,精神科専門医との綿密な連携が重要である.