著者
高井 利恵子 宮島 真治 大村 亜紀奈 森澤 利之 岡野 明浩 木田 肇 沖永 聡 久須美 房子 大花 正也 藤田 久美
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.112, no.9, pp.1689-1695, 2015-09-05 (Released:2015-09-05)
参考文献数
12

既往にStage Iの腎細胞癌摘出術を受けた男性が,倦怠感と肝胆道系酵素上昇を認め受診した.腹部の超音波検査やCT上,さらに肝生検においても異常はなかった.しかし,FDG-PET検査で骨に集積を認めた.骨生検の病理組織像は,以前摘出した腎細胞癌と類似していた.各種検査で他臓器には原発巣を指摘できず,腎細胞癌の骨転移と診断した.肝機能異常は,腎細胞癌に随伴するStauffer症候群であると考えた.
著者
田中 寛大 松尾 理代 久須美 房子 月田 和人 末長 敏彦
出版者
公益財団法人 天理よろづ相談所 医学研究所
雑誌
天理医学紀要 (ISSN:13441817)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.88-96, 2017-12-25 (Released:2017-12-25)
参考文献数
29
被引用文献数
1

背景: 筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosis; ALS)患者の呼吸困難緩和に対して非侵襲的陽圧換気や 気管切開下陽圧換気が有効であるが,モルヒネが必要になることもある.ALSの苦痛緩和に対して以前からモルヒネが推奨されているが,客観的データの報告は乏しい.本研究の目的はALS患者の呼吸困難緩和におけるモルヒネの有用性を検討することである.方法: 呼吸困難緩和のためにモルヒネを導入したALS患者連続10名を後方視的に調査した.モルヒネの導入と 使用にあたっては,神経内科医師・看護師と,多専門職種から成る疼痛等緩和ケア対策チームが協働して対応し, 十分なインフォームドコンセントを行なった.呼吸困難緩和は,ALS Functional Rating Scale-Revised の呼吸困難サブスケールの上昇が1ポイント以上と定義した.モルヒネの有害事象を調査した.結果: 年齢中央値74.5歳(54–79歳),罹病期間中央値647日(113–1308日),Palliative Performance Scale 中央値40(10–50),体重中央値49.0 kg(35.0–55.4 kg)であった.全例で導入時製剤は塩酸モルヒネであり,内服での用量中央値は10 mg/日(6–20 mg/日),1 回量中央値は2.5 mg(2–5 mg)であった.持続皮下注射での初日用量中央値は4.8 mg/日(2.4–12 mg/日)であった.呼吸困難緩和は9名(90%)で得られた.1日最大用量中央値は内服で21.5 mg(8–35 mg),持続皮下注射で4.75 mg(2.4–24 mg)であった.有害事象としての呼吸抑制,嘔気,傾眠はなかった.便秘を全例で認めたが薬物治療で対応可能であった.せん妄を3名で認めた.結論: モルヒネはALSの呼吸困難緩和に有用と考えられるが,多専門職種での対応と十分なインフォームドコン セントが重要である.