著者
酒井 悠太 斉藤 由理恵 乘越 亮 今西 英雄
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.57-63, 2022 (Released:2022-03-31)
参考文献数
10

オリエンタル系ユリ ‘カサブランカ’ の国内産球根を用い,予冷温度と期間を変えてそれに伴うシュートの成長,茎先端部汁液のBrixと糖含有量の変化を調べた後に,球根を–2.0°Cの氷温に移して貯蔵した.それらの球根を7~10か月後に取り出して植え付け,開花調査を行い,長期氷温貯蔵後の障害発生と予冷温度・期間との関係を明らかにしようとした.1°Cの予冷期間を0~20週と変えた場合,予冷期間が12週以上になると,氷温貯蔵後の抑制栽培において開花率の低下と葉の障害発生がみられ,それと茎先端部汁液のスクロース含有量の低下とが関連すること,Brixの変動はスクロースの変動とほぼ一致することがわかった.次に1°C, 6°C, 8°Cおよび12°Cで8週間予冷した後,1°Cに移して10週間貯蔵を続け予冷温度の影響をみたところ,1°Cと6°Cの予冷はBrixと糖の含有量について同じような変動を示し,栽培試験でも葉の障害発生あるいは開花率の低下が認められ,同じように影響することが示された.また1°Cで18週間予冷した後に氷温貯蔵に移した場合,氷温貯蔵期間が8週間長くなると全く開花がみられなくなった.以上の結果,6°C以下の温度で長期間予冷することが,長期氷温貯蔵後の栽培において開花率の低下や葉の障害発生をもたらすことが明らかになった.
著者
山田 邦夫 乘越 亮 鈴木 克己 西島 隆明 今西 英雄 市村 一雄
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
雑誌
Journal of the Japanese Society for Horticultural Science (ISSN:18823351)
巻号頁・発行日
vol.78, no.3, pp.356-362, 2009 (Released:2009-07-28)
参考文献数
38
被引用文献数
26 38

開花は園芸学的に重要な現象であるにもかかわらず,その形態学的研究に関する報告は限定されている.バラ花弁の成長発達において,いつ細胞分裂が停止し,また細胞の形態がどのように変化するのかなどは明らかとはなっていない.本研究では,バラ花弁の発達にともなう細胞形態の変化を詳細に明らかにすることを目的とした.バラ(Rosa hybrida L. ‘Sonia’)花弁を 6 つの開花ステージごとに採取した.細胞の形態の変化は,花弁横断切片を光学顕微鏡,透過型電子顕微鏡および走査型電子顕微鏡を用いて観察し,表皮細胞数はノマルスキー微分干渉顕微鏡を用いて測定した.表皮細胞の数は開花にともない増加したが,背軸側の表皮細胞数の増加速度は向軸側に比べより早い時期から緩やかとなった.表皮細胞の面積は,開花後期のステージで,細胞数の増加と比較して著しく急激に増大していた.これは,開花後期のステージでは花弁成長は主に細胞肥大によるものであることを示唆している.開花にともない,花弁における海綿状組織の細胞は独特の肥大成長によって多くの空隙を作りだしていた.また花弁頂部側の表皮細胞では水平方向への肥大成長が著しく,特に向軸側の表皮細胞では液胞の巨大化がともなう細胞肥大が観察された.細胞肥大のパターンが花弁内の組織によって異なっていることが,バラ花弁の開花に伴う反転に寄与していると思われる.