著者
市村 一雄 川端 善彦 岸本 真幸 後藤 理恵 山田 邦夫
出版者
農業技術研究機構花き研究所
雑誌
花き研究所研究報告 (ISSN:13472917)
巻号頁・発行日
no.2, pp.9-20, 2002-09

バラ切り花の開花と花持ちの品種間差を25品種を用いて調べた。開花速度には品種間差が認められ,完全に開花しない品種も存在した。花持ちにも著しい品種間差が認められ,最も長い品種はカリブラの14.5日であり,最も短い品種はブライダルピンクの3.8日だった。国内で生産されている主要10品種(カリブラ,コンフィティ,ジェルファルレイ、ソニア,ティネケ,デリーラ,ノブレス,パレオ90,ブライダルピンク,ローテローゼ)を用いて,花持ちに関与する要因について解析した。花持ち日数と花弁の厚さあるいは蒸散速度との間に有意な相関関係は認められなかった。糖の不足と導管閉塞が花持ちが短い原因になってるか調べるために,切り花を20g・liter-1スクロース,200mg・liter-1,8-ヒドロキシキノリン硫酸塩(HQS)および両者を組み合わせた連続処理を行った。スクロース単独,HQS単独および両者を組み合わせた処理はそれぞれ,2,2 および4品種の花持ちを有意に延長した。一方,花持ち日数が8日以上の品種とローテローゼでは,花持ちを延長することができなかった。これらの結果は,いくつかの品種において,花持ちの短い原因が導管閉塞または糖の不足,あるいはその両者に因っていることを示唆している。
著者
市村 一雄 川端 善彦 岸本 真幸 後藤 理恵 山田 邦夫
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.72, no.4, pp.292-298, 2003-07-15
被引用文献数
10 37

道管閉塞と糖質の不足がどの程度バラ切り花の花持ちが短い要因となっているか検討するため,'ソニア'切り花を200mg・liter^<-1>8-ヒドロキシキノリン硫酸塩(HQS),20g・liter^<-1>'スクロースおよびHQSとスクロースを組合わせた溶液で処理した.切り花は23℃,相対湿度70%,12時間日長,光強度10μmol・m^<-2>・s^<-1>の条件下で保持した.どの薬剤も花持ちを延長させたか,スクロース単独処理の方がHQS処理よりも花待ち延長効果が高かった.スクロース処理はHQS処理よりも花弁の展開を促進し,切り花の新鮮重の低下とブルーイングの発生を抑制した.茎の水通導性は,スクロース処理により収穫後2日目以降急激に低下した.それに対して,HQSおよびスクロースとHQSを組み合わせた処理では収穫直後とほぼ同じ値で推移した.茎の細菌数はどの区においても次第に増加した.スクロース単独処理は細菌数の増加を促進したが,HQSおよびスクロースとHQSを組み合わせた処理は細菌数の増加を抑制した.花弁中のグルコース,フルクトースおよびスクロース濃度はスクロースおよびスクロースとHQSを組み合わせた処理により,HQS処理よりもはるかに高く維持された.以上の結果より,本実験条件下においては可溶性糖質の供給不足のほうが道管閉塞よりもバラ'ソニア'切り花の品質を低下させる重大な原因であることが示唆された.
著者
山田 邦夫
出版者
中部大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

昨年度から引き続きイチゴにおける花芽分化時に特異的に発現する遺伝子のクローニングを進め、シロイヌナズナを始めとする各植物のFT塩基配列と類似性の高い塩基配列が得られ,これをFaFTと名付けた.またバラのTFL1塩基配列と類似性の高い塩基配列が得られ,これをFaTEL1と名付けた.イチゴを短日夜冷処理区(花芽誘導区)とコントロール区(花芽非誘導区)で栽培し花芽分化の様子を顕微鏡下で確認したところ,短日夜冷処理区では処理後35日に花芽の分化が見られ、コントロール区では35日後では花芽分化は確認されなかった.葉において,短日夜冷処理区では全てのステージでFaFTの発現が確認出来なかったのに対し,コントロール区では全てのステージでFaFTの発現が確認された.また,明条件になって1時間から8時間目まで1時間毎に発現を解析したところ,コントロール区ではどの時間も発現が確認された.さらに短日夜冷処理区では2および8時間目においてFaFTの発現は確認されなかった.FaTFL1は葉・葉柄・クラウンにおいて特に目立った変化は見られなかった.一方クラウンにおけるFaFTは、花芽分化が確認できた短日夜冷処理区の35日目で明らかな発現上昇が見られた。これは、短日夜冷条件下では、クラウンにおいてFaFTの発現が上昇し、花芽分化を引き起こしていることを示唆する結果であった。つまりこのFaFTは花芽分化の指標となりうることが明らかとなったが、発現部位がクラウンであったため、今後は葉において指標となる遺伝子候補を探索する必要がある。