著者
九鬼 一郎 川脇 壽 岡崎 伸 井上 岳司 温井 めぐみ 富和 清隆 天羽 清子 外川 正生 塩見 正司
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.5-12, 2012 (Released:2014-12-25)
参考文献数
44

123I iomazenil SPECTは中枢性ベンゾジアゼピン受容体をターゲットとし, 抑制性ニューロンの分布や機能を可視化する脳核医学検査である. 外科的治療が考慮される部分てんかんの焦点同定に有効とされ, 発作間欠期の検査であるために幅広い施設で実施可能である. 限局性皮質形成異常や海馬硬化症を中心に有用性は確立されており, 結節性硬化症や神経細胞移動障害においても, 特徴的な所見を認める. MRIで画像異常がない症例においても異常検出が期待できる. 中枢性ベンゾジアゼピン受容体は乳幼児期にダイナミックな発達的変化を認め, ベンゾジアゼピン系薬物により影響を受け, これらを踏まえたSPECT読影が必要となる. 今後は, てんかん以外での幅広い分野での応用が期待され, 抑制性シナプス伝達を評価した上での診療が可能になるであろう.
著者
堀野 朝子 塩見 正司 井上 岳司 温井 めぐみ 九鬼 一郎 岡崎 伸 川脇 壽 天羽 清子 外川 正生
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.46, no.4, pp.275-280, 2014 (Released:2014-12-25)
参考文献数
15

【目的】小児の抗N-methyl-D-aspartic acid receptor脳炎 (以下抗NMDA受容体脳炎) 6例の臨床像と予後を検討する. 【方法】本脳炎の特徴的な臨床経過を有した症例を後方視的に検討した. 【結果】該当症例は男2例女4例, 年齢は13~16歳, 抗NMDA受容体抗体陰性例が1例含まれた. 女子全例で卵巣腫瘍を認め, 急性期以後の検出が3例, 増大例が1例存在した. 側頭葉病変を認めた1例で高次脳機能障害とてんかんが, 小脳病変を認めた1例で軽度知的障害の後遺症がみられた. 【結論】頭部MRIで異常を認めた2例は後遺症を有した. 腹部MRIによる卵巣腫瘍検索は, 脳炎治癒後最低4年以上は必要である.
著者
温井 めぐみ 九鬼 一郎 木村 志保子 服部 妙香 井上 岳司 岡崎 伸 川脇 壽 富和 清隆
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.5-9, 2011-01-01
参考文献数
14
被引用文献数
1

&emsp;Septo-optic-dysplasia (SOD) は視神経低形成, 視床下部性の下垂体機能低下症, 中枢神経系の正中構造異常を3徴とし, 2徴以上を満たす例を本症とする. 今回我々はSOD患児10例について画像的検討を行った. <br>&emsp;両側に視神経低形成を認めたのは6例で, 中枢神経系の正中部構造異常を認めた. 片側に認めたのは4例で, 同側または両側に皮質形成異常を認めた. これはSODの成因として血管破綻説を支持する所見と考えた. <br>&emsp;皮質形成異常を認めた4例中3例に<sup>99m</sup>Tc HM-PAO SPECT, <sup>123</sup>I iomazenil SPECTを実施し, 正常皮質と同等の集積を認めた. てんかん原性となりうる皮質形成異常では発作間欠期にはどちらも低集積となることが多く, SODに合併する皮質形成異常でてんかん発症率が低いこととの関連が推測された.
著者
猪奥 徹也 井上 岳司 九鬼 一郎 今井 啓輔 山本 敦史 長 正訓
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.62, no.2, pp.123-129, 2022 (Released:2022-02-19)
参考文献数
30
被引用文献数
1

16歳男性.発熱,群発型けいれん重積で救急搬送,febrile infection-related epilepsy syndrome(FIRES)と診断した.発作と多発する合併症の管理に苦慮した.超難治てんかん重積状態(super-refractory status epilepticus,以下SRSEと略記)に対し,他の抗けいれん薬とともにケタミン持続静注,デキサメタゾン髄腔内投与を追加した.第170病日に人工呼吸器から離脱,月単位の焦点運動発作と中等度の運動障害を残したが自宅生活が可能となった.SRSEが遷延するFIRESにおいて,より積極的な治療の追加も選択肢となりうる.
著者
温井 めぐみ 九鬼 一郎 木村 志保子 服部 妙香 井上 岳司 岡崎 伸 川脇 壽 富和 清隆
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.5-9, 2011 (Released:2014-12-25)
参考文献数
14

Septo-optic-dysplasia (SOD) は視神経低形成, 視床下部性の下垂体機能低下症, 中枢神経系の正中構造異常を3徴とし, 2徴以上を満たす例を本症とする. 今回我々はSOD患児10例について画像的検討を行った.  両側に視神経低形成を認めたのは6例で, 中枢神経系の正中部構造異常を認めた. 片側に認めたのは4例で, 同側または両側に皮質形成異常を認めた. これはSODの成因として血管破綻説を支持する所見と考えた.  皮質形成異常を認めた4例中3例に99mTc HM-PAO SPECT, 123I iomazenil SPECTを実施し, 正常皮質と同等の集積を認めた. てんかん原性となりうる皮質形成異常では発作間欠期にはどちらも低集積となることが多く, SODに合併する皮質形成異常でてんかん発症率が低いこととの関連が推測された.
著者
堀野 朝子 塩見 正司 井上 岳司 温井 めぐみ 九鬼 一郎 岡崎 伸 川脇 壽 天羽 清子 外川 正生
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.46, no.4, pp.275-280, 2014

&emsp;【目的】小児の抗<i>N</i>-methyl-D-aspartic acid receptor脳炎 (以下抗NMDA受容体脳炎) 6例の臨床像と予後を検討する. 【方法】本脳炎の特徴的な臨床経過を有した症例を後方視的に検討した. 【結果】該当症例は男2例女4例, 年齢は13~16歳, 抗NMDA受容体抗体陰性例が1例含まれた. 女子全例で卵巣腫瘍を認め, 急性期以後の検出が3例, 増大例が1例存在した. 側頭葉病変を認めた1例で高次脳機能障害とてんかんが, 小脳病変を認めた1例で軽度知的障害の後遺症がみられた. 【結論】頭部MRIで異常を認めた2例は後遺症を有した. 腹部MRIによる卵巣腫瘍検索は, 脳炎治癒後最低4年以上は必要である.
著者
塩見 正司 石川 順一 外川 正生 岡崎 伸 九鬼 一郎 木村 志保子 川脇 寿
出版者
The Japanese Society of Child Neurology
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.122-127, 2008-03-01
被引用文献数
4

当院に入院した, てんかん, 脳性麻痺などを有さず, 発熱時けいれん重積で発症し予後不良であった症例を検討した結果,「けいれん重積型急性脳症acute encephalopathy with febrile convulsive status epilepticus; AEFCSE」という名称を提唱した.その特徴としては,(1) 脳CTでは4~5日以後に両側前頭葉, 一側側頭葉など脳葉単位の広がりをもつ低吸収域が生じ (lobar edema; LE), 同部白質は同時期のMRIの拡散強調画像 (DWI) で, 樹枝状の高信号を呈する (bdght tree appearance; BTA),(2) FCSE後意識回復する例では, 数日後に短時間のけいれん (late seizure; LS) を反復する,(3) ASTが100前後の軽度上昇する他は髄液・血液検査の異常は少ない,(4) 知的障害優位の後遺症を生じる,(5) 年齢は全例5歳未満, 感染症はHHV6, インフルエンザが多く, 2歳以上ではtheophylline (THEO) 服用例が多い, THEO服用例は2005年以後はない, などであった.AEFCSE後のてんかんでは反射てんかんがみられることがある点やAEFCSEの前頭葉病変では運動性失語が多い点など, 後遺症の検討も重要である.