著者
中嶋 靖潤 田中 あけみ 川脇 寿 服部 英司 松岡 収 村田 良輔 一色 玄 井上 佑一
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.20, no.6, pp.468-473, 1988-11-01 (Released:2011-08-10)
参考文献数
12

ムコ多糖症 (MPS IS2例, IIA1例, IIIB2例, VI1例) 6症例を対象とし, 頭部MRIを施行し, その有用性を検討した.MPS II A, Viでは大脳白質内に大小散在性のT1, T2延長像が認められ, MPSに特徴的な水溶性の酸性ムコ多糖を含有する血管周囲の小窩や小嚢胞性病変をあらわす病理変化に対応すると考えられた.またMPS II A, III Bでは大脳白質は全体にその特有の信号強度を示さず, 髄鞘の障害が考えられ, この病変と精神発達遅滞との関連が示唆された.一方MPSISでは脳内に異常所見は検出されなかった.MRIはMPSに特徴的な病理変化に対応すると思われる所見を得ることができMPSの病型の鑑別診断に有用である.
著者
塩見 正司 石川 順一 外川 正生 岡崎 伸 九鬼 一郎 木村 志保子 川脇 寿
出版者
The Japanese Society of Child Neurology
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.122-127, 2008-03-01
被引用文献数
4

当院に入院した, てんかん, 脳性麻痺などを有さず, 発熱時けいれん重積で発症し予後不良であった症例を検討した結果,「けいれん重積型急性脳症acute encephalopathy with febrile convulsive status epilepticus; AEFCSE」という名称を提唱した.その特徴としては,(1) 脳CTでは4~5日以後に両側前頭葉, 一側側頭葉など脳葉単位の広がりをもつ低吸収域が生じ (lobar edema; LE), 同部白質は同時期のMRIの拡散強調画像 (DWI) で, 樹枝状の高信号を呈する (bdght tree appearance; BTA),(2) FCSE後意識回復する例では, 数日後に短時間のけいれん (late seizure; LS) を反復する,(3) ASTが100前後の軽度上昇する他は髄液・血液検査の異常は少ない,(4) 知的障害優位の後遺症を生じる,(5) 年齢は全例5歳未満, 感染症はHHV6, インフルエンザが多く, 2歳以上ではtheophylline (THEO) 服用例が多い, THEO服用例は2005年以後はない, などであった.AEFCSE後のてんかんでは反射てんかんがみられることがある点やAEFCSEの前頭葉病変では運動性失語が多い点など, 後遺症の検討も重要である.
著者
池田 浩子 川脇 寿 富和 清隆
出版者
一般社団法人 日本てんかん学会
雑誌
てんかん研究 (ISSN:09120890)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.185-191, 2003 (Released:2003-09-04)
参考文献数
23
被引用文献数
1 2

ロフラゼプ酸エチル(メイラックス®)が脳波異常と症状の一部に対して有用であったLandau-Kleffner症候群(以下LKS)の9歳、男児例を経験した。患者は3歳2カ月より進行性の発語量低下を示し、脳波で多焦点性棘徐波に加え睡眠時に全般性の棘徐波複合がみられ、検査にて言語性聴覚失認を認めLKSと診断された。ステロイドパルス療法を含め、各種抗てんかん薬治療が無効であったが、ロフラゼプ酸エチルにより、流涎減少、口唇と舌の動きの改善、著明な脳波の改善が得られた。ロフラゼプ酸エチルは、近年難治性小児てんかんに使用されつつあるが詳細な報告例は少ない。我々の症例は副作用、耐性もなく開始後2年経過しており、LKSに対して他の治療で効果がみられないときにはロフラゼプ酸エチルを試みる価値があると考えられた。しかし、言語についての改善がみられておらず、長期に脳波異常が持続した例では回復が困難になる可能性が高いようで、早期の脳波改善策が重要と考えられた。