著者
中瀬 裕之 田村 健太郎 玉置 亮 竹島 靖浩 乾 登史孝 三宅 仁 堀内 薫 榊 寿右
出版者
日本静脈学会
雑誌
静脈学 (ISSN:09157395)
巻号頁・発行日
vol.18, no.3, pp.157-161, 2007 (Released:2022-07-09)
参考文献数
20

当科における術後脳静脈梗塞の症例から,術後脳静脈梗塞の臨床的特徴を検討し,合併症(術後静脈梗塞)を回避するために注意すべきことについて述べる.脳外科手術中の脳静脈損傷により術後静脈梗塞を起こした自験例8症例(全手術中の0.3%),男性3例,女性5例(平均58.1歳)を対象とした.二次性静脈血栓の進展により緩徐に症状が発現してくる群(n=5)と急激に脳静脈灌流障害を起こしてくる群(n=3)の2群に分類できた.症状の発現が旱いものほど重篤な症状がみられた.外科的療法を要したものが2例,保存的に対処できたものが6例である.予後は良好が6例,軽度障害を残したものが2例であった.術後脳静脈梗塞を少なくするためには,(1)術前に静脈解剖を考慮し,重要な静脈を避けた手術アプローチの選択,(2)静脈を損傷しない手術法の工夫, (3)脳静脈損傷時の対処や術後管理など,できるかぎり静脈を温存し合併症を早期に予測し予防する努力が必要である.