著者
森﨑 雄大 輪島 大介 明田 秀太 米澤 泰司 中川 一郎 中瀬 裕之
出版者
日本脳循環代謝学会
雑誌
脳循環代謝(日本脳循環代謝学会機関誌) (ISSN:09159401)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.33-37, 2015 (Released:2015-08-07)
参考文献数
6

要旨 【はじめに】脳静脈血栓症は脳静脈の閉塞に伴い脳出血や静脈性脳梗塞を発症するが,急性期診断を行い治療経過を報告したものは少ない.今回,我々は連続2 症例の急性期症例を経験し考察を加えて報告する.【症例】1:79 歳女性.突然の意識消失で受診.脳血管撮影検査で左S 状静脈洞とvein of Labbe 閉塞を認め抗凝固療法を行い症状改善を認めた.2:48 歳男性.突然の左上肢麻痺が出現し受診.脳血管撮影にて上矢状静脈洞閉塞を認め抗凝固療法を行い症状改善を認めた.【考察】脳静脈血栓症の基礎研究では梗塞病変周囲penumbra 類似病変の救済の可能性があり,急性期での診断と治療が重要である.T2*での閉塞静脈洞の低信号所見が急性期診断に有用であり,急性期に抗凝固療法を行った.【結語】脳静脈洞血栓症においては急性期早期診断と治療を行うことが重要と考えられ,T2*画像での低信号所見は有用と考えられた.
著者
竹島 靖浩 中瀬 裕之
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.1171-1182, 2021-11-10

Point・頚椎変性疾患は複数の病態が知られているが,1人の患者に併存していることも多い.・頚椎変性疾患は放射線画像で指摘されても実際は無症候性である病変も多く,注意を要する.・頚椎変性疾患の診断・治療において重要なのは,病名診断ではなく障害を引き起こしている現象を同定することである.・そのためには,神経症状の種類や範囲,神経圧迫の機序ならびに不安定性の有無などに着目する姿勢が重要である.

2 0 0 0 Editorial

著者
竹島 靖浩 中瀬 裕之
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.1113, 2021-11-10

神経系は人体の機能に直結する領域であり,脳・脊髄・末梢神経を個別に扱うのではなく統合的に理解することが大切です.本邦の脳神経外科では,脳疾患に加えて脊髄脊椎疾患や末梢神経疾患の外科治療も担っていますが,各施設の事情もあり,脳疾患治療に偏る傾向が強いです.研修医時代に脊髄脊椎・末梢神経疾患にも多くかかわることがこの統合的理解に大切ですが,残念ながらすべての脳神経外科医が理想的な環境で研修できているわけではありません. しかし,日常の脳神経外科診療の現場には,脳疾患の患者に加えて脊髄脊椎・末梢神経疾患の患者が訪れます.苦手意識が大きいと「『頭』の中は問題ないですよ」と説明して,本疾患群を見落としてしまうことになりかねません.この「苦手意識」の原因について自身の研修医時代に思いを巡らせると,日常的に慣れ親しんだ脳疾患とは異なる独特の診断アプローチが必要なこと,同一疾患でさえもバリエーションが多いこと,個々の患者においても治療選択肢が複数存在することなどが挙げられました.他方,本疾患群の診断・治療に慣れ親しむようになると,これらの苦手意識の原因こそが醍醐味であり,面白さなのだと気づきました.自身のスキルで適切に診断・治療することで,目にみえて神経機能の改善が得られるため,とても大きなやりがいを感じている専門医も多いと思います.
著者
榊 寿右 森本 哲也 星田 徹 中瀬 裕之 米澤 泰司
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.6, no.11, pp.777-785, 1997-11-20 (Released:2017-06-02)
参考文献数
21

傍矢状洞髄膜腫は,頭蓋内に生じる髄嘆腫のうちでも比較的頻度の高いものであり,遭遇する機会も多い.したがって,その手術に関しては多くの成書に記載されているところであるが,その手術の問題点ともいうべき皮質静脈,ならびに上矢状静脈洞に対する対処,ならびにそれらが損傷された時の合併損傷について述べられたものは少ない.本文では,この腫瘍の発生部を傍矢状静脈洞部の前1/3,中1/3および後1/3に発生したものについて,症状や手術法を簡単に記述し,特に皮質静脈損傷時の合併症について症例を呈示しながら,静脈温存の重要性について述べた.皮質静脈には多くの側副血行路が存在しているので,仮に損傷されても大きな障害が発生することは比較的少ないが,この静脈内に血栓が生じ,それが広範に広がったならば重篤な合併症を呈するので,その部に浸潤した腫瘍の摘出には注意を払うことを強調する.また上矢状静脈洞については,脳血管撮影で閉塞しているようにみえても,術中に静脈洞造影をすると,なお開存しているので,安易な切除はたいへん危険である.もし,こうした静脈系がなお開存しているにもかかわらず犠牲となった時には, saphenous veinを用いた血行再建を行うべきと考える.
著者
中瀬 裕之 田村 健太郎 玉置 亮 竹島 靖浩 乾 登史孝 三宅 仁 堀内 薫 榊 寿右
出版者
日本静脈学会
雑誌
静脈学 (ISSN:09157395)
巻号頁・発行日
vol.18, no.3, pp.157-161, 2007 (Released:2022-07-09)
参考文献数
20

当科における術後脳静脈梗塞の症例から,術後脳静脈梗塞の臨床的特徴を検討し,合併症(術後静脈梗塞)を回避するために注意すべきことについて述べる.脳外科手術中の脳静脈損傷により術後静脈梗塞を起こした自験例8症例(全手術中の0.3%),男性3例,女性5例(平均58.1歳)を対象とした.二次性静脈血栓の進展により緩徐に症状が発現してくる群(n=5)と急激に脳静脈灌流障害を起こしてくる群(n=3)の2群に分類できた.症状の発現が旱いものほど重篤な症状がみられた.外科的療法を要したものが2例,保存的に対処できたものが6例である.予後は良好が6例,軽度障害を残したものが2例であった.術後脳静脈梗塞を少なくするためには,(1)術前に静脈解剖を考慮し,重要な静脈を避けた手術アプローチの選択,(2)静脈を損傷しない手術法の工夫, (3)脳静脈損傷時の対処や術後管理など,できるかぎり静脈を温存し合併症を早期に予測し予防する努力が必要である.
著者
中村 光利 山田 修一 松田 良介 杉本 正 中瀬 裕之
出版者
Kinki Brain Tumor Pathology Conference
雑誌
Neuro-Oncologyの進歩 (ISSN:18800742)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.12-18, 2010-12-01 (Released:2014-04-28)
参考文献数
25

The current practice of relying solely on microscopic examinations for histological classification of gliomas and, consequentially, determination of optimal treatment, appears to be insufficient. As a result of the increasing use of molecular markers in tumor classification, there is an emerging emphasis in the genetic profiles of distinct subtypes of glioma. These subtypes of glioma constitute distinct disease entities that evolve through different genetic pathways, and are likely to differ in prognosis and response to therapy. Status of O6-methylguaninemethyltransferase(O6-MGMT) gene is associated with the resistance to temozolomide(TMZ). We have previously found methylation or expression mosaicism of O6-MGMT in gliomas, resulting in problems on tumor sampling and respose to TMZ. An assessment of O6-MGMT methylation mosaicism in heterogeneous glioma may provide a more accurate assessment for the response to TMZ. Oligodendroglioma is recognized as a particular subtype of gliomas that shows remarkable response to chemotherapy(procarbazine + CCNU + vincristine(PCV), making their correct diagnosis important. Loss of heterozygosity(LOH) on chromosomes 1p and 19q is correlated with sensitivity to PCV chemotherapy with increased survival in anaplastic oligodendroglioma cases(WHO grade III). This article reviews biological and molecular approaches to glioma classification that have the potential to increase the efficacy of treatments for these tumors.
著者
榊 寿右 角田 茂 中瀬 裕之 多田 隆興 内海 庄三郎 岩崎 聖
出版者
一般社団法人 日本てんかん学会
雑誌
てんかん研究 (ISSN:09120890)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.11-21, 1990-04-30 (Released:2011-01-25)
参考文献数
19

外傷性てんかんは比較的良好な経過をとり, 抗けいれん剤の投与にて, コントロールされるのが通常である。しかし時に難治性てんかんへと移行し, そのコントロールに苦慮する場合がある。われわれは, 乳幼児期の外傷後にてんかん発作が生じ, 難治性となって, 現在も多種多剤の抗けいれん剤の投与にもかかわらず, 発作のコントロールが不十分である症例を対象として, そのMRIの所見につきCT所見と対比しつつ検討した。これらの症例ではMRIの施行前にCTが行われ, その所見が判明しており, そして脳波上も患側半球で広範に出現する棘波が認められている。また臨床的に片側けいれんや自動症が主たる発作内容で, 粘着気質, 易怒性などの人格変化, 知能の発育障害も認められている。MRIではCTの変化に加え, さらに広範な萎縮性変化と患側側頭葉の発育障害が存在しているのが認められた。