著者
水谷 嘉浩
出版者
日本静脈学会
雑誌
静脈学 (ISSN:09157395)
巻号頁・発行日
vol.23, no.4, pp.335-344, 2012-11-25 (Released:2012-12-04)
参考文献数
2
被引用文献数
6 3

●要 約:東日本大震災は,東北3県およびその周辺にわたり甚大な被害をもたらした.震災発生後,低体温症を予防し避難者を助ける目的に,われわれは段ボールベッドのプロトタイプを平成23年3月20日に作成した.その後段ボールベッドが避難所のエコノミークラス症候群,呼吸器疾患,廃用症候群に有効であることが判明したため,東北3県と和歌山県奈良県に約3000床を提供した.段ボールベッドは,腰をかけたときに足がしっかり地面につく高さで,組み立てに工具の必要はなく,6カ月以上の使用が可能である.高齢者のADL低下,ストレスの低減,埃の吸引減少など多くの利点を有している.イタリア北部地震を視察したが,避難所では大型テントが設置され,パイプ製簡易ベッドも被災者分配置した迅速な設営が行われていた.現在は,備蓄不要で災害発生後に迅速に届ける防災協定の締結を,自治体と進めている.また政府への働きかけにより,平成24年9月6日防災基本計画の改定で,避難所の項目に初めて簡易ベッドの導入に関する文言が記載された.ストップザ雑魚寝!今後はこの教訓を活かし,避難所のQOLを改善するため努力することが,段ボール産業従事者の務めと認識している.
著者
廣岡 茂樹 外田 洋孝 小林 夕里子 折田 博之
出版者
日本静脈学会
雑誌
静脈学 (ISSN:09157395)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.71-77, 2013-02-25 (Released:2013-02-27)
参考文献数
34

●要 約:原発性鎖骨下静脈血栓症(Paget-Schroetter症候群)は静脈性胸郭出口症候群および特発性鎖骨下静脈血栓からなり,アルゴリズムに従った治療法が普及しつつある.3例の原発性鎖骨下静脈血栓症を保存的(血栓溶解療法,抗凝固療法)に治療し,1例は良好な鎖骨下静脈の開存を得ることができ,1例は狭窄を残したものの再開通を得ることができた.1例は鎖骨下静脈に閉塞を認めたが,豊富な側副血行路の発達を認めた.3例とも症状は完全に消失し社会復帰を果たした.本邦論文報告86例の中で,治療後の開存性の記載のある42例に関し検討し,本邦の治療の現状を概観するとともに,当院の治療方針を構築したので報告する.
著者
小川 佳宏
出版者
日本静脈学会
雑誌
静脈学 (ISSN:09157395)
巻号頁・発行日
vol.24, no.4, pp.447-456, 2013 (Released:2013-11-25)
参考文献数
28
被引用文献数
3 1

要約:リンパ浮腫は,発症すると完治させることは困難である.しかし発症早期から適切な診断をうけ,患肢にあった適切な保存的治療を行い,症状を安定させることは可能である.保存的治療には,日常生活指導,患肢のスキンケア,リンパドレナージ,圧迫療法,運動療法などが含まれるが,それぞれの治療効果を検討したエビデンスレベルの高い文献は少ない.圧迫療法の効果を示す文献は多いが,不適切な圧迫方法で症状が悪化した症例もある.リンパドレナージ単独での治療効果は不十分とされるが,発症早期の上肢リンパ浮腫では,リンパドレナージ単独で改善する症例もある.スキンケアや運動療法は,効果の検討が難しいが,患肢に繰り返す炎症や肥満が,症状の悪化要因となるリンパ浮腫では,日常生活指導で炎症や体重をコントロールすることが,悪化を防ぐ可能性がある.患肢の状態は症例ごとに異なるため,どの治療内容を選択して行うかは臨床での経験が重要である.
著者
石橋 宏之 太田 敬 杉本 郁夫 竹内 典之 永田 昌久 本多 靖明
出版者
日本静脈学会
雑誌
静脈学 (ISSN:09157395)
巻号頁・発行日
vol.13, no.3, pp.217-222, 2002 (Released:2022-06-11)
参考文献数
16
被引用文献数
2

ナットクラッカー症候群(左腎静脈捕捉症候群)は,左腎静脈が上腸間膜動脈と大動脈との間で圧迫され,左腎静脈還流障害から血尿,腰痛などを呈する疾患である.症例1:24歳,男.15歳時から肉眼的血尿と左側腰痛を認めた.貧血はなく,腎機能は正常であった.上腸間膜動脈-大動脈間距離は4mm,左腎静脈-下大静脈圧較差は6.8cmH2Oであった.症例2:16歳,男.11歳時から肉眼的血尿を認めた.軽度貧血があったが,腎機能は正常であった.上腸間膜動脈-大動脈距離は6mm,左腎静脈-下大静脈圧較差は5.4cmH2Oであった.いずれも左腎静脈転位術を行った.症例1は症状が消失した.症例2は吻合部が閉塞したが,保存的治療により軽快した.左腎静脈転位術は,左腎静脈が下大静脈に流入する部位を切離し,大動脈-上腸間膜動脈間距離が広い尾側に再吻合するものである.侵襲も少なく,確実な術式であるが,2例目が閉塞したのは反省すべき点であった.
著者
松本 春信 山本 瑛介 神谷 千明 三浦 恵美 北岡 斎 山本 晃太 出口 順夫 佐藤 紀
出版者
日本静脈学会
雑誌
静脈学 (ISSN:09157395)
巻号頁・発行日
vol.23, no.3, pp.261-265, 2012-08-25 (Released:2012-08-30)
参考文献数
10
被引用文献数
1

●要 約:ベーカー嚢腫の破裂は,下肢深部静脈血栓症の鑑別のひとつで,偽性血栓性静脈炎(pseudothrombophlebitis)と称される.日常の臨床において,実際にベーカー嚢腫の破裂に遭遇する機会は稀である.今回,当科におけるベーカー嚢腫破裂症例を検討したので報告する.過去5年間に,下肢腫脹を主訴に当科を受診された症例は424例で,深部静脈血栓症163例(38.1%),リンパ浮腫26例(6.1%),ベーカー嚢腫破裂5例(1.2%),その他230例であった.ベーカー嚢腫破裂は,男性2例,女性3例,平均年齢66.4歳(51~80歳)で,発症数日前に膝関節痛を自覚したものが2例,残り3例は以前から変形性膝関節症を指摘されていた.浮腫を2例,腓腹部把握痛を2例に認め,1例で足関節部の皮下出血を認めた.診断は,全例超音波検査で行った.静脈血栓症の合併は認めなかった.治療は,全例消炎鎮痛剤投与による保存的治療により症状は改善した.下肢深部静脈血栓症とベーカー嚢腫破裂の鑑別は臨床症状のみでは困難なことが多く,注意深い問診とエコー所見が診断上重要である.
著者
杉山 悟 東 信良 孟 真 保田 知生 市来 正隆 佐久田 斉 松原 忍 八杉 巧 山田 典一 三井 信介 八巻 隆 岩田 博英 坂田 雅宏 佐戸川 弘之 菅野 範英 西部 俊哉
出版者
日本静脈学会
雑誌
静脈学 (ISSN:09157395)
巻号頁・発行日
vol.25, no.4, pp.403-409, 2014 (Released:2014-11-25)
参考文献数
6
被引用文献数
7 2

要約:全国的には今まで十分な調査が行われていていなかった弾性ストッキングの使用状況と合併症の実態について,本学会の弾性ストッキング・コンダクター養成委員会とサーベイ委員会により調査を行った.192 施設からの有効回答があり,重大な合併症として,神経障害6 施設,潰瘍形成20 施設,下腿切断1 施設(心不全合併),肺塞栓2 施設,合計で28 施設(15%)からの報告があった.弾性ストッキングの適切な使用のためには,正しい理解の広い啓蒙が必要である.患者に対し圧迫療法を適切に指導するために,日本静脈学会が資格として認定しているストッキング・コンダクターの有資格者を中心とした医療スタッフによる適切な指導と経過観察が重要である.
著者
山田 典一 松田 明正 荻原 義人 辻 明宏 太田 覚史 石倉 健 中村 真潮 伊藤 正明
出版者
日本静脈学会
雑誌
静脈学 (ISSN:09157395)
巻号頁・発行日
vol.23, no.3, pp.233-238, 2012-08-25 (Released:2012-08-30)
参考文献数
9

●要 約:弾性ストッキングは静脈血栓塞栓症の理学的予防法の一つとして汎用されており一定の予防効果が報告されている.他の予防法と比較しても,出血性合併症のリスクがなく,簡便で比較的安価であることより,使用しやすいという利点がある.わが国でも以前より静脈血栓塞栓症予防法の一つとして用いられていたが,2004年の肺血栓塞栓症/深部静脈血栓症(静脈血栓塞栓症)予防ガイドラインの公表と,さらに同時期に肺血栓塞栓症予防管理料が保険診療報酬改定で認定されたことを契機に急速にその使用頻度が増加した.しかしながら,多くの前向き大規模研究が行われている薬物的予防法と比較すると未だ十分なエビデンスがあるとは言い難い.本項では,静脈血栓塞栓症に対する一次予防法としての弾性ストッキングの現時点でのエビデンスをレビューする.
著者
廣岡 茂樹 外田 洋孝 折田 博之
出版者
日本静脈学会
雑誌
静脈学 (ISSN:09157395)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.7-11, 2012-02-25 (Released:2012-02-28)
参考文献数
9
被引用文献数
2 1

2011年3月11日午後2時46分にマグニチュード9.0の巨大地震が三陸沖で発生し,その数分後には巨大津波が東日本を襲い甚大な被害をもたらした.翌日には福島第一原子力発電所で爆発事故が起こり,多数の被災者が山形県に避難して来た.われわれは震災発生後9日,10日に避難者に対し,山形市の落合スポーツセンターの避難所において下肢静脈エコーによる急性期深部静脈血栓症のスクリーニング検査を行った.男性24名,女性99名の計123名中女性14名(11.4%)に深部静脈血栓症を発見した.血栓陽性者の平均年齢は75.4±12.8歳,陰性者は59.0±13.6歳,車中泊経験者27名中3名(11%),歩行困難者25名中9名(36%)に血栓を認めた.合わせて深部静脈血栓症予防の避難生活指導および弾性ストッキングの配布を行ったので報告する.
著者
中島 正彌 小林 昌義
出版者
日本静脈学会
雑誌
静脈学 (ISSN:09157395)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.27-31, 2016
被引用文献数
2

症例は71 歳女性.左足関節痛,両下肢違和感にて当院受診した.両大腿内側から下腿に伏在静脈瘤を認めた.下肢静脈超音波にて両側大腿- 大伏在静脈接合部に逆流を認めたため,全身麻酔にて両下肢に血管内レーザー焼灼術(endovenous laser ablation: EVLA),静脈瘤切除,硬化療法を施行した.術後1 日目病棟歩行時突然の呼吸困難,背部痛にてCT 室搬送となり,心停止により緊急挿管された.ポータブルUS にて右心系収縮不全あり,術後DVT,PTE を疑い緊急下大静脈フィルター留置し,ヘパリン,ウロキナーゼ投与するも全身動態に安定みられず同日夜永眠となった.本邦の文献を調べた限り下肢静脈瘤に対するEVLA 後に肺血栓塞栓症(pulmonary thromboembolism: PTE)を併発した死亡症例の報告はないため,この誌を借りて報告する.
著者
古川 智之 高谷 亜加里 中川 季子 坂口 生夫 西 克治
出版者
日本静脈学会
雑誌
静脈学 (ISSN:09157395)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.47-52, 2011 (Released:2022-07-30)
参考文献数
16

中心静脈カテーテルの挿入を目的とした右内頸静脈穿刺に関する報告は古くよりなされており,超音波診断装置を用いた走行や径についても数多く報告されている.今回左右の内頸静脈の血管径を剖検時30例について測定し検討した.左右の内頸静脈径については剖検で検討した結果,右側が優位であった.径の左右差から内頸静脈穿刺は右側からのアプローチが成功率は高いと思われるが,左側優位の例も10%存在した.次に,内頸静脈弁について40例検討した.逆流防止としての静脈弁は内頸静脈にも存在し,その存在率は高い.また弁尖数は個人によって異なり1~3尖,あるいは存在しないものもあったが,70.5%は2尖弁であった.内頸静脈には一般的に静脈弁が存在し,内頸静脈弁はどの程度役割を果たしているか,また中心静脈カテーテル留置の際内頸静脈弁がどの程度障害され血流動態に影響を及ぼしているかについて今後評価する必要がある.
著者
遠藤 佑介 山本 尚人 石川 諄武 露木 肇 山中 裕太 嘉山 貴文 矢田 達朗 片橋 一人 佐野 真規 犬塚 和徳 竹内 裕也 海野 直樹
出版者
日本静脈学会
雑誌
静脈学 (ISSN:09157395)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.21-27, 2022-02-17 (Released:2022-02-17)
参考文献数
18

直接作用型経口抗凝固薬(以下DOAC)が広く使用されるようになり,患者の実情に即した適応用量以外の使用も増えている.われわれも一定数で低用量のエドキサバンを選択している.2014年から2019年までに経験した静脈血栓塞栓症は528例であった.経口抗凝固薬の使用なしが105例,DOACの通常用量が249例,エドキサバン低用量が98例,ワルファリンが78例であった.低用量エドキサバン使用例についてその患者背景と出血性・血栓性の有害事象について検討した.低用量エドキサバン96症例では,中枢型40例/末梢型56例,有症状11例/無症状85例で,低用量での使用理由は出血のリスクが48例,血栓伸展予防目的が48例であった.出血リスク症例48例中3例で出血のため抗凝固を中止したが速やかに止血が得られ,再開が可能であった.低用量エドキサバンは抗凝固なし/治療用量の抗凝固療法以外の選択肢として有用であり,出血リスクが高い症例に対しても有効な治療選択肢といえる.

1 0 0 0 OA 抄録1・2日目

出版者
日本静脈学会
雑誌
静脈学 (ISSN:09157395)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.101-232, 2020-09-10 (Released:2020-09-17)
著者
中瀬 裕之 田村 健太郎 玉置 亮 竹島 靖浩 乾 登史孝 三宅 仁 堀内 薫 榊 寿右
出版者
日本静脈学会
雑誌
静脈学 (ISSN:09157395)
巻号頁・発行日
vol.18, no.3, pp.157-161, 2007 (Released:2022-07-09)
参考文献数
20

当科における術後脳静脈梗塞の症例から,術後脳静脈梗塞の臨床的特徴を検討し,合併症(術後静脈梗塞)を回避するために注意すべきことについて述べる.脳外科手術中の脳静脈損傷により術後静脈梗塞を起こした自験例8症例(全手術中の0.3%),男性3例,女性5例(平均58.1歳)を対象とした.二次性静脈血栓の進展により緩徐に症状が発現してくる群(n=5)と急激に脳静脈灌流障害を起こしてくる群(n=3)の2群に分類できた.症状の発現が旱いものほど重篤な症状がみられた.外科的療法を要したものが2例,保存的に対処できたものが6例である.予後は良好が6例,軽度障害を残したものが2例であった.術後脳静脈梗塞を少なくするためには,(1)術前に静脈解剖を考慮し,重要な静脈を避けた手術アプローチの選択,(2)静脈を損傷しない手術法の工夫, (3)脳静脈損傷時の対処や術後管理など,できるかぎり静脈を温存し合併症を早期に予測し予防する努力が必要である.
著者
斉藤 貴明 犬塚 和徳 佐野 真規 片橋 一人 矢田 達朗 嘉山 貴文 露木 肇 山中 裕太 山本 尚人 海野 直樹 竹内 裕也
出版者
日本静脈学会
雑誌
静脈学 (ISSN:09157395)
巻号頁・発行日
vol.29, no.3, pp.413-417, 2018-12-21 (Released:2018-12-21)
参考文献数
27

症例は45歳女性.糖尿病性腎症のため左上腕内シャントで透析を行っていた.透析導入から6年後にシャント静脈高血圧による左顔面および左上肢の浮腫が出現し,当科紹介となった.造影CT検査でシャント静脈高血圧の原因となる左腕頭静脈の高度狭窄を認めた.最初に左腕頭静脈の経皮経管的バルーン拡張術を行ったが,3週間後には症状が再燃したため14 mm×40 mmステント(SMART, Cordis, Dublin, Ohio, USA)留置術を施行した.以降,顔面および上肢の浮腫は軽減したが,術後1カ月で左胸水が出現した.超音波検査にてシャント血流量が1537 mL/minと高値であったため,シャント血流過多による心不全の診断で,人工血管PTFEグラフト(PROPATEN, GORE, Newark, USA)を使用しシャント静脈バンディング手術を施行した.術中超音波検査を併用しシャント血流量を491 mL/minに減量させた.術後は心不全の改善を認め,顔面および上肢の浮腫も増悪なく経過している.
著者
牛山 浅美 小島 淳夫 鎌田 順道 日野 浩司 神山 公希 高坂 佳宏 中 正剛 野村 直樹
出版者
日本静脈学会
雑誌
静脈学 (ISSN:09157395)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.127-134, 2021-08-06 (Released:2021-08-06)
参考文献数
14

【目的】抗がん剤による末梢神経障害(CIPN)に対する圧迫療法の有用性を検討した.【方法】CIPNを有する20例40肢を対象とした.弾性着衣で圧迫した30肢と圧迫しない10肢について,圧迫前,直後,1カ月後,半年後,1年後の,CIPN症状として「しびれと痛み」をフェイスペインスケール(FPS)で評価した.【結果】圧迫肢は,圧迫前のFPSスコア(平均値)3.0と比較し,圧迫直後1.7, 1カ月後1.6, 半年後1.8, 1年後1.8と全て有意に低下した(p<0.01).非圧迫肢は,FPSスコアの変化を認めなかった.FPSスコアの変化は,浮腫肢,下肢,圧迫前FPS高スコアにおいて大きい変化を認め,年齢,蜂窩織炎の既往,抗がん剤の種類,抗がん剤終了後の期間との関連は認めなかった.【結論】圧迫療法による体液(血液,リンパ液,間質液)のうっ滞軽減,微小循環の改善,周辺組織の保護・支持・固定は,CIPN発現後の症状軽減および重症化予防に有効である可能性が示唆された.
著者
戸島 雅宏 森野 良久
出版者
日本静脈学会
雑誌
静脈学 (ISSN:09157395)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.1-7, 2020-01-30 (Released:2020-01-30)
参考文献数
28
被引用文献数
1 1

国際リンパ学会分類病期IIの下肢リンパ浮腫患者36名46下肢を対象に,In Body770を用いて部位別細胞外水分量(ECW),細胞内水分量(ICW),総水分量(TBW)を測定し,下肢腫脹率,超音波皮下組織エコーフリースペース(FS)所見と対比,複合的理学療法(CDT)前後の変化を検討した.患肢ECW/TBW比0.410は健側0.391に比べ有意に高値で,下肢平均腫脹率とECW/TBWの患側/健側比に有意の相関を認めた.リンパ浮腫肢のFS分類3群間でECW/TBW比に有意差を認めた.CDT前後のECW/TBW比は,患肢で0.432から0.414へ,体幹で0.413から0.402へ有意の減少を認め,両上肢は変化を認めなかった.多周波数インピーダンス法による部位別水分量測定は,リンパ浮腫腫脹度,皮下エコー所見とよく相関し,CDT前後の水分変動を表示でき,リンパ浮腫の定量的評価法として有用と考える.
著者
相川 志都 榛沢 和彦 平松 祐司
出版者
日本静脈学会
雑誌
静脈学 (ISSN:09157395)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.49-53, 2017-03-31 (Released:2017-03-31)
参考文献数
13

周辺住民に甚大な被害をもたらした平成27年9月関東・東北豪雨による茨城県常総市鬼怒川決壊による水害ならびに,最大18万名にのぼる被災者が避難生活を余儀なくされた平成28年熊本地震においては,ともに指定避難所が発災後速やかに開設されている.平成16年新潟県中越地震の際に避難生活と震災関連死としての静脈血栓塞栓症の関係が指摘されて以降,さまざまな災害の避難所で深部静脈血栓症の検診が行われており,今回両災害の避難所でも血管エコーを用いた検診が行われた.各避難所を巡回し,希望者を集い生活スペースもしくは場所を借り,問診・血圧などの測定・血管エコー検査・弾性ストッキング配布を行った.災害大国と呼ばれる日本において避難所生活を必要とする大災害発生リスクは大変高く,減災の視点に立てば災害関連死の原因となる肺塞栓症を予防するための避難所検診は非常に意義深いと考えられた.
著者
平井 正文 岩田 博英 宮崎 慶子 小山 明男 小南 幸哉
出版者
日本静脈学会
雑誌
静脈学 (ISSN:09157395)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.31-37, 2012-02-25 (Released:2012-02-28)
参考文献数
16

弾性着衣や弾性包帯の四肢静脈疾患,リンパ浮腫への臨床応用では,圧迫圧と同様に伸び硬度も考慮するべきである.本文では,伸び硬度測定器を用いた弾性ストッキング,弾性包帯の単独使用あるいは種々の組み合わせ下における伸び硬度の測定結果を記載した.伸び硬度は,その組み合わせ方法─2枚の弾性ストッキング,弾性ストッキングの上に弾性包帯,2本の弾性包帯─によって変化するが,各組み合わせの中では,最初の圧迫圧が強く,また軽度伸縮性包帯を一番外側に用いたときに大きな伸び硬度が得られた.各組み合わせの伸び硬度を比較すると,2本の軽度伸縮性包帯を用いた組み合わせが最大の伸び硬度を示し,2枚の弾性ストッキングの重ね着が最も小さな伸び硬度であった.それゆえ,圧迫療法を組み合わせるときには,圧迫圧に加え伸び硬度も考慮し,それぞれの長所と短所を頭に入れて組み合わせ方法を選択するべきである.
著者
平井 正文
出版者
日本静脈学会
雑誌
静脈学 (ISSN:09157395)
巻号頁・発行日
vol.23, no.3, pp.239-245, 2012-08-25 (Released:2012-08-30)
参考文献数
21
被引用文献数
1 1

●要 約:上肢リンパ浮腫と下肢リンパ浮腫,一次性リンパ浮腫と二次性リンパ浮腫の臨床所見の違いおよび陰部リンパ浮腫の病態について記載し,リンパ浮腫治療においては病態の違い,重症度に基づいた治療法の選択が大切であることを強調した.また,リンパ浮腫圧迫療法における圧迫圧と伸び硬度の役割をのべ,圧迫下の運動の意義について記述した.