著者
福原 武 内藤 富夫 亀山 博子
出版者
日本平滑筋学会
雑誌
日本平滑筋学会雑誌 (ISSN:03743527)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.1-8, 1973-03-01 (Released:2010-07-21)
参考文献数
13
被引用文献数
2 3

1.カエルの喉門・食道開口附近の粘膜を機械的に刺激すると, 腹筋が急に強縮をおこし, 口中に食道と胃が裏返しになって出てくる.この際胃の運動高進は, 認められない.この口中への胃の脱出の機序は, つぎのようなものであろう.まず腹筋の強縮によって, 腹圧が突然に高まり, その結果として胃が押しあげられ, ついに食道内に嵌入するのである.このことから, カエルにおいては, 嘔吐は胃の収縮によってではなく, 全く腹筋の収縮によって起こるものと考えられる.2.0.05g/mlの濃度を有する吐酒石-Ringer液の0.5ml (トノサマガエル) あるいは5ml (ウシガエル) を胃内腔に注入すると, 食道と胃の脱出ばかりでなく, 胃の運動の高進が起こる.脳脊髄破壊カエルでは食道・胃の脱出は起こらないが, 胃の運動高進効果は認められる.したがってこの高進効果は薬物が直接胃壁に作用してひき起こされたものと考えられる.