著者
福原 武
出版者
日本平滑筋学会
雑誌
日本平滑筋学会雑誌 (ISSN:03743527)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.1-8, 1969-03-01 (Released:2010-07-21)
参考文献数
36

これまで消化管の自律神経支配については, 自律神経脱落現象腸外反射, 神経刺激効果および腸内反射効果をもとにして論じられてきたが, 各研究者の間には十分の意見の一致がみられなかった.著者は, 自身および協力者の研究結果からつぎに要約するような見解に到達した.1) 腸内反射の研究結果によると, 腸壁にはAuerbach神経叢中に亢進と抑制の両種神経細胞が存在し, 前者はコリン性であるが, 後者は非アドレナリン性であり, その伝達物質は未知である.2) 副交感神経線維には, 腸壁内に入って亢進細胞に連結するものと, 抑制細胞に連結するものとある.交感神経線維は, まず前脊稚神経節中でニューロンを交代した後, 亢進性のものは亢進細胞と連結し, 抑制性のものはアドレナリン性であって, そのまま筋に終る.3) 正常時においては, 腸-腸外反射の場合のように, 一般に副交感神経では亢進線維, 交感神経では抑制線維の興奮が優越するけれども, 腸のおかれる条件如何によっては, 壁内神経要素の興奮性に異変が起り, その結果として効果が逆転することもあり得る.4) 結局, これまでの研究成績の不一致は壁内神経要素の組織学的また生理学的複雑さと, これら要素の興奮性の不安定に帰因するものと考えられる.5) 上述の消化管の自律神経支配の特徴を考慮しながら, 消化管運動に関する薬物の作用機序究明のすすめ方に論及した.
著者
福原 武 内藤 富夫 亀山 博子
出版者
日本平滑筋学会
雑誌
日本平滑筋学会雑誌 (ISSN:03743527)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.1-8, 1973-03-01 (Released:2010-07-21)
参考文献数
13
被引用文献数
2 3

1.カエルの喉門・食道開口附近の粘膜を機械的に刺激すると, 腹筋が急に強縮をおこし, 口中に食道と胃が裏返しになって出てくる.この際胃の運動高進は, 認められない.この口中への胃の脱出の機序は, つぎのようなものであろう.まず腹筋の強縮によって, 腹圧が突然に高まり, その結果として胃が押しあげられ, ついに食道内に嵌入するのである.このことから, カエルにおいては, 嘔吐は胃の収縮によってではなく, 全く腹筋の収縮によって起こるものと考えられる.2.0.05g/mlの濃度を有する吐酒石-Ringer液の0.5ml (トノサマガエル) あるいは5ml (ウシガエル) を胃内腔に注入すると, 食道と胃の脱出ばかりでなく, 胃の運動の高進が起こる.脳脊髄破壊カエルでは食道・胃の脱出は起こらないが, 胃の運動高進効果は認められる.したがってこの高進効果は薬物が直接胃壁に作用してひき起こされたものと考えられる.
著者
福原 武 福田 博之
出版者
公益社団法人 日本ビタミン学会
雑誌
ビタミン (ISSN:0006386X)
巻号頁・発行日
vol.31, no.6, pp.494-499, 1965-06-25 (Released:2018-02-09)

Utilizing Trendelenburg's as well as Magnus' method the influence of TTFD upon the movement of the isolated small intestine of guinea pigs, rabbits, cats and dogs were studied. The results were summarized as follows : (1) At the concentration of 5 × 10^<-5> g/ml TTFD produced, on the one hand, a lowering of the tone, prolongation of the period of rhythmic contraction waves and on the other hand, a remarkable increase of the amplitude of the waves. (2) After the administration of atropine, the excitatory effect of TTFD was reversed to the inhibitory. (3) After successive administrations of atropine and hexamethonium, no action of TTFD was remarked. (4) TTFD had no effect on the small intestine isolated from cats treated with reserpine and atropine. (5) From the results described above, it may be concluded that TTFD exerts an exciting action upon both the excitatory and inhibitory neurones residing in Auerbach's plexus, whereas it exerts no action upon the intestinal muscle. It could be considered that the effects described in (1) were the results of a mutual coordination of the function of two kinds of neurones described above.