著者
二宮 茂 金田 菜美 安部 直重 佐藤 衆介
出版者
Japanese Soceity for Animal Behaviour and Management
雑誌
日本家畜管理学会誌・応用動物行動学会誌 (ISSN:18802133)
巻号頁・発行日
vol.44, no.3, pp.215-219, 2008-09-25 (Released:2017-02-06)
参考文献数
7
被引用文献数
1

ニホンジカの食害制御を目指して、本実験ではオオカミ糞のニホンジカに対する行動的嫌悪および心理ストレス誘発効果を検証した。実験1では、オオカミの糞(60g)、ネコの糞(40g)、屠殺時のウシの尿(200g)を入れたボトルと空のボトルをそれぞれ取り付けた飼槽を4つ用意し、1000gのヘイキューブを各飼槽に入れた。27頭のニホンジカを供試し、10分間、飼槽に対する摂食行動の観察を4回繰り返した。その結果、ニホンジカの各飼槽に対する平均摂食量は均等になると仮定した場合の期待値とは有意に異なる値であった(P<0.01,オオカミ糞:20g,ネコ糞:240g,ウシ尿:95g,コントロール:520g)。また、オオカミ糞入りのボトルを取り付けた飼槽に対して、ニホンジカが探査した後に飼槽から逃げる行動が多く観察された。実験2では、オオカミ糞の忌避効果が量的に依存するかどうか確かめるために、提示するオオカミ糞の量を少なくする処理を行った。最初の2試行では、オオカミ糞60g、10g、5gを入れたボトルと空のボトルを、あとの2試行では、1g、オオカミ糞60g、10gを入れていたボトルからそれぞれオオカミ糞を取り除いたもの(Empty60、Empty10)と空のボトルを提示した。その結果、ニホンジカの各飼槽に対する平均摂食量は均等になると仮定した場合の期待値とは有意に異なる値であり、少量でもニホンジカの摂食行動を一時的にでも抑制することが示唆された(P<0.01,オオカミ糞60g:0g,オオカミ糞10g:0g,オオカミ糞5g:0g,コントロール:1000g;P<0.01,オオカミ糞1g:30g,Empty60:140g,Empty10:120g,コントロール:715g)。次に、メスのニホンジカ6頭を用いて、オオカミ糞60gを入れたビーカーと水を入れたビーカーをシカの鼻に近づけた場合の生理的反応を計測した。その結果、オオカミ糞を提示した場合は水を提示した場合に比べ、心拍数と唾液中クロモグラニンの濃度が高かった(それぞれ、P=0.07,P=0.08)。このことからオオカミ糞はニホンジカの行動的嫌悪および心理ストレス誘発効果を導くことが明らかとなった。
著者
佐藤 衆介 二宮 茂 山口 高弘
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2008

終日放牧、半日放牧=フリーストール(FS)、繋留舎飼の順で、睡眠は長く、敵対行動は少なくなった。放牧では血中オキシトシン(Oxy)が高く、N/L比やコルチゾール(Cor)は低かった。放牧地での刈取草摂食に比べて立毛草摂食で、Oxyは高く、Corは低くなった。エンリッチメント処理では、立位休息が短く、睡眠、摂食、伏臥、親和行動が多く、内臓廃棄は低く、肉質評価は高かった。ブラッシング処理後にOxyは上昇した。運動場解放により、行動は多様化し、Oxyは上昇した。