- 著者
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二木 鋭雄
- 出版者
- 公益社団法人 日本薬理学会
- 雑誌
- 日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
- 巻号頁・発行日
- vol.129, no.2, pp.76-79, 2007
- 被引用文献数
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「ストレス」という言葉は,日常生活で身近によく使われている.一般にストレスという言葉はネガティブな意味が強く,生活にとって好ましくないものという響きがある.確かに,われわれの身の回りにある多種のストレスにより,からだやこころの健康が脅かされ,その結果,身体の不調,疾患へとつながっていくことが少なくない.しかし,近年の分子生物学の進展に伴い,われわれの生体には極めて精巧な防御システムが構築されており,ホメオスタシスを維持するためのシステム,仕組みができていることも分かってきた.ストレス,すなわち外からのシグナルを受けて,生体は巧みに応答する.場合によってはストレスをうまく利用して,生体を常によい状態に保つようにしている.多くのストレスが,時によってはよいシグナル,よいストレスとなることもある.言い換えると,ストレスがないこと,ストレスフリーの生活が本当にこころや身体にとっていいことなのかどうか,むしろ疑問である.もちろん,あるレベルを超えたストレスに対しては防御力,適応能力が対応できず破綻し,QOLの低下を招くと考えられる.如何にして,少々のストレスにはうまく適応できるような状態に保つようにしているかが肝要であると言えよう.<br>