著者
二瓶 さやか 増子 正
雑誌
十文字学園女子大学紀要 = Bulletin of Jumonji University (ISSN:24240591)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.167-176, 2018-03-24

超高齢社会を迎えるわが国において、介護保険制度が「地域包括ケアシステム」の実現を目指すことを目的とした法改正がなされる等、2025年の地域創成に向けて地域包括ケアシステムの推進・構築が、重要な課題となっている。本研究では、地域包括ケアシステムについて、関連する法律や地域包括ケア研究会の報告書から定義の変遷をまとめ概念整理を行い、地域包括ケアシステム推進にむけた課題を考察した。また、地域包括ケアシステムの構築の為には、現在多くの地域で取り組まれている地域福祉活動の更なる推進と活動を支える多様な担い手の確保が重要であり、共同募金は、地域福祉活動を支える重要な役割を担う一つとして示唆されていることから、共同募金の概要と実際の助成配分や使途について概観した。結果、共同募金を資源とした地域福祉活動の推進は、単に地域における課題を解決するだけでなく、地域住民に地域が抱える福祉課題の意識化や顕在化へと発展することが期待され、地域包括ケアシステム推進と共に、共同募金のあり方も転換が図られる必要があると考えられた。さらに、共同募金は、助成者が恩恵を受けるに留まらず、地域社会に対する住民の連帯や、相互扶助の意識を「主体化」させる役割も担うことも示唆された。