著者
二瓶 伊浩 仁賀 定雄
出版者
一般社団法人 日本アスレティックトレーニング学会
雑誌
日本アスレティックトレーニング学会誌 (ISSN:24326623)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.219-226, 2022-04-30 (Released:2022-06-05)
参考文献数
29

Groin pain症例(GP)においてMRI所見のsuperior cleft signまたはsecondary cleft signは復帰が長引くことに有意に関連する独立因子である.本研究はMRIを撮像した16〜40歳のGPでpelvic mobilityテスト(PM)を実施した300例(股関節関連GPは除外)を対象とし,GPの臨床所見評価においてPMの有用性を1.cleft sign(CS)の有無におけるPM陽性率 2.疼痛部位とPM陽性側のlaterality関連性 3.PM陽性が復帰までの期間に及ぼす影響の3点から検討した.CSを認めた群は認めない群よりPM陽性率が高かった(p<0.01).疼痛部位とPM陽性側のlaterality関連性は認めなかった.CSを認めたPM陽性例はCSを認めたPM陰性例,CSを認めなかったPM陽性例と陰性例の3群に対して復帰までの期間が有意に長かった(p<0.05, p<0.001, p<0.01).GPの臨床所見評価としてPMは有用であると考える.
著者
鈴木 陽介 世良田 拓也 森 大志 小笠原 一生 鈴木 薫 牧野 孝成 伊藤 彰浩 大町 聡 二瓶 伊浩 今村 省一郎 竹原 良太朗 畠中 陽介 草場 優作 仁賀 定雄 中田 研
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.44 Suppl. No.2 (第52回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.1227, 2017 (Released:2017-04-24)

【はじめに,目的】上肢の平衡反応は姿勢制御に寄与しており,ジャンプ着地時には足圧中心(以下COP)ピーク速度時間に影響することを健常人で明らかにした。しかしながら,肩関節機能障害を有する場合,上肢平衡反応を有効に利用できないことが考えられる。そこで,本研究は肩関節脱臼の既往が動的バランスに与える影響を探索することを目的とした。【方法】対象は肩関節脱臼の既往を有する患者9名(平均24.0±9.1歳)(以下,脱臼群),重篤な既往歴がない健常成人9名(平均24.6±9.6歳)(以下,健常群)であった。測定は,前方または側方へ20cmの高さから片脚ドロップジャンプ着地テストを行わせ,同側の脚で着地した時の床反力を計測した。上肢は胸の前で組ませる(以下,RES),制限なし(以下,FRE)の2条件とし,前方・側方へ右脚・左脚各6回測定した。床反力はダイナミックバランス評価システム(テクノロジーサービス社製)を用い,サンプリング周波数1kHzで計測した。動的バランス能力は,床反力データから,緩衝係数,鉛直方向の床反力ピーク(以下,Fz)およびピーク時間(以下,Tz),着地後20-200msのCOP軌跡長,前額・矢状各方向のCOPピーク速度,ピーク速度時間について検討した。統計は,前方と側方ごとに利き脚と非利き脚に分け,脱臼の既往と上肢の条件を要因とした1要因に対応がある二元配置分散分析を行い,有意水準5%とした。【結果】緩衝係数は交互作用に傾向が認められ,健常群のFRE条件では小さくなる傾向があった。Fzは利き脚・前方で条件と交互作用に傾向が認められ,健常群は脱臼群と比較してFRE条件でさらに小さくなった。Tzは非利き脚で脱臼群のみ早くなる傾向があり,側方ではFRE条件でより早くなる傾向があった。COP軌跡長は利き脚・前方で脱臼の既往に有意な交互作用が認められ,健常群ではFRE条件でCOP軌跡長が短かった(F(1,16)=16.19,P=0.001)。COPの矢状面ピーク速度には有意差が認められなかったが,ピーク速度時間は利き脚・前方のFRE条件で有意に短くなった(F(1,16)=9.86,P=0.006)。前額面ピーク速度では有意な交互作用が認められ,脱臼群のFRE条件では速度が有意に速くなった(F(1,16)=6.1,P=0.02)。【結論】肩関節機能障害が動的バランスに影響するかを探索するために,片脚ドロップジャンプ着地テスト中の床反力を計測した。FzおよびCOP軌跡長,矢状面ピーク速度時時間はFRE条件で小さくなったことから,上肢による平衡反応はこれらの要素を制御するために予測的に導入されていることが推察された。脱臼群では,特にFzやCOP軌跡長では健常群ほどの有効性がみられなかったことから,肩関節機能障害を有する場合,上肢の肢位に関わらず平衡反応を発揮できない可能性がある。本研究から,肩関節疾患患者でも動的バランスの低下から傷害の発生リスクが高まる可能性があり,バランス改善を促すアプローチの必要性が示唆される。