著者
三宅 美行 朝長 正志 東岡 俊之 山田 雄次 石田 直文 兵頭 昭夫 井上 松久 三橋 進
出版者
公益社団法人 日本化学療法学会
雑誌
CHEMOTHERAPY (ISSN:00093165)
巻号頁・発行日
vol.36, no.Supplement5, pp.128-139, 1988-10-10 (Released:2011-08-04)
参考文献数
14

新しいセファロスポリン系抗生物質であるCefodizime (THR-221) のin vivo抗菌力を調べたところ, 正常および実験的感染防御能低下マウスでの感染に対し優れた治療効果を示した。更にTHR-221のin vivoでの優れた効果を解明するために, 生体防御因子との関連について検討を行い, 以下の知見が得られた。1. THR-221は感染防御能低下マウス (X線, Adriamycin処理) においても優れた治療効果を示し, ED50値は正常マウスに近く, Cefotaxime (CTX), Cefoperazone (CPZ) よりもはるかに優れていた。2. K. pnemoniu感染治療時におけるマウス腹腔内浸出細胞 (PEC) のacid phosphatase活性は, THR-221 500mg/kg治療群において上昇し, CTX, コントロール群のそれよりも高かった。3. THR-221 1/4MIC存在下においてPECのK. pneumoniaeに対する殺菌作用は増強した。その殺菌作用はTHR-221単独に比べ40.7倍強く, CTXの7.1倍よりも優れていた。4. THR-221前処理菌はPECのNitro Blue Tetmolium (NBT) 還元能をCTX, 無処理菌のそれよりも有意に上昇させた。5. THR-221前処理菌はマウス腹腔内において食細胞に食菌されやすくなり, 感染後, 菌の再増殖は認められなかった。CTX前処理, 無処理菌は感染後6時間で再増殖し, マウスは全数死亡した。K. pneumoniaeのマウス感染力はCTX前処理, 無処理菌に比較して, THR-221前処理において著しく低下した。PECのライソゾーム酵素の上昇, PECとの殺菌増強作用, NBT還元能の上昇等これらの結果より, THR-221の優れたin viro作用は生体防御因子との協力的な殺菌作用に優れていることが一因と考えられた。