著者
竹村 文 井上 由香 五味 裕章 川人 光男 河野 憲二
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. NC, ニューロコンピューティング (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.99, no.131, pp.77-84, 1999-06-18
被引用文献数
1

"追従眼球運動"の発現に、頭頂連合野の一部であるMST野(Medial Superior Temporal Area:MST)、背外側橋核(Dorsolateral Pontine Nucleus:DLPN)、小脳腹側傍片葉(Ventral Paraflocculus:VPFL)を含む経路が関与していることが示唆されている。そこで、この3つの領域の単一ニューロンの発火パターンが時間的に感覚情報と運動情報をどのようにコードしているかについて解析し、情報処理の異なる段階にあると考えられる脳内領域間の比較を行った。その結果、VPFLのプルキンエ細胞の発火パターンは出力信号である「眼球運動」の位置、速度、加速度の線形和で表現でき、MST、DLPNのニューロン活動は入力信号である「網膜上の像のブレ」の位置、速度、加速度の線形和で表現できた。本研究から、MST野では視野の動きが検出され、その発火パターンに視野の動きの情報がコードされ、背外側橋核を通って、その視野の動きの情報が小脳腹側傍片葉のプルキンエ細胞上で収束し、眼球を動かすのに必要な運動指令へと変換されている可能性が考えられる。