著者
米田 健一 井上 雅央 一ノ瀬 浩史 高藤 晃雄
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.49, no.4, pp.245-250, 2005 (Released:2006-02-25)
参考文献数
11
被引用文献数
4 4

In mountainous regions of Japan, some people grow grapes for personal consumption. Damage to grapes caused by birds is serious in many such areas. At present, the only effective method against bird damage is to install physical barriers, such as nets, around or over vineyards. To install nets easily and safely, we designed a new grape cultivation method: the trellis height is equal to the width of a simple commercially available net (1×50 m, 12 g/m2). Using the new cultivation method, we evaluated its bird damage prevention effect and working efficiency. Results showed that: 1) net installation was easy and safe; 2) nets installed only on the lower edges of the trellis reduced bird damage effectively because brown-eared bulbuls (Hypsipetes amaurotis), a main bird that damages grapes, tended to invade the vineyard from under the trellis; 3) nets installed both on upper and lower sides of the trellis perfectly prevented bird damage. These results suggest that this is applicable as an effective method against bird damage to grapes in these areas.
著者
安川 人央 中野 智彦 黒瀬 真 信岡 尚 井上 雅央
出版者
奈良県農業総合センター
雑誌
奈良県農業総合センター研究報告 (ISSN:18821944)
巻号頁・発行日
no.41, pp.29-33, 2010-03

シカ出没圃場におけるキャベツ栽培で、農地を効率的に活用するために、柵の設置の有無が耕起や移植にかかる作業時間と定植苗数に及ぼす影響並びに、肥料制限苗の定植直後のシカ被害軽減効果を調査した。キャベツの定植苗数は柵設置圃場に比べて柵未設置圃場で多く、耕起と定植に要した作業時間は、柵設置圃場に比べて柵未設置圃場で短かった。キャベツのシカによる被害には、食害と踏害があった。また、肥料制限苗の草丈および最大葉長は、慣行苗に比べて小さく、定植直後の食害株率は、春植えと秋植えの両作型ともに、慣行苗に比べて明らかに小さかった。さらに定植直後の踏害株率は、春植えと秋植えの両作型ともに、慣行苗に比べて小さい傾向が見られた。肥料制限苗のみを定植した場合、定植直後の食害株率はいずれの定植時期でも1%未満と小さかった。しかし、シカの出没が多い場合、少ない時期に比べて踏害株率が大きかった。これらから、シカ出没圃場において、キャベツ肥料制限苗を利用することで、慣行苗に比べてシカによる食害が軽減できることから、柵の設置を定植後に行うことが可能となり、柵設置圃場に比べ、耕起や定植時の作業性が良くなるとともに圃場全体を有効に活用できると考えられる。
著者
井上 雅央
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.49-53, 1990-02-25 (Released:2009-02-12)
参考文献数
5
被引用文献数
8 4

ハダニの歩行移動を防止することを目的として,いくつかのビニル障壁を作成し,壁面でのハダニの行動を観察した結果,ハダニはビニル壁面の上端を45°および30°の角度で襟状に折り返したいわゆる“ダニがえし”を乗り越えることができなかった。ダニがえしを装備した雨除け施設の周辺に,ハダニが多数寄生したホウレンソウ残渣を投棄したところ,施設内へのハダニの侵入が顕著に阻止された。また,この装置を逆に応用して,ダニがえしを装備した簡易残渣処理装置を作成して装置内へイチゴ残渣を投棄した場合,残渣からの離脱が阻止され,周辺雑草や隣接圃場へのハダニの移動が著しく抑制された。ダニがえしを装備しない雨除け施設へのハダニの侵入や,残渣を野積み投棄した場合の周辺雑草および隣接圃場へのハダニの移動は残渣投棄直後から数日以内に観察された。以上の結果から,ダニがえしは除草,下葉摘み,整枝,収穫終了時の圃場整備など日常の農作業で生じた作物残渣からのハダニの移動や施設への侵入を防止するための障壁として利用価値が高いと考える。