著者
門 有紀 平岡 美紀 植木 勧嗣 濱崎 貞弘
出版者
奈良県農業総合センター
雑誌
奈良県農業総合センター研究報告 (ISSN:18821944)
巻号頁・発行日
no.40, pp.19-28, 2009-03

奈良県では伝統ある郷土食として「柿の葉寿司」があり、カキ生産者によって「柿の葉寿司」用のカキ葉が生産されている。奈良県の五條・吉野地域のカキ生産者の23%がカキ葉を「柿の葉寿司」用に採取、販売している。年間に30万枚を出荷する経営体もある。経営内での摘み取り者は、60歳以上の男女を含めている経営が多く、また、女性のみが摘み取りに従事している経営もあり、カキ葉の摘み取り作業は、高齢者、女性にも従事しやすい作業と考えられた。生産の課題として以下の4点が抽出された。(1)カキ葉生産への地域人材の活用。(2)関連業者に対する地産地消の連携の要請。(3)カキ葉の安定大量生産技術の確立。(4)有利な販売先の開拓・確保。
著者
安川 人央 中野 智彦 黒瀬 真 信岡 尚 井上 雅央
出版者
奈良県農業総合センター
雑誌
奈良県農業総合センター研究報告 (ISSN:18821944)
巻号頁・発行日
no.41, pp.29-33, 2010-03

シカ出没圃場におけるキャベツ栽培で、農地を効率的に活用するために、柵の設置の有無が耕起や移植にかかる作業時間と定植苗数に及ぼす影響並びに、肥料制限苗の定植直後のシカ被害軽減効果を調査した。キャベツの定植苗数は柵設置圃場に比べて柵未設置圃場で多く、耕起と定植に要した作業時間は、柵設置圃場に比べて柵未設置圃場で短かった。キャベツのシカによる被害には、食害と踏害があった。また、肥料制限苗の草丈および最大葉長は、慣行苗に比べて小さく、定植直後の食害株率は、春植えと秋植えの両作型ともに、慣行苗に比べて明らかに小さかった。さらに定植直後の踏害株率は、春植えと秋植えの両作型ともに、慣行苗に比べて小さい傾向が見られた。肥料制限苗のみを定植した場合、定植直後の食害株率はいずれの定植時期でも1%未満と小さかった。しかし、シカの出没が多い場合、少ない時期に比べて踏害株率が大きかった。これらから、シカ出没圃場において、キャベツ肥料制限苗を利用することで、慣行苗に比べてシカによる食害が軽減できることから、柵の設置を定植後に行うことが可能となり、柵設置圃場に比べ、耕起や定植時の作業性が良くなるとともに圃場全体を有効に活用できると考えられる。
著者
西本 登志 信岡 尚 前川 寛之 後藤 公美 東井 君枝 泰松 恒男 木矢 博之 吉村 あみ 平山 喜彦 峯岸 正好 佐野 太郎 米田 祥二
出版者
奈良県農業総合センター
雑誌
奈良県農業総合センター研究報告 (ISSN:18821944)
巻号頁・発行日
no.41, pp.1-10, 2010-03

'古都華'は、2002年に奈良県農業総合センター育成系統の'7-3-1'に'紅ほっぺ'を交配し得られた実生個体から選抜されたイチゴの新品種であり、2009年に品種登録出願し、同年に出願公表された。特性は以下の通りである。1.花芽分化期は、'アスカルビー'より僅かに早い。促成栽培作型における開花期は'アスカルビー'より早く、'章姫'より遅い。2.促成栽培作型における収量は、'アスカルビー'と比較して80〜95%、'章姫'と比較して65〜80%と少なく、15g以上の正常果の収穫果重は'アスカルビー'と比較して同等以上である。3.果実の糖度、酸度および硬度は収穫期間を通して高い。4.促成栽培作型における草高と草丈は、12月は'アスカルビー'並びに'章姫'と同程度であるが、厳寒期の2月には'アスカルビー'と比較して明らかに大きい。5.花房は長く、伸長促進のためのジベレリン処理は必要としない。6.二酸化炭素施用を行うことで20%近い収量増が見込まれる。7.おがくずを培地とする雨除け下のベンチ無仮植育苗では、ランナーと子苗の発生がやや少ない。8.ランナー発生から判断される休眠覚醒に要する5℃以下低温遭遇時間は'女峰'と同程度である。9.萎黄病、うどんこ病および炭疽病のいずれに対しても抵抗性を有しない。
著者
門 有紀 平岡 美紀 植木 勧嗣 濱崎 貞弘
出版者
奈良県農業総合センター
雑誌
奈良県農業総合センター研究報告 (ISSN:18821944)
巻号頁・発行日
no.40, pp.19-28, 2009-03

奈良県では伝統ある郷土食として「柿の葉寿司」があり、カキ生産者によって「柿の葉寿司」用のカキ葉が生産されている。奈良県の五條・吉野地域のカキ生産者の23%がカキ葉を「柿の葉寿司」用に採取、販売している。年間に30万枚を出荷する経営体もある。経営内での摘み取り者は、60歳以上の男女を含めている経営が多く、また、女性のみが摘み取りに従事している経営もあり、カキ葉の摘み取り作業は、高齢者、女性にも従事しやすい作業と考えられた。生産の課題として以下の4点が抽出された。(1)カキ葉生産への地域人材の活用。(2)関連業者に対する地産地消の連携の要請。(3)カキ葉の安定大量生産技術の確立。(4)有利な販売先の開拓・確保。
著者
浅尾 浩史
出版者
奈良県農業総合センター
雑誌
奈良県農業総合センター研究報告 (ISSN:18821944)
巻号頁・発行日
no.40, pp.40-43, 2009-03

当センターでは明治時代からスイカの育種が行われ、昭和初期には'大和3号'と'甘露'の交配種'新大和'が育成された。当センター内の種子貯蔵庫には、これら品種・系統や海外から導入された品種が約80種保存されている。このように、当センターはスイカの育種、栽培、保存をはじめ、県内種苗会社への技術的支援を行ってきた。ボツワナ共和国のカラハリ砂漠地帯はスイカの原産地であり、スイカをはじめウリ科植物の遺伝資源の宝庫である。現地のサン族は野生スイカをはじめとする約300種の有用野生植物を数千年にわたり利用してきたが、カラハリ砂漠は氷河期を経験しておらず、個々の野生種は未だに系統化されていない。有用野生植物の分子レベルでの品種系統化や機能性の探索は重要な課題となっている。アジア・アフリカ学術基盤形成事業「ポストゲノミクス研究によるカラハリ砂漠資源野生植物の高度利用基盤の確立」の一環として2007年2月24日から3月5日まで、ボツワナ共和国が有する遺伝子資源を調査する機会を得たので、その概要を報告する。