- 著者
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井出 草平
- 出版者
- 大阪大学
- 雑誌
- 特別研究員奨励費
- 巻号頁・発行日
- 2011
本研究目的は、日本に40万人規模で存在するとされているひきこもり現象の原因理解を行い、逸脱現象への理論的貢献をすることである。ひきこもりが社会問題化されて10年あまり経つが、ひきこもりの規定要因を研究する研究は未だに不十分である。特にひきこもりを対象とした量的研究は少なく、大学生のひきこもりを対象とした井出・水田・谷口(2011)など限られていた。本研究はでは対象を拡大し、一般人口を対象とした調査を行った。量的研究が不足している現在では、インプリケーションのある結果を引き出すことができた。調査結果の概要を記載する。ひきこもりと収入・暮らし向きといった経済状況は長期化し、親が退職するといった家庭では起こるが若年では関係は優位差がなかった。親との関係や優等生であるといった親子間の問題も見られなかった。一方で、不登校をはじめ小学校や中学校といった早い段階から孤立をすること、友人を持たないことがひきこもりにつながっていることが判明した。ひきこもりと不登校の関連はよく知られたことだが、孤立は不登校には関連が見られず、ひきこもりにのみ効果を持っていた。また、いじめ体験はひきこもりと弱いながらも関連性が見られるが、不登校とは関連がなかった。一方で、成績不振は不登校との関連が見られたが、ひきこもりとの関連が見られなかった。ひきこもり現象は家庭よりも学校における逸脱現象と関連しており、中でも不登校との関連は強いがあることが判明した。しかし、その他の逸脱項目との間では不登校とひきこもりの間には差異が見られ、学校における逸脱と雑駁に捕らえるのではなく、一つ一つの現象と関連を明らかにする必要があることが判明した。逸脱論、特に学校に関連した逸脱現象を理論化する上での基礎的な資料の収集ができた。