著者
中瀬 一 小泉 恵子 堀込 かずみ 浅川 浩樹 井出澤 剛直 飯塚 秀彦
出版者
一般社団法人 日本静脈経腸栄養学会
雑誌
日本静脈経腸栄養学会雑誌 (ISSN:21890161)
巻号頁・発行日
vol.30, no.4, pp.972-975, 2015 (Released:2015-08-20)
参考文献数
26

長期間の経空腸的栄養投与の結果銅欠乏性貧血を呈し、ココアの投与で改善を認めた1例を経験した。症例は51歳、女性。脳出血後胃ろう栄養だったが腹膜炎による胃部分切除術で経空腸的栄養管理となった4年後に銅欠乏性貧血を発症した。1日推奨量の銅を含有する栄養剤で管理されていたが吸収不足と考え、経鼻チューブを留置し銅を多く含むココアを十二指腸に投与したところ貧血は改善したが嘔吐のためチューブを抜去し退院となった。その9ヶ月後に再び銅欠乏性貧血となりその際は経空腸的にココアを追加投与し貧血の改善を認め、退院後も続行した。その後ココア投与の一時中断により3回目の銅欠乏性貧血を認め、ココア追加で改善した。消化器外科手術歴のある患者に対し経腸栄養を選択するに当たり胃ろう以外の投与経路に頼らざるを得ない場面がある。そのような際には銅欠乏性貧血をも念頭に置いた管理が必要である。
著者
輿石 直樹 井出澤 剛直 井上 亜矢子 熊田 哲 柴 修吾 渡邊 美穂 瀧川 拓人 岡崎 護 木嶋 泰興 冨永 邦彦
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.45-50, 2004-01-01
参考文献数
12
被引用文献数
17

症例は77歳の男性.体重減少を主訴に入院となった.精査にて,Vater乳頭部の未分化型腺癌との診断になり,膵頭十二指腸切除術を施行した.腫瘍は露出腫瘤型で,深達度はOddi筋までであった.主座は小型腫瘍細胞がシート状に増殖し,粘膜側に腺癌構造伴っており,免疫組織学的検索においてNSEとchromogranin Aは陽性で,desminとS-100蛋白は陰性で,腺内分泌細胞癌と診断した.腺内分泌細胞癌は腺癌から分化を伴ったものとされており,その悪性度は高く,比較的小さな病変で診断・治療されても,予後不良とされている.本症例も術後14か月で多発性肝転移のため死亡した.十二指腸乳頭部原発の腺内分泌細胞癌の本邦での報告は自験例を含め14例とまれである.本邦報告例とともに文献的考察を加え報告する.