著者
森 義之 中瀬 一
出版者
日本腹部救急医学会
雑誌
日本腹部救急医学会雑誌 (ISSN:13402242)
巻号頁・発行日
vol.24, no.3, pp.653-657, 2004-03-31 (Released:2010-09-24)
参考文献数
15
被引用文献数
3

症例は, 64歳男性。27歳時に統合失調症と診断され, 当院精神科閉鎖病棟入院中で, 以前から異食を繰り返していたが, 自然排泄されていた。2001年4月16日, 発熱をきたすも解熱剤にて経過観察。しかし, 発熱の継続と, 腹痛を訴えたため, 2日後に腹部X線, 超音波検査施行。単三乾電池による穿孔性腹膜炎と診断し, 緊急手術を施行した。開腹時所見では, 単三乾電池1個が上行結腸の穿孔部から露出していた。摘出標本では, 穿孔部周辺の大腸粘膜が広範囲に潰瘍を形成しており, 乾電池2本が大腸壁の潰瘍壁にはまりこみ, その内の1個が穿孔部から露出していた。消化管異物による穿孔は, ほとんどが鋭的異物によるものであり, 単三乾電池による消化管穿孔例は過去に報告をみない。統合失調症患者における異食した単三乾電池による大腸穿孔性腹膜炎の1例を経験したので報告する。
著者
中瀬 一 小泉 恵子 堀込 かずみ 浅川 浩樹 井出澤 剛直 飯塚 秀彦
出版者
一般社団法人 日本静脈経腸栄養学会
雑誌
日本静脈経腸栄養学会雑誌 (ISSN:21890161)
巻号頁・発行日
vol.30, no.4, pp.972-975, 2015 (Released:2015-08-20)
参考文献数
26

長期間の経空腸的栄養投与の結果銅欠乏性貧血を呈し、ココアの投与で改善を認めた1例を経験した。症例は51歳、女性。脳出血後胃ろう栄養だったが腹膜炎による胃部分切除術で経空腸的栄養管理となった4年後に銅欠乏性貧血を発症した。1日推奨量の銅を含有する栄養剤で管理されていたが吸収不足と考え、経鼻チューブを留置し銅を多く含むココアを十二指腸に投与したところ貧血は改善したが嘔吐のためチューブを抜去し退院となった。その9ヶ月後に再び銅欠乏性貧血となりその際は経空腸的にココアを追加投与し貧血の改善を認め、退院後も続行した。その後ココア投与の一時中断により3回目の銅欠乏性貧血を認め、ココア追加で改善した。消化器外科手術歴のある患者に対し経腸栄養を選択するに当たり胃ろう以外の投与経路に頼らざるを得ない場面がある。そのような際には銅欠乏性貧血をも念頭に置いた管理が必要である。