著者
加藤 良成 金子 茂男 井口 正典 栗田 孝
出版者
泌尿器科紀要刊行会
雑誌
泌尿器科紀要 (ISSN:00181994)
巻号頁・発行日
vol.33, no.10, pp.1672-1675, 1987-10

A 42-year-old man was hospitalized with urinary retention due to strangulation of the penis in December, 1981. He placed a stainless steel ring on the base of the penis to prolong erection one month earlier, but subsequent penile edema made it impossible to remove the ring. On admission the penis was extremely swollen (15 cm in length and 7 cm in diameter). Gangrenous patches covered the surface of the penis almost completely and the ring had cut through all the tissues superficial to Buck's fascia. Even slight tension would have probably divided the penis at the site of obstruction and we thought that amputation would be necessary. However, we decided to try conservative therapy since pulsation was felt in the glans. A high-speed airdriven drill with a diamond tip was used to sever the ring. This took ninety minutes. The ring was 2 cm in diameter. The wound was sutured in one layer after through debridement. The skin ulceration healed slowly and a urethral fistula was present in the penoscrotal region until the 66th postoperative day when it closed spontaneously. At discharge the patient had no problems with urination or erection.
著者
江左 篤宣 永井 信夫 井口 正典 池田 智明 大鶴 栄史 井手 辰夫
出版者
社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.78, no.7, pp.1215-1219, 1987-07-20 (Released:2010-07-23)
参考文献数
15

妊娠により水腎症が出現することは200年以上前から知られている. 我々は妊婦30例に対し腎の形態学的変化を無侵襲かつ簡便な超音波断層法を用いて経時的に観察し, また同時に尿化学的検査を行ない, 妊娠が腎に及ぼす影響についても検討した.1) 妊娠中の腎の計測値では健康成人に比べ厚径が増加していた.2) 妊娠中の水腎症の出現は妊娠中期から後期にかけて著明となり, その出現率は71%と高率であった.3) 妊娠中の水腎症の出現は左腎に比べ右腎に程度, 率ともに有意に高かった.4) 水腎症の程度と尿中BMG・NAG値との間に相関性を認めなかった.5) 水腎症の程度と妊娠中毒症の症状の間に関連性はなかった.6) 妊娠により出現した水腎症は分娩後約1カ月で正常に復すると考えられた.超音波断層法によって妊娠により水腎症が高率に出現することが証明された. しかし分娩後の回復は著明であり, 妊娠, 分娩という女性における生理学的環境の変化は腎の形態に一時的に水腎症を招来するものの妊娠中, 分娩後には機能的に影響を及ぼすことは少ないと考えられた.
著者
片岡 喜代徳 梅川 徹 片山 孔一 石川 泰章 児玉 光正 高村 知諭 高田 昌彦 加藤 良成 郡 健二郎 井口 正典 栗田 学
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.82, no.5, pp.799-803, 1991-05-20
被引用文献数
1

上部尿路結石患者と健常人の尿中の蓚酸カルシウム結晶量と尿中諸物質濃度を測定し,重回帰分析することによりそれらの影響力を検討した.1.結石患者の尿では説明変数としては蓚酸,ナトリウム, カルシウム,尿酸,マグネシウムが採択されそれぞれの偏相関係数は0.67,0.28,0.18,0.18,-0.10であった.CaOx結晶量の回帰式はCaOx Crystal量(×10^6μm^3/ml)=3.59×10^2Ox(mM/ι)+4.72×10^<-3> Ca(mM/ι)+4.52x10^<-3>Na(mM/ι)+2.51×10^<-4>UA(mM/ι)-2.39x10^<-2>Mg(mM/ι)-1.65で,重相関係数は0.759であった.結石患者の尿では結晶形成は蓚酸濃度に最も依存し,ナトリウム,カルシウム,尿酸が結晶形成促進因子として働き,マグネシウムが阻止因子として作用していた.2.健常人の尿では説明変数として蓚酸と無機燐が採択されそれぞれの偏相関係数はO.51,-0.24であった.CaOx結晶量の回帰式はCaOx Crystal量 (×10^6μm^3/ml)=1.91×10^<-2>Ox(mM/ι)-3,43x10^<-4>P(mM/ι)+0.29で,重相関係数は0.525であった健常人の尿でも結晶形成は蔭酸濃度に依存していたが,他に促進因子 は明らかではなかった.阻止因子としての作用は無機燐に認められた.健常人では結石愚老に比べ重相関係数も低く,結晶形成に他の不明の多くの諸物質の関与が推察された.
著者
池上 雅久 橋本 潔 大西 規夫 井口 正典 際本 宏 栗田 孝
出版者
一般社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科学会雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.85, no.12, pp.1781-1783, 1994-12-20 (Released:2010-07-23)
参考文献数
8

われわれは矮小陰茎を主訴として来院した48XXYYクラインフェルター症候群の1例を経験した. 症例は21歳の男性で高身長, 肥満型で女性化乳房を認め, 陰茎長は短く, 両側の精巣は発育不良であった. 内分泌学的にLH, FSHの高値, テストステロンの低値をしめした. 染色体分析にて非常にまれな48XXYY Klinefelter Syndrome と診断された. 軽度の知能障害があり, 精神状態が不安定であるということより, 会社を退職していたが, 外来にてプロテスチン処方により, 二次成長に関する変化がみられ, さらに精神状態が安定し, 再就職可能となった.
著者
郡 健二郎 高田 昌彦 加藤 良成 片岡 喜代徳 井口 正典 栗田 孝 八竹 直
出版者
泌尿器科紀要刊行会
雑誌
泌尿器科紀要 (ISSN:00181994)
巻号頁・発行日
vol.31, no.12, pp.2149-2159, 1985-12
被引用文献数
1

副甲状腺ホルモン(以下PTH)にも上位ホルモンが存在しないものかと考え,Ca代謝となんらかの関連性があり,かつ代表的な上位ホルモンである副腎皮質ホルモン(ACTH)を原発性副甲状腺機能亢進症など4群の疾患に投与したところ,興味ある結果を得たので,in vitroやラットを用いて実験を行った.対象は,副甲状腺摘除術を施行した原発性副甲状腺機能亢進症17例,Ca含有上部尿路結石患者7例,血清Ca値が11 mg/dl以上の高Ca血症を伴う悪性腫瘍患者7例と,正常対照群6例である.ACTH投与後の血清Caは,原発性副甲状腺機能亢進症では有意の上昇をみたが,他の群では変化がなかった.血清Caの上昇の割合はACTH投与前の血清Ca値と正の相関があり,投与前の血清ALP値と負の相関があった.ACTH投与前後のコルチゾール値やACTH値は4群間に差異がなかった.副甲状腺機能亢進症ではACTHの投与後,PTHが上昇傾向にあったが血清P,尿中Ca, Pは変化がなかった.摘除副甲状腺腺腫の培養液にACTHを添加したところ,PTH濃度は上昇傾向にあった.副甲状腺摘除ラットではACTH投与後血清Caは有意に低下し,副腎摘除ラットでは血清Caは有意に上昇した.以上からACTHにはコルチゾールを介すると思われる血清Ca低下作用の他に2つの機序による血清Ca上昇作用があることが考えられる.1つはACTHが直接刺激し,PTHの分泌による機序で,あと1つは骨に存在するPTHレセプターのうち,不活性レセプターに存在するPTHが,PTHと競合作用を持つACTHにより活性レセプターに移行するため骨吸収が生じる機序が文献的に推察された.ACTH投与にても高Ca血症を伴う悪性腫瘍患者では血清Caの上昇がみられなかったことから,高Ca血症の鑑別診断に役立つものと思われたParathyroid hormone (PTH) is strongly concerned with the pathogenesis of urinary stones. PTH is mainly regulated by the serum calcium concentration and not by other hormones, as is usually the case. We studied whether PTH is also regulated by adrenocorticotrophic hormone (ACTH) or not. ACTH (0.25 mg) was injected intravenously to 17 patients with primary hyperparathyroidism PHP, 7 patients with urolithiasis, 7 patients with malignant hypercalcemia, and 6 control subjects. Serum calcium was significantly increased in only PHP. The serum calcium increase rate showed a significant positive correlation with serum alkaline phosphatase, and a negative correlation with the preinjected serum calcium. PTH was slightly increased in all four groups. Serum cortisol and ACTH concentrations were not significantly different among the groups. PTH concentration in a culture medium of parathyroid tissues increased after ACTH addition. Serum calcium was significantly increased after ACTH injection in an adrenalectomized rat, and decreased in a parathyroidectomized rat. From our data and those of others, it appears that ACTH acts on the adrenal glands to decrease the serum calcium concentration, and might act directly on the parathyroid gland or bones to increase it.
著者
井口 正典 辻橋 宏典 永井 信夫 片岡 喜代徳 加藤 良成 郡 健二郎 栗田 孝 八竹 直
出版者
社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.76, no.3, pp.293-302, 1985
被引用文献数
1

食事が尿中排泄物質 (とくに蓚酸) に及ばす影響について検討した.<br>1) 健康成人男子9名に16時間の絶食の後普通食を与えると, Ca排泄量は食後2~4時間目にピークをしめし, 蓚酸は食後4~6時間目にはじめて有意に増加した. 食事負荷による食後6時間の増加分は, Ca 38.4%, 蓚酸11.8%, 尿酸7.1%, Mg 27.8%で, 普通食が尿中蓚酸排泄量に及ぼす影響はCaに比べてはるかに少なかった.<br>2) 健康成人男子11名に一定の朝食と, 昼食として標準食, 高蓚酸食 (標準食+ホウレンソウの油イタメ150g), 高蓚酸高蛋白食を負荷した. 高蓚酸食負荷により蓚酸排泄量は標準食の約2倍増加したが, 逆にCa, Mg排泄量は標準食の約半分に減少した. 高蓚酸高蛋白質食を負荷すると, 高蓚酸食負荷時に比べてCa排泄量は有意に増加し, 逆に蓚酸排泄量は有意に減少した.<br>3) 上記と同じ高蓚酸高蛋白食を absorptive hypercalciuria と診断した男子結石患者13名に負荷したところ, Ca排泄量は対照群より著明に増加していたが, 蓚酸排泄量には差がなかった.<br>以上の結果ならびに既報の結石患者の食生活調査成績 (日本栄養・食糧学会誌37:1~7, 1984) をもとに, 再発予防法としての食事指導の実際について具体的に述べた.