著者
佐治木 弘尚 山田 強 井川 貴詞
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
MEDCHEM NEWS (ISSN:24328618)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.41-46, 2022-02-01 (Released:2022-02-01)
参考文献数
30

重水素標識化合物は、分子内のC-HをC-Dに安定同位体変換しただけの、最も小さな官能基変換を受けた化合物である。しかしHとDを比較すると、質量数には約2倍の差があり、他の各種の安定同位体と比較すると、その同位体効果は必然的に大きくなる。ましてや多重に重水素標識された化合物では、その差異はより大きく発現することとなる。特に質量の変化や結合安定化効果を利用して、非標識化合物を高機能化する研究は盛んに実施されており、その1つが重水素標識医薬品(ヘビードラッグ)の開発である。本稿では、重水素標識による高機能化の事例紹介とともに、重水素標識法のこれまでの到達状況に関する概要を紹介する。