著者
佐治木 弘尚 澤間 善成 近藤 伸一
出版者
岐阜薬科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

ステンレススチール(SUS304)製遊星型ボールミル中で水をミリングすると、メカノエネルギーとSUSを構成する金属の触媒作用効率良く協調して、非加熱、非加圧で水の全量分解反応が進行し、水素が定量的に生成する。反応の進行にはSUS合金を構成する金属とメカノエネルギーが重要である。水だけでなく炭化水素やエーテルでも同様に水素が効率良く生成することも明らかにした。特に芳香族化合物共存下、ジエチルエーテルをミリングすると芳香核の還元が定量的に進行する。さらにSUS304ボールとH2O、CO2をミリング処理するとCO2がSUSを構成する金属の炭酸塩を経て逐次的にメタンに定量的に変換されることも判った。
著者
佐治木 弘尚 山田 強 井川 貴詞
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
MEDCHEM NEWS (ISSN:24328618)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.41-46, 2022-02-01 (Released:2022-02-01)
参考文献数
30

重水素標識化合物は、分子内のC-HをC-Dに安定同位体変換しただけの、最も小さな官能基変換を受けた化合物である。しかしHとDを比較すると、質量数には約2倍の差があり、他の各種の安定同位体と比較すると、その同位体効果は必然的に大きくなる。ましてや多重に重水素標識された化合物では、その差異はより大きく発現することとなる。特に質量の変化や結合安定化効果を利用して、非標識化合物を高機能化する研究は盛んに実施されており、その1つが重水素標識医薬品(ヘビードラッグ)の開発である。本稿では、重水素標識による高機能化の事例紹介とともに、重水素標識法のこれまでの到達状況に関する概要を紹介する。

2 0 0 0 OA 同位体効果

著者
澤間 善成 阿久津 和宏 佐治木 弘尚
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.56, no.5, pp.431_1, 2020 (Released:2020-05-13)

化合物の構成原子を同位体に置換した際に生じる化学的・物理的性質の変化を,同位体効果という.重水素は原子番号が最も小さい水素の同位体で,水素の約2倍の質量を持つため,その効果は大きく発現する.例えば,1気圧におけるH2Oの沸点は99.97℃,融点は0.00℃であるが,D2Oは101.40℃と3.82℃である.また,同位体原子の置換によって反応が遅延される効果を速度論的同位体効果という.同位体質量が増加すると結合エネルギーが大きくなり,結合の切断・形成反応は遅くなる.これを一次同位体効果という.なお,結合の切断や形成に関与しない位置に置換した同位体による軽微な反応速度変化は,二次同位体効果として区別される.