- 著者
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澤間 善成
阿久津 和宏
佐治木 弘尚
- 出版者
- 公益社団法人 日本薬学会
- 雑誌
- ファルマシア (ISSN:00148601)
- 巻号頁・発行日
- vol.56, no.5, pp.431_1, 2020 (Released:2020-05-13)
化合物の構成原子を同位体に置換した際に生じる化学的・物理的性質の変化を,同位体効果という.重水素は原子番号が最も小さい水素の同位体で,水素の約2倍の質量を持つため,その効果は大きく発現する.例えば,1気圧におけるH2Oの沸点は99.97℃,融点は0.00℃であるが,D2Oは101.40℃と3.82℃である.また,同位体原子の置換によって反応が遅延される効果を速度論的同位体効果という.同位体質量が増加すると結合エネルギーが大きくなり,結合の切断・形成反応は遅くなる.これを一次同位体効果という.なお,結合の切断や形成に関与しない位置に置換した同位体による軽微な反応速度変化は,二次同位体効果として区別される.