- 著者
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井田 正道
- 出版者
- 明治大学大学院
- 雑誌
- 明治大学大学院紀要 政治経済学篇 (ISSN:03896064)
- 巻号頁・発行日
- vol.24, pp.161-172, 1987-02-10
未成年期における政治意識の形成過程に関する研究は、政治的社会化研究という名の下でここ30年近くにわたって欧米で蓄積されてきた分野である。なかでもアメリカにおける研究蓄積は、膨大な数にのぼる。それに対して、わが国では、政治的社会化という言葉自体、まだ馴染みがうすく、研究蓄積も未だ寒々しい状況にある。確かに、戦後日本はしばらくの間、政党制と社会構造の変容が激しく、成人後の政治行動に及ぼす初期社会化の影響力は欧米に比べ、かなり弱かったと考えることは可能であるし、そのことが日本における実証研究を遅らせた一因となっていたのかもしれない。しかし、今日の青年層1)は、55年体制成立後少なくとも15年以上経た後に初期社会科を経験しており彼らの政治意識の形成に関しては、家族をはじめとする初期往会化のエージェントの影響力がかなり大きく作用し、しかも今後におけるその影響力の残存も相当のものがあると思われる。