著者
伊藤 剛
出版者
明治大学社会科学研究所
雑誌
明治大学社会科学研究所紀要 (ISSN:03895971)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.33-48, 2023-10-20 (Released:2023-10-24)

本稿は、日米中関係とアジア冷戦を構造的にとらえる試みを行う。東アジアの冷戦はヨーロッパのそれとは異なる特徴を有していたし、その始まりと終わりの時期も明確でない。安全保障を提供しているアメリカによるコミットメントの大小によっても、アジアの同盟国は対応の仕方が異なる。 安全保障政策の二本柱は、軍事費増大等の「自分で自分を強くする」こと、そして「信頼できる同盟国を探す」の二つである。アジアにおけるアメリカの同盟国は、一方で自国の軍事費を即座に増大することもできず、他方でアメリカとの関係も、同盟国同士の関係も全て順調というわけではない状況であった。このようなアジアの冷戦構造が日本をはじめとする各国にどのような影響を及ぼしていたかを検証する。 それぞれの章で論じることは、以下の通り。第一章で日中をバランスさせるアメリカの外交政策、第二章でアジア冷戦の特徴、第三章で韓国、日本、台湾、フィリピンといった「島国」に安全保障を提供したアメリカの利益、第四章で同盟に伴って生じる「恐怖」の種類は一様でないこと、第五章で同盟間に生じる信頼と、軍事的目的より広範な意義を持つ政治的意義、である。総じて、「歴史とはドラマ」とは異なり、一定の構造的制約・影響を受けながら展開しているという視点を持ち込みたい。
著者
洲見 光男
出版者
明治大学社会科学研究所
雑誌
明治大学社会科学研究所紀要 (ISSN:03895971)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.159-172, 2007-10

任意捜査は、その呼び名から自由に許されるかのように思われがちであるが、程度および方法において「必要な」限度を超えることは許されない(197条1項。なお、198条)。他面、任意捜査は、相手方の承諾・協力を得て行う捜査であって、何ら個人の権利・利益を制約するものではないことを想像させるが、実は、それは「強制捜査ではない」ことを意味するにとどまり、個人の権利・利益を制約し得る場合があるとされているω。捜索・押収などによる強制捜査は、広い意味で、個人情報の収集活動と捉えることもできるが、これについては憲法および刑事訴訟法に規定が置かれており、手続・要件の「法定主義」(憲法31条、刑訴法197条1項但書)および「令状主義」(憲法35条、刑訴法218条等)による規制が加えられている。