著者
今井 紀夫
出版者
日本マーケティング学会
雑誌
マーケティングジャーナル (ISSN:03897265)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.65-73, 2020-09-29 (Released:2020-09-29)
参考文献数
43
被引用文献数
1

近年のデジタルテクノロジーはエコシステム環境下でのデジタル企業の隆盛と,新たな脅威と機会につながっている。一方で既存企業はその対応に苦戦している。デジタルトランスフォーメーションは,近年の複合的デジタルテクノロジーによる新しいビジネスモデルを活用するための全社変革である。デジタルビジネスはプラットフォームや複数のプレイヤーから成るエコシステムを特徴とし,プラットフォームでの価値創造にはビジネス視点と技術視点のものがあり,新しい軸での競争を生みだしている。またトランスフォーメーションには複数のアプローチがあり,段階的な取組により成功率が高まる可能性がある。今後のマーケティング視点からの研究の方向性として(1)業績への影響とその条件,(2)補完製品提供者も含めた価値創造のプロセス,(3)情報システム部門とのテクノロジーケイパビリティ構築,(4)デジタル関連組織の役割の特定が提示された。
著者
藤川 佳則 今井 紀夫 近藤 公彦 大川 英恵 堀内 健后
出版者
日本マーケティング学会
雑誌
マーケティングジャーナル (ISSN:03897265)
巻号頁・発行日
vol.41, no.3, pp.44-56, 2022-01-07 (Released:2022-01-07)
参考文献数
22

本論文の目的は,デジタル・トランスフォーメーション(DX)のダイナミック・プロセスモデル(Fujikawa, Kondo, & Imai, 2022)が捉えようとするDXの動的過程について,事例分析を通じて詳述することにある。Fujikawa et al.(2022)が提唱する概念モデルは,プラットフォームの有無とステークホルダーの広狭の2つの次元を組み合わせた4つの象限(段階)からなり,特定の段階から別の段階への移行(パス)を動態的に記述する。本論文は,この概念モデルを用い,理論的サンプリングの手法に基づき,「DXの発展段階を異なる移行過程(パス)を通じて経時的変化を遂げた事例」として選択した4事例(アスクル,パイオニア,コマツ,日本交通)を分析する。新たな発見をもたらす事例,ならびに,経時的な変化を扱う縦断的事例としての事例分析から得た新たな知見や論理を概念モデルに反映する可能性について議論する。
著者
今井 紀夫
出版者
日本マーケティング学会
雑誌
マーケティングジャーナル (ISSN:03897265)
巻号頁・発行日
vol.40, no.3, pp.89-99, 2021
被引用文献数
1

<p>昨今のデジタル技術の進化と普及により,これまでにない量や形式のデータが生成され,それらを分析するためのAIや基盤技術をマーケターは活用できるようになった。金融事業から出発したSBIグループでは,その機会を活かしてグループ会社間のシナジーによる価値創造を実現するために,2012年にグループの持株会社であるSBIホールディングス株式会社の社長室直下にビッグデータグループを設けた。このグループはデータ基盤整備やグループ会社のデータ活用能力向上などの様々な施策に取り組み,グループ全体の顧客基盤の成長などに見られる通り,成果に貢献してきた。その成功要因として,従来の情報システム開発と分けてのデータ基盤整備,システム導入ではなく価値創造を目的としてのリソースの確保,グループ横断での会議や勉強会開催によるノウハウ共有や各部門の課題把握,ワークショップなどによる社員のデータに基づく意思決定への意識改革の支援,更にこれらを支える経営陣のコミットメントが示唆された。</p>