著者
近藤 公彦
出版者
日本商業学会
雑誌
流通研究 (ISSN:13459015)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.27-46, 2002 (Released:2011-05-20)
参考文献数
36
被引用文献数
1

この論文の目的は、ニチイ (現マイカル) によるビブレの業態開発プロセスをケース・スタディの対象としながら、イノベーションと競争の視点から業態開発における研究モデルを探ることにある。このケース・スタディを通じて発見された事実は、次の2点である。第1に、新業態の開発は既存業態との異業態性を克服するなかで行われるものであり、そのプロセスにおいて商品調達、商品政策、および販売方法の3つの側面でイノベーションが引き起こされたこと、第2に、開発された新業態の競争優位は地域的可変性と時間的可変性から構成される業態可変性を基礎としていること、である。
著者
近藤 公彦
出版者
日本商業学会
雑誌
流通研究 (ISSN:13459015)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.77-89, 2018 (Released:2018-03-31)
参考文献数
63
被引用文献数
1 2

ICTの発展を背景に,小売業の新たな成長モデルとしてオムニチャネルが大きく注目されている。オムニチャネルは歴史的に,電子商取引,クリック&モルタル,マルチチャネル,クロスチャネルから発展し,消費者にシームレスな買い物経験を提供するための統合的なチャネル管理を中心的な課題としてきた。オムニチャネルは米国のそれを標準型として研究されてきたが,その態様は各国の小売環境のもとでの企業の成長プロセスに規定される。米国型オムニチャネルが単一業態オムニチャネルを基本としているのに対し,日本型オムニチャネルは複数の業態から構成される多業態オムニチャネル,およびロジスティクス・ハブとしての店舗ネットワークの2つから特徴づけることができる。この日本型オムニチャネルを理論的に研究する際,多業態オムニチャネル,オムニチャネル・オペレーション,チャネル・コンフリクトとカニバリゼーション,オムニチャネル小売企業の出自,オムニチャネル行動のプロセス,オムニチャネル・ショッパーの特性,定性的・定量的アプローチ,および国際比較の8つの重要な課題が指摘される。
著者
近藤 公彦
出版者
日本マーケティング学会
雑誌
マーケティングジャーナル (ISSN:03897265)
巻号頁・発行日
vol.43, no.2, pp.6-17, 2023-09-29 (Released:2023-09-29)
参考文献数
21

この論文は,北海道を代表する土産菓子メーカーである石屋製菓株式会社のケース研究である。同社の製品ブランド「白い恋人」は土産菓子ランキングで首位にあげられるほどの知名度を有し,そのブランド名を冠した「白い恋人パーク」をはじめ,種々のコラボ商品も展開されている。「面白い恋人」をめぐる吉本興業等との商標権侵害やコロナ禍での観光客の激減に伴う売上高の低下といった逆境を乗り越えて,2022年には中東ドバイへの進出を果たした。一方,石屋製菓は東京GINZA SIXへの出店に際して,白い恋人を扱わず,「ISHIYA」という企業ブランドを前面に掲げた。そして,白い恋人にせよ,ISHIYAにせよ,いずれも「北海道」という圧倒的な地域ブランドを背景にしている。本研究は,製品ブランドの白い恋人を中心に同社の歴史を記述し,その過程においてISHIYAという企業ブランド,そして北海道という地域ブランドがどのように相互作用しているのかをブランドの構成要素,ブランド・エクイティ,および経験価値のフレームワークの観点から多面的に検討し,ブランド研究への新たな理論的示唆を提示する。
著者
藤川 佳則 今井 紀夫 近藤 公彦 大川 英恵 堀内 健后
出版者
日本マーケティング学会
雑誌
マーケティングジャーナル (ISSN:03897265)
巻号頁・発行日
vol.41, no.3, pp.44-56, 2022-01-07 (Released:2022-01-07)
参考文献数
22

本論文の目的は,デジタル・トランスフォーメーション(DX)のダイナミック・プロセスモデル(Fujikawa, Kondo, & Imai, 2022)が捉えようとするDXの動的過程について,事例分析を通じて詳述することにある。Fujikawa et al.(2022)が提唱する概念モデルは,プラットフォームの有無とステークホルダーの広狭の2つの次元を組み合わせた4つの象限(段階)からなり,特定の段階から別の段階への移行(パス)を動態的に記述する。本論文は,この概念モデルを用い,理論的サンプリングの手法に基づき,「DXの発展段階を異なる移行過程(パス)を通じて経時的変化を遂げた事例」として選択した4事例(アスクル,パイオニア,コマツ,日本交通)を分析する。新たな発見をもたらす事例,ならびに,経時的な変化を扱う縦断的事例としての事例分析から得た新たな知見や論理を概念モデルに反映する可能性について議論する。
著者
近藤 公彦 中見 真也 白鳥 和生
出版者
日本マーケティング学会
雑誌
マーケティングジャーナル (ISSN:03897265)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.16-28, 2021-06-30 (Released:2021-06-30)
参考文献数
32

デジタル・トランスフォーメーションとコロナ禍という劇的な環境変化は,消費者行動と小売業にきわめて大きな影響を及ぼし,ニューノーマル時代に適応した新たな小売ビジネスモデルの構築が求められている。この論文では,まずデジタル・トランスフォーメーションが小売業をどのような方向に進化させようとしているのか,ならびにコロナ禍が小売業の活動をどのように激変させたのかを主要な文献を通じて概観する。次に,そうした要因が消費者行動をどのように変え,またどのような小売業の新しい取り組みを促しているかを博報堂生活者総合研究所,経済産業省,アクセンチュア等による消費者調査,およびビームス,カインズ等の小売業のトップマネジメントへのインタビューを通じて明らかにする。こうした議論を踏まえ,ニューノーマル時代の小売業の新しいビジネスモデルをネオリテールと名づけ,その全体像を顧客関係性(顧客識別性,ターゲット設定,タッチポイント,顧客関係ボンド),価値の創造と提供(提供価値,方向性,店舗の役割と位置づけ),活動システム(商品供給システム,業務システム,組織内・組織間関係),および収益フォーミュラの観点から提示する。
著者
近藤 公彦
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.26-36, 2020-12-20 (Released:2021-01-14)
参考文献数
33

この論文では,小売業におけるデジタル化とデジタル・トランスフォーメーションの諸相を考察し,それらを成立条件とするオムニチャネルの本質を規定するとともに,オムニチャネル化に向けた販売/コミュニケーション・チャネルの発展プロセスを成功裏に推進するための3つのオムニチャネル・ダイナミック・ケイパビリティ,すなわち,統合ダイナミック・ケイパビリティ,調整ダイナミック・ケイパビリティ,および分析ダイナミック・ケイパビリティを提示する.
著者
近藤 公彦
出版者
日本商業学会
雑誌
流通研究 (ISSN:13459015)
巻号頁・発行日
vol.12, no.4, pp.4_3-4_16, 2010

小売業者にとってPOS 情報は、効果的なマーチャンダイジング(MD)を実施し、取引先に対して有利に交渉を進めるうえできわめて重要な情報である。このため、POS 情報は取引先に全面的に公開しないことが常識と考えられてきた。コープさっぽろはこの常識を覆し、POS 情報を全面開示することによって取引先からのMD 提案の仕組みをつくり、新たなチャネル・パートナーシップを構築した。本研究はコープさっぽろをケース研究の対象とし、協働MD 組織の役割、取引先とのwin-win 関係、模倣困難性などの視点からPOS 情報開示に基づくチャネル・パートナーシップ構築の理論的検討を行い、チャネル研究の新たな課題を提示する。
著者
南 知惠子 高嶋 克義 平野 光俊 松尾 睦 坂川 裕司 近藤 公彦 猪口 純治 金 雲鎬 西岡 健一 森村 文一
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究は、小売企業の成長を支える組織基盤の構築プロセスを解明することを目的とする。集権的な意思決定による成長戦略と分権的組織による組織能力の向上による成長戦略との併存を想定した。国内外の複数事例分析及び、全国の小売企業を対象とする質問紙調査を実施した。事例研究では、小売及び製造小売企業において、トップマネジメント主導の大規模投資による成長戦略を確認し、ビジネスモデルの類型化を行った。実証研究では、企業の革新性の正の影響に加え、組織基盤として情報システムの統合の影響が収益性に影響を与えることが明らかになった一方で、地域レベルでの標準化戦略は業績に負の影響を与えることが明らかになった。
著者
高嶋 克義 平野 光俊 南 知恵子 西村 順二 近藤 公彦 松尾 睦 金 雲鎬 猪口 純路
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

日本の小売企業を対象とする質問票調査のデータに基づいて、小売企業の仕入革新・マーチャンダイジング革新に関する実証分析を進める一方で、アパレル小売企業やドラッグストア・チェーンの仕入革新についての事例研究を行い、その研究成果を論文で公表した。また、これらの研究を通じて、企業間関係、部門間連携、継続的な改善の3つの条件の相互作用を捉え、小売企業の仕入活動革新における企業間関係と部門間連携との関連性についての研究を展開した。